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2004.8.18


第10話 城砦崩壊(4)



 普通のデートだった。
 買い物したり、街をぶらぶら歩いたり、飯を喰ったり、夜景を眺めたり、最後はホテルに入ったり。
 最初は少しぎこちなかったものの次第に明るさを取り戻し、ついにセラの様付けと敬語を止めさせることに成功した。さらにだんだん本性を現してきやがって、これがもう甘え上手でしっかり手綱を握っておかないとセラのペースに飲まれてしまう所であった。
 スパイ活動中にターゲットの男を手玉に取ると言う事があるらしく、それが癖になって少し出てきてしまうらしい。あれで散々弄ばれた後に、私はスパイだったの、とか言って捨てられたらさぞショックを受けることだろうな。
 「ああ、ついにやってしまったな。」
 仰向けでベッドに横になり、部屋の天井を眺めながらぼそっと呟く。隣にセラがいる。
 「やってしったね。」
 セラも隣でぼうっと天井を眺めているみたいだ。
 「お前、処女じゃなかったのね。」
 まぁ、二十歳を過ぎて処女なのはリリスくらいなものよ。
 「スパイ活動する時にはセックステクニックもあった方が便利なのよ。特に私くらいの美貌があればね。」
 セラが何か言っているぞ。まぁ、確かにちょっとエッチな服を着て迫られればその気になってしまいそうなくらいの美貌とスタイルを持っている。
 「エルも初めてじゃないよね。」
 当たり前だ。
 「まぁな。」
 魔法を使えば色々とできるからな。
 「エル、もう1回・・・。」
 セラが俺の上に覆い被さるようにして唇を重ねてくる。



 「エル、私のこと好き?」
 何だ、突然。
 「好きだぞ。愛してる。」
 こいつを俺のものにするためにどれだけ苦労したことか。
 「エル、聞いて。」
 ん? すでに夜は明けている。何回やったのかとか、いつ終わったのかとか全く覚えていない。目が覚めたばかりで頭がぼうっとしている。
 「ん〜?」
 セラの頭を抱き寄せながら聞き返す。
 「私の両親の話。」
 セラの両親か。噂によると死んでいるらしいな。
 「2人ともとある研究所の研究員だったんだ。仕事に行ったっきり事故で死んじゃった。」
 何の研究所なんだ?
 「誰も事故の原因とか教えてくれなくて、何年も掛かって自分で調べたんだぁ。」
 こいつって今、21歳だろ? それで何年もって10代の青春時代をそれで費やしてしまったというのか?
 「力の暴走による破壊に巻き込まれたんだって。同じ研究所にいた人は全滅。丸いクレーターが残っただけで建物の破片すら残らなかったの。」
 それは凄いな。
 「調べていく内に1人だけ救出された人がいたことが分かったんだ。そして、彼がなんなのかも。」
 相変わらずの情報収集能力だな。
 「ライフクレストホルダー。彼はそう言うコードネームで呼ばれて研究されていた。名前の通り、ライフクレストを持った人。フレリアの探すデッドクレストと対になる生命を司るクレスト。彼の力が暴走して研究所を破壊したの。」
 ほう。
 「彼はクレストと共に記憶を封印され、名前も変えられて今でも生きているの。」
 で。
 「殺してやりたかった。私から両親を、全てを奪った彼を。」
 なんか話がかなりダークになってきたな。
 「やっと見つけたと思ったら彼、事故のことは全然覚えてなくて、私のこと好きだって、愛してるって言うの! 私の両親と一緒に自分の両親まで殺したくせに!」
 何だ?!
 「俺か!?」
 うっそん。
 雰囲気からそんな気がした。
 「そうよ! 体に刻まれたライフクレストが何よりの証拠よ! バカバカ! あなたなんか最低よ!」
 げ! 気付かなかった。どうりで昔の記憶があやふやだと思った。
 「あなたが暴走して私の両親を殺したのよ! 人殺し!」
 どこに隠し持っていたのかいきなり銃を突きつけてきた。いくらオートで障壁が展開されて銃弾を弾き返すとは言え、銃口が体に触れた状態で撃たれれば穴が開く。
 「これでも私のこと、好きだって、愛してるって言える?」
 ああ、泣いてるよ。
 「言える。言ってやるよ。本気だからな。」
 セラの涙を流す目が俺を見る。
 「俺が憎ければ撃てばいい。引き金を引いて俺の心臓を打ち抜けばいい。それでお前の気が晴れるのならな。俺はお前が好きだ。恨みはしない。愛してるから。」
 いやぁ、臭いセリフだな。まぁ、こんな状況でないと決して言えないよな。
 「もう、エルってば・・・。」
 セラから殺気が消え、手から銃が落ちる。
 「殺さないで上げるから、責任よってよね。もう、バカ・・・。」
 セラが唇を合わせてくる。お互いを貪るような濃厚なキス。
 この先はさすがに詳しく書くと年齢制限に掛かるので省略します。


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