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2004.6.28


第8話 会食(13)



 ものの数分で事件は解決した。
 雷鷲と黒馬の2大組織の幹部が集まるこの集会を聞きつけた過激派グループが乗り込んできたのだが、相手が悪かった。
 雷鷲が配備していた警備兵たちはあっさりと過激派グループに制圧されてしまった様だが、ここには雷鷲と黒馬のナンバー1とナンバー2の戦闘能力を誇る4人が揃っていた。
 黒馬は言うまでもなく俺とクロウ。脳震盪でくたばっていたのだが、俺とセラを撃った銃声に目を覚ましたらしい。
 雷鷲はナンバー1がフィネルソスで、ナンバー2がシャイリースらしい。フィネルソスも銃声を聞いて目を覚ましたらしい。
 ほとんどクロウとフィネルソスの手によって過激派グループは制圧した。あれは人間業じゃない。あんな危険な能力を持った2人がそれぞれ世界を牛耳る2大組織の総帥として君臨しているとは。
 やはり世界を2等分する巨大組織だけあってヤバイな。

 「ああ〜、2人きりの甘い夜ぅ〜。」
 セラの確保した33階スイートルームにて眼下の慌しい人たちの姿を見ながらため息をつく。あの忙しく過激派襲撃の後処理をする人たちの中でセラも走り回っている。
 「せっかく高級スイートルームのサービスが使い放題なのだから、夜食でも注文するか。」
 内線電話下の棚にメニューが置いてあった。
 「お、せっかくだからこの一番高いやつを。」
 値段で選ぶやつ。
 「3301号室なんだけど、ルームサービスで夜食を頼んでよい?」
 内線電話でちゃっちゃと注文してしまう。結構な量になってしまったな。もう日付が変わってしまっているのにご苦労様だ。
 「あ、セラのも注文しておくか。」
 このラベルだったかな。セラが好きだって言っていた酒は。注文しよう。
 注文を終えて受話器を置く。
 「シャワーでも浴びて待つか。」

 シャワーを浴びてバスローブを探している所にルームサービスが到着。ついでにバスローブの場所も訊く。
 「んじゃ、ありがとね。」
 チップに1万Cも渡してしまう。普段ならありえないくらい太っ腹な俺。今日はちょっと寂しくて、人の喜ぶ顔が見てみたかったのさ〜、なんて。
 別にさりげなく受け取って去っていってしまったし。
 「人肌恋しい・・・。」
 グラス2つに酒をそそぎ、夜食に手をつける。
 「値段ばっかであんまりたいした味じゃないな。」
 やはりこの時間じゃ作り置きのやつしかないのか。
 「お茶漬けが喰いたいな。」
 セラの作ったちょっと豪華なやつ。
 「夜食と言ったらお茶漬けだよな。」
 と言いつつ、夜食に頼んだ塩味の効いた黒い粒々をクラッカーにとって口に運ぶ。んで酒をひとくち。
 「あれってシュガーボックスだな。こんなスイートルームに置いてあるとなると、金持ちの定番の葉巻?」
 俺は煙草なんて吸わないのだが、ちょっと興味津々。
 「おお、これが葉巻か。安物の煙草よりきついらしいじゃねぇか。」
 見るだけ。
 「お、TVのリモコンを発見。ぽちっとな。」
 でかい画面だな。うちにあるやつの2倍くらいあるよ。うちのTVもでかいと思っていたのだが、さらにでかいな。これだけでかいとかなり離れないと観辛い。
 「自治区が違うと知っている番組をやってないな。」
 飛行機で4時間も離れた場所だからな。
 別に面白くもないTVをボーっと眺める。ちょっと疲れてんのかな。
 それから朝まで記憶がない。

 「おはようございます。」
 ん?
 「おはよう、セラ。」
 う〜、眠い。すっげぇーふかふかの布団だな。
 「エル様。支度してください。帰りますよ。」
 帰る? ああ、帰るのか。
 なんかバスローブ着て寝てたし。
 「エル様。」
 セラが突然、後ろから抱き付いてきた。
 「ありがとうございました。」
 ん?
 「何の話?」
 寝ぼけてんのかな。何にも心当たりにない。
 「エル様のくださったペンダント。」
 ペンダント?
 「ああ。効果はバッチリだっただろ?」
 なんせものぐさな俺が何日も徹夜して作ったものだからな。
 「はい。」
 ちょっといい朝。

 ホテルから出て、再びリムジンで空港へ。空港からクロウの自家用機に乗り込み、ウィングスへ。んでもって黒馬ビルで解散と。
 「着いた。」
 着いてしまったな。
 「もう1泊どっかのホテルに泊まらないか?」
 家に帰るとフレリアとリリスがいてなかなか2人きりになれない。
 「帰りますよ。来週の準備をしなきゃ。」
 来週? ああ、モッチョン博士宅訪問。
 「ああ。昨日、完成したばかりだから後片付けが済んでねぇや。ちょっとジャンの所に寄ってかなきゃ。」
 ジャンとは兵器開発部の人間でシールドメダリオン開発の際にお世話になったにぃちゃんだ。
 「お供いたします。」
 セラが俺の隣に並ぶ。
 「それを量産する機械を作ってもらっているんだよ。量産が成功すれば俺たちに銃弾が効かなくなるぞ。」
 防弾チョッキより軽いし、売れば儲かりそうだ。
 「これがあればルーファたちも安心ですね。」
 そうそう。
 このシールドメダリオンを第1号に俺様天才伝説が幕を開けるのだ。


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