「ぜぇ、ぜぇ・・・。やっと着いたぜ。」
もう体力の限界。やっとのことで村の入り口にたどり着いた。
「ここまでくればモンスターは出ませんから、安心してください。」
出てももう動けん。
日はもう沈みかけて辺りは茜色に染まっている。
「今日はうちに泊まっていってください。ご馳走します。」
と、フレリアが笑顔で言ってくる。野宿せずに済みそうでよかったぜ。
フレリアは元気だのぅ。あれだけの運動をこなして息も切らさないとは。
俺よりかなり鍛えているセラでさえ俺の横で息を切らせていると言うのに。やはり俺たちと鍛え方が違うな。
「ありがとうございます。」
フレリアの誘いにセラが答える。俺は返事する所ではない。
俺の息が整うまで村の入り口で休憩した。
「あ、おかえり。」
フレリアの家って言って案内された所にシャロンたちがいた。てか、長老の家じゃん。
「おお、フレリア。帰ってきたか。」
皆、お茶を飲んでいっぷくしていた様子。
「クレストはどうじゃった?」
長老のばぁさんがフレリアに問う。
「もう完璧に壊れていました。」
と言って、フレリアがクレストの祭壇から拾ってきた真っ二つに割れた水晶球(本当に水晶かどうかは不明だが)を背負い袋から取り出す。
「あの奥ならばモンスターどもに守られて安全だと思ったのじゃがな。」
そのモンスターのおかげで死にそうになったな。てか、俺様のエルウィップがなければ無事に帰って来れなかっただろうってくらいのモンスターの猛攻だったからな。
あんな所に普通の人間が近付けるわけがない。
「それがですね。祭壇に行くと大きなモンスターがいたんですよ。きっとあのモンスターが壊してしまったのだと思います。」
あれはでかかったな。写真を撮っておくべきだったぜ。
「壊れてしまったものはしょうがないのぅ。これはあれを管理しているわしらの責任じゃ。4000年前の悲劇を繰り返さぬよう、
クレストを回収し、再び封印せねばならん。」
なんかいかにも俺たちに頼んできそうな雰囲気だったので長老が感傷に浸って目を瞑った所で別の部屋に移動した。
「フレリア、そしてエル殿・・・、ありゃ?」
長老が目を開けるとそこに誰もいなかった。
「逃げたか。」
おうおう。逃げたとも。厄介事はごめんだ。俺は研究室でゆっくり魔法の研究をしたいんだよ。
「まぁよい。今はゆっくり休みが良い。」
ふぉっふぉっふぉ、とか言って長老のばぁさんも部屋を出る。
「・・・今、気付いたのだが、セラとフレリアは?」
一緒にいたと思っていた2人がいつの間にかいなくなっていた。
「ありゃ? 一緒に来たと思ったのになぁ。」
同僚の野郎その1、ジャックが首をかしげている。
まぁ、いいか。
「んでもって、シャロンたちはここに残って何をしていたんだ?」
俺たちがあれだけがんばっていたのにお茶を飲んで雑談していたとか言ったら怒るぞ。
「仕事をしていたに決まっているじゃない。こんな仕事さっさと終わらせて観光を楽しむのよ。」
仕事?
「アルフヘイムの調査だよ。長老に頼んで色々とこの村の観光案内をしてもらっていたのさ。
いやぁ、目はあれだが、かわいい子のそろっている村で。」
ジャックが言う。
「収穫は?」
ただ観光していただけと言うのなら怒るぞ。
「色々。」
色々っすか。
「そっちはどうだ?」
ジャックが俺に聞き返してくる。
「とりあえず、モンスターを1000匹ほど倒した。いやぁ、死にそうになったね。
それから、クレストって言う魔法の元となるエネルギー源について講義を受けた。
後でセラがレポートにしてくれるから詳しくはそっちを参照してくれ。」
フレリアの話を聞きながらセラのやつは横でカリカリと真剣にメモを取っていたからな。
「それはそうと凄い格好してんなぁ。」
凄い格好?
自分の姿をちょっと確認してみる。
「ああ、モンスターの返り血だな。あの猛攻で返り血を避けている余裕なんてなかったぜ。
風呂に入りてぇな。頼んでくるか。」
ふと思ったのだが、フレリアとセラって風呂に行ったんじゃねぇか?
「おい! 風呂ってどこだ!」
くっそぉ! 俺だけ除け者かよ!
「んん、俺も知らないな。どうしたんだ? そんな慌てて。そう言えば、俺も風呂に入りてぇなぁ。今日は1日中歩き通しだったから風呂に入って足、揉んで置かないと筋肉痛になってしまうな。」
ああ、そう言えばな。今朝からジャングルの中をな。
「長老のばぁさんに聞いてくるぜ!」
あのババァ、どこに行きやがった!
「あ、私も行くわ。どこか泊めてくれる所を紹介してもらわないと。」
俺とセラはフレリアに泊まって行けって言われているからな。
「長老のばぁさんはどこだ!」
とりあえず聞いてみた。
「部屋じゃないの?」
シャロンについて長老の部屋って所に行ってみる。
「あら? いないわね。どこ、行ったのかしら?」
長老の部屋って所に誰もいなかった。
「長老ぉ〜。どこに言ったんだぁ〜。」
シャロンと俺の2人で長老宅を探し回る羽目になったのであった。
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