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2003.11.22


第2話 黒馬(10)



 「ご紹介します。今日からこちらへ配属になるエル・ハウンディーア様です。 それから私がエル様の助手をしますセラ・ベルガナです。皆さん、これからよろしくお願いいたします。」
 よろしくぅ〜ってな。
 寝ぼけ女が帰ってきた所で自己紹介を開始する。
 「ああ、あんたが噂のエル様か。よろしく。」
 野郎その1があいさつしてくる。他の野郎その2と女は会釈するだけだ。
 「エル様。こちらがこの魔法研究所責任者シャロン・マッセラ様です。」
 と、セラが顔を洗ってきた露出度の高い女を紹介する。
 「始めまして、エル・ハウンディーアです。よろしく。」
 年はよく分からないが、なかなかの美女だ。手をとってしっかりあいさつしておく。
 「ふふ、よろしく。」
 シャロンがにこっと笑顔を作る。赤い艶のある唇がなんとも色っぽい。さらにスタイルがよく、胸を大きく開いた服が艶かしい。
 「なんか、特別待遇とかってあんた専用の研究室なんて用意してあるのよね。まぁ、ただの空き部屋を開けただけなんだけど。」
 俺専用の研究室か。自宅にも用意されていたが、こっちにもあるのか。
 シャロンについてちょっと歩く。さっきの部屋の隣の隣だな。
 「エル研究室。う〜ん、いい待遇だねぇ〜。ちなみに私の研究室はこの隣だから。」
 さっきの部屋とこのエル研究室の間にある部屋だな。そう言えばシャロン研究室なんて書いてあった気がする。
 「机と棚、椅子、ベッド、パソコン1台。後は自分で用意してね。」
 他に何にもないな。スッキリしていてこっちの研究室も落ち着かないな。でもこっちの方が狭いから自宅より落ち着くかも。
 「ま、今は大きな仕事はないから勝手にやって。そうそう、あんたが来たおかげで研究費が大幅に上がったのよね。 お給料は月100万からね。何か成果を上げる毎に給料アップだからがんばってね。 セラさんの給料は他の所から出ているからそっちからもらってね。」
 セラの給料っていくらか気になるな。てか、月100万って凄いな。
 「そう言えば税金とかあの部屋の家賃とか食費とか光熱費とかどうすなってんだ?」
 そう言えば家賃はただとか言っていた気がするが。
 「家賃は無料ですよ。それに光熱費、水道代は黒馬で負担いたします。食費は月に5万C程、入れていただけると助かるのですが。」
 食費は俺持ちなのね。その5万Cを引くと95万Cは俺の遊び金か。ふっふっふ。いきなり金持ちの仲間入りだな。 でも年収1200万Cって微妙だな。大富豪とは言い難いか。
 「今日はあいさつまわりで疲れたでしょうからもう帰ります?それとも何かしていきます?」
 あ、ここがあいさつまわりの最後だったな。
 「とりあえず、君の事をもう少し知りたいな。」
 と、近くにいたシャロンの手をとる。
 「年齢と体重は秘密よ。」
 シャロンが笑顔で答える。年齢が一番知りたかったがまぁ、女性に年齢を聞くのは失礼だ。俺より年上なのは確かそうだし。 まぁ、この際だから妙齢の女ってことにしておこう。
 「あなたの魔法が見てみたいわ。魔法が使えるって噂は本当なの?」
 シャロンがわくわくっと言った感じで言う。
 「マジックショーでもやるのか?」
 トリックは得意ではないぞ。
 「見たいわ。皆の前で見せて。」
 シャロンが耳元で囁く。その艶かしい声がなんとも。
 「まぁ!せっかくの魔法研究所なんだし、見せてやろう!行くぞ!」
 それから2時間ほどマジックショーをやらされるのであった。


 「疲れた。」
 午後5時。自宅に到着。
 「ご苦労様でした。」
 セラがねぎらいの言葉を言う。
 「あのシャロンって女。なんで魔法研究所の責任者なんてやってんだ?」
 どう見ても責任者って言う立場の人間に見えないよな。
 「シャロンさんも一応、私たちがスカウトしてお招きした人なんです。」
 ほほう。
 「彼女は世界で数少ない古代遺跡に残された文字を全て読めるの1人なんですよ。」
 それは凄いな。
 この時代、世界どこに行っても共通語が使われており、言語に困ることはない。 しかし、古代に栄えた文明では地域によって違う言語が使われていた。 古代遺跡に残されている文字は5種類だが、言語は10種類になるそうだ。
 「実はな、俺って古代遺跡の文字って全く読めないんだな。」
 なのに古代の書物である魔法書を解読して魔法を使えるようになっているという。
 「えええ!!そうなんですか!」
 セラが驚いている。まぁ、普通は驚くわな。魔法研究といえば古代文明の文字を解読し、 そこに書かれた事柄を参考にして魔法を再現する研究だ。
 「全く持って理系の俺があんな解読なんて趣味レベルでやると思うか? 文系連中なら趣味で解読するかもしれないが、俺はやらんぞ。」
 セラがなんか絶句している。
 「まぁ、お前は俺の助手だからな。後で詳しく講義してやるぜ。」
 今は疲れているからちょっと休憩だ。
 「セラ、お茶煎れて。」
 玄関で立ち尽くしているセラに声をかける。俺のお茶を煎れてという声で我に帰ったようだ。
 「あ、はい。」
 セラがキッチンに向かう。俺はTVでくつろぎスペースに向かう。


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