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2004.6.28


第8話 会食(12)



 モッチョン博士、シャロン、俺の3人で魔法について激論を交わしている所にオグちゃんが登場。その横には当たり前のようにシャイリースがいるし。
 「オグちゃん、待ったよ。体におかしい所はない?」
 短かった髪はカツラで足してある。白のドレスがなかなか似合う。
 「はい。おかげさまで痕も残ってなくて。」
 普通の治療では確実に痕が残るような傷でも俺の魔法なら綺麗に治療できるのだ。
 「モッチョン博士。こちらがさっき私が魔法で治療してさしあげた方です。」
 あれだけの傷を負ったら綺麗に消えていても肌を隠してしまいそうだが、胸元と背中を大きく開けてあるドレスを着ている。綺麗な肌だ。
 「見事に傷が消えておりますな。良かった良かった。わしも君の事は気にかけていたのだよ。」
 モッチョン博士がオグちゃんに笑顔を見せる。オグちゃんはそれに少し照れながらお礼を言う。
 「フィネルソスさんがあの状態だから、治療費はシャイリースにつけておくから。」
 クロウとフィネルソスの殴り合いはいまだに続いていて、2人とも上半身裸で物凄い格闘戦を繰り広げちゃっている。なんか2人を囲んでいる半球状の結界をも足場にしちゃっているんだもんな。
 「うぅ。あの男とまともにやりあってる・・・。」
 シャイリースが2人のケンカを見て眉間にシワを寄せている。
 「フィネルソスさんも超能力とか使えたりするん?」
 なんか時々フィネルソスが空中に止まったり、クロウに触れずに吹き飛ばしたりとかしているからな。
 「そう言えば、そんな風に見えるな。」
 俺の目の錯覚ではない様子だ。
 「セラ。フィネルソスも超能力使えるんか?」
 アリーシャと一緒に観戦していたセラに訊いてみた。
 「はい、そうですよ。お互いにそのことを知ってから手加減なしに付き合える親友になったとかって話ですから。」
 なぬ?
 「まさか、実力はクロウと互角とか言わないよな?」
 また1つ世界征服への障害が・・・。
 「ご覧の通りです。」
 双方全然引いてねぇ。
 「あ。」
 2人の腕が交差し、互いの頬へもろに拳が入る。痛そうだ。
 「ぐぅ。腕を上げたな。」
 「そっちもな。」
 そのまま2人とも失神してしまった。
 「あーあー。結界解除。」
 2人を囲んでいた結界が消えるとクロウにサンチョス、メズキちゃん、セラが走り寄り、フィネルソスにはアリーシャ、ガイン、オグちゃんが走り寄る。
 「タンカーだ! タンカーを用意しろ!」
 サンチョスが声をあげる。するとホテルのスタッフがタンカーを2つ持ってくる。そのままクロウとフィネルソスはタンカーに載せられて退場する。
 「親父たちにも困ったものだ。」
 フィネルソスを見送ったガインがこっちにやってくる。
 「いつもなのか?」
 いつの間にか隣にいたシャイリースの顔が引きつっている。
 「顔を合わせると最後はいつもこうなるってママが言ってたな。」
 アリーシャはフィネルソスについて行ったようだ。サンチョスとメズキちゃんも見えないからクロウについて行ったのだろう。セラとオグちゃんはこっちに帰ってくる。
 「2人ともタフですね。2人ともこれと言った負傷はないですし、軽い脳震盪ですぐに目を覚ますはずです。」
 セラがなんか言ってる。
 「あれだけやってそれだけ?」
 シャイリースが後ろで思い切りため息をついているのが聞こえた。
 「いつもは周りの被害が大きくなってここまでしないのだそうですけど、いつもこれと言った負傷もなく引き分けになるそうです。」
 俺が結界を張って周りへの被害を押さえてしまったからか。戦場となった結界内の床は綺麗な円形にコンクリートが剥き出しになっている。高そうなカーペットがひいてあるのになぁ。弁償するんだろうな。
 「料理はあらかた食い尽くしたし、そろそろパーティーはお開き?」
 もうまもなく日付が変わる。
 「部屋に入ります?」
 セラが胸元から鍵を取り出す。どこに入れてあったんだよ。
 「このホテルに4つしかない最高級スイートルームを確保したんです。ルームサービスも雷鷲持ちみたいですよ。」
 それはそれは。
 「よくやった! 今日は最高級スイートルームで2人きりの甘い夜を過ごそうぞ!」
 セラを横抱きにしてパーティー会場から走り去る。
 「え、エル様!」
 チャンスだ! しかも超一流ホテルのスイートルームだ。今晩は寝かせないぞ。
 「何階の部屋だ?」
 エレベーター待ちをしながらセラに訊く。
 「33階です。シャロン様を置いてきても大丈夫かしら?」
 33階か。エレベータードア上部にある階表示に34階までしかない。そこへエレベーターが到着。
 「おう?」
 エレベーターに黒一色の戦闘服を身にまとった怪しい風体の連中がいっぱいに乗っていた。その手には機関銃が握られている。ドアが開くと同時に発砲された。
 「ぐああああああ!!!」
 セラを守るシールドメダリオンが展開した障壁に弾丸が跳ね返り、エレベーター内のヒットマンたちが返り討ちにあう。
 「あーあー。」
 不運な。
 「しょうがないなぁ。」
 シャロンを1人にしておいてはダメか。セラを降ろしてシャロンを探しに走る。


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