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2003.11.22


第2話 黒馬(9)



 そろそろハラヘッタな。
 「最後はエル様の職場、魔法研究所ですね。」
 次が最後か。
 「その前に腹が減ったから飯にしないか?」
 すでに12時を大きく過ぎて1時になろうとしている。
 「そうですね。昼食にしましょう。この黒馬ビルの中にはいくつかレストランが入っているんですよ。」
 なんか凄いな。
 「とりあえず、私のお気に入りからご案内いたしますね。」
 それは楽しみだ。

 『Meciya』と言う看板が出ている。単語の意味はよく分からないな。
 「このお店の名前の由来を聞いて笑ってしまいました。」
 セラが嬉しそうにしている。
 「なんだよ。」
 さぁー、皆で考えよぉ〜って、何の番組だっけか?
 「一応、社員食堂ですから、ここで食券を買います。」
 メニューを聞きに来るウェイトレスの手間が省けるからな。
 「お勧めはチキンカツとか、ハンバーグとかソースのついた料理ですね。ここのソースが美味しいんです。」
 ほほう。セラがチキンカツの食券を買う。俺はハンバーグにするか。
 食券を提出すると番号札と引き換えになる。俺が4でセラが5だ。ぐるっと店の中を見渡すと他に3人程待っている人がいた。 結構、人が入っているな。すでに1時を過ぎているというのに。
 「さ、席に座りましょ。」
 とりあえず、空いている席に座る。セラがセルフサービスの水をグラスに持ってきてくれる。気の利く助手でいいな。
 「12時前後の時間帯は凄く混んでいて並ばないと食べられないんですよ。」
 ほほう。
 「1時くらいになりますと、やっとこういう風に空いてくるんです。」
 なるほど。
 そう言う話をしていると俺のハンバーグが運ばれてくる。ケチャップではなくデミグラスソースだな。 それからすぐにセラのチキンカツも運ばれてくる。同じソースがかかっているようだ。
 「いただきましょう。」
 いただきまぁ〜す!パクッとな。
 「お、美味いじゃん。」
 ついでにライスとグリーンサラダがついている。これで1000Cか。セラのチキンカツは850Cだ。
 「美味しいですよね!」
 セラが嬉しそうにする。う〜ん、美味美味。

 「ふぅ、喰った喰った。ライスお代わり自由っていいな。」
 米も美味かった。
 「それでは、魔法研究所に行きましょう。」
 いよいよか。

 魔法研究所は4階にあった。エレベータで数秒だな。
 「魔法研究所は主に魔法文明の遺跡発掘、研究をしています。」
 セラがそう説明しながら『魔法研究所・第1室』と言う看板のついている部屋に案内する。
 「失礼します。」
 中に入ると男2人女1人の3人が暇そうに雑誌を読んでいた。
 「シャロンさんはまだ来てないよ。」
 と、雑誌から顔を上げずに声を上げる男が1人。
 「まだ来てないんですか。」
 やる気のねぇ所だな。
 「帰っていいか?」
 この雰囲気を見てやる気なくした。
 「昨日、ちゃんと連絡を入れたんですけど。ちょっと連絡を入れてみますね。」
 そう言ってセラがケータイで電話をかける。すると部屋の中から着信を告げるベルが鳴る。 それに皆が雑誌から顔を上げる。
 「シャロンさん、ここにケータイ忘れていったか?」
 皆、きょろきょろと見渡して音の発生源を探す。
 「んん?うっさいわね。」
 と、部屋の隅から女の声がした。その声に一同が注目する。その声のした所からやけに大きく胸の開いた服を着た女が出てくる。
 「シャロンさん!そんな所にいたんですか!」
 そんな所に隠れていたのか。
 「あ、はい?」
 ぴっとケータイに出て着信ベルを止める。
 「あ、ごめんなさい。私です。」
 露出度の高い女が電話の主がセラだというのに気付いて電話を切る。
 「あ、はいはい。今、何時?昨日、残業してたらいつの間にか寝ちゃっていたわ。」
 昨日はここに泊まったのかよ。
 「午後2時です。」
 露出度の高い女が眠い目を擦っている。
 「ちょっと顔、洗ってくるわ。」
 行って目を覚まして来い。まだ寝ぼけているのかフラフラと部屋から出て行く。
 「シャロンさん、来たし、って言うかすでに来てたし、仕事しよっか。」
 さっきまで雑誌を読んでいた3人が部屋にあるパソコンに電源を入れる。
 「これから仕事開始かよ。」
 午後2時から仕事開始ってやる気ねぇなぁ。


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