「フレリアや。ちと頼まれてくれんか。」
昨日の夜は何事もなく過ぎてしまった。現在、皆でテーブルを囲んで朝食。
「解放されたクレストを探して来いって言うのは嫌ですよ。」
フレリアが先制攻撃で断る。
昨日、フレリアとセラがいなくなったのは思った通り風呂に入っていたからだった。
あの後、この長老宅(フレリア宅と同じ)に泊まることとなって野郎3人と風呂に入ることになってしまって最悪であった。
しかも寝るのも野郎3人で雑魚寝。なぜに俺がこんな目にあわねばならんのか。
ちなみにセラはフレリアの部屋で1泊。シャロンと同僚の女、ミーナは長老の部屋で1泊。その他の野郎2人は俺と一緒にリビングで毛布をかぶって1泊。こんな部屋割りであった。
「・・・だめか。」
本当に頼もうとしていたらしく、沈黙してしまう。
「あ、そうじゃ。わしの魔霊樹の植木を欲しがっていたじゃろ?」
魔霊樹って何?
「植木を1つもらったくらいじゃ嫌です。」
まぁ、植木1個でどこにあるかも分からないものを捜して来いって言うのは嫌だよな。
「しょうがないな。そうだ、無事に封印が成功したらこれを譲るというのでどうじゃ?」
長老のばぁさんがテーブルに木の枝を乗せる。ああ、長老の杖か。
「!!」
なんかフレリアがめちゃくちゃ驚いているな。スプーンを咥えようとしたところでかたまってしまっている。何事だ?
「これでも断るか?」
長老のばぁさんがにやり、みたいな感じの笑顔をする。
「ほ、本当にくれるの!」
フレリアが立ち上がって信じられない、みたいな顔をしている。
「本当じゃ。引き受けてくれるか?」
「やります! やらせていただきます!!」
フレリアが即答する。
この後、フレリアは出かける準備をしてきます、とか言って部屋から出て行ってしまう。
「はい、今日は張り切って帰るよ。」
長老宅の前に荷物を持って全員集合している。シャロンが出発の掛け声をかける。すでに長老のばぁさんには別れの挨拶を済ませた。
「ん? フレリアも一緒に行くのか?」
なんか横でフレリアが一緒についてきている。
「はい。きっとクレストは森の外でしょうから。」
そうなのか?
「あの洞窟にいたモンスターが持ち出したのならこの辺にあるんじゃねぇか?」
この森ってかなり広いからな。
「まだこの辺りにクレストがあるのでしたらすでに私達で気付いています。この辺りにないから今まで気付かなかったんだと思います。」
さよか。
「そう言えば、長老のばぁさん。何をくれるんだって?」
杖だよな? まぁ、見た目は枯れ木の枝だけど。
「ユグドラシルの枝です。」
ユグドラシルってあの北欧神話に出てくるあれ?
「ここ、アルフヘイムの長の証なんです。」
え?
「あの枯れ枝がか?」
良く燃えそうな枯れ枝だよな。
「はい。アルフヘイムの長になる者に代々受け継がれてきた物です。伝説によりますと、あの枝についていた葉で死者をよみがえらせることができたそうです。」
どっかで聞いた様な話だな。
「ねぇねぇ、エル様ぁ。」
フレリアが甘えるような声で俺の腕に腕を絡ませてくる。
「エル様もクレストを探すの、協力してぇ。」
ふぅっとか言って耳に息を吹きかけるんじゃねぇ!
「私がここの長になったら好きな宝物をあげるからねぇ〜。」
フレリアの胸が。かなりでかいな。
「しょうがねぇなぁ。」
黒馬のスカウトを受けた時と同じなのか? 進歩ねぇなぁ。
「わぁ! エル様、大好き!」
ちゅ!
「!!」
フレリアが頬に口付けしてくる。その瞬間、周りから物凄い殺気を感じたような気がするのだが、気のせいか?
「それじゃエル様! これからよろしくお願いしますね!」
フレリアもかわいいよなぁ。
帰りの道中も他の組織からの襲撃があったが、軽くあしらって無事に帰ることができたのであった。
「んじゃ、この部屋を使ってくれ。」
現在、帰宅して東の角にある空き部屋にいる。(エル宅間取り図)
セラの寝室の隣で、ちょうど空き部屋になっていた部屋だ。
「わぁ、ありがとうございます!」
森の外に知り合いがいないらしいから俺の家に連れてきた。フレリアにこの部屋を使ってもらおう。
「家具は明日辺り調達してくるから。今日は俺の部屋で寝るか?」
ぬっふっふっと邪な考えでな。
「フレリアさん。今日は客間で寝てください。中からちゃんと鍵もかけられますから。」
セラがフレリアを引っ張っていってしまう。
「じゃあ、エル様。そういうことなんで。」
ばいばぁ〜い、とか言ってフレリアが手を振っている。
「お〜い、セラでもいいから俺と一緒に寝ない?」
無視されてしまった。
まぁ、何はともあれ今日から3人暮らしだな。
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