次の日、日が沈む前に無事、次の町へ到着した。
「あー、着いたぜ。早く風呂に入ろうぜ〜。」
適当に宿を決めて風呂に直行する。
「いやぁ。もう体中、砂だらけだよ。」
ここに着く前にちょっと砂嵐みたいなのに遭ってしまって砂塗れになってしまった。砂漠で恐れるほどの嵐じゃなかったんだけど、もろに砂をかぶってしまって。水気のない土地は砂が舞ってやだね。
「宿にはちゃんと女と男で風呂が別れているんだよな。」
最初の2回はシルビアと一緒に風呂へ入っていたからここの世界じゃどこも混浴なのかと思ってしまったんだよ。まぁ、そんなことは全くなかったのだが。
ああ、シルビアの肌って白かったなぁ。なんか体の周りに魔法で膜を作って紫外線とか有害なものを体に触れさせないようにしているとか言っていたよな。
最近、シルビアの肌を見てねぇなぁ。集団生活が続いてナニもできなくて溜まってんのよなぁ。
ああ。
石鹸の泡立ちはいいな。交通手段に動物を使っているくせにこう言うシャンプーとかは俺らの世界と変わらない物を使っているのよな。蛇口とかシャワーもあるし。
砂だらけの頭をシャンプーで泡立てて洗っている所へおっさん連中もやってきた。
「この町を出て何もなけば明後日にはフェスレドに着くな。打ち上げは何にする? 出費がかさんでいるから大した物は食えないか。いつもの店で済ませるか?」
キールが一緒に来たおっさん連中と歩きながら話している。
明後日にはフェスレドに着く予定なのか。シルビアの占いではあと10日くらい着かないとか言っていたけど。
このおっさん連中とももうすぐお別れだな。ニーナともフェスレドでお別れか。ニーナはフェスレドでまともな職に就くらしい。シルビアと2人きりになれるな。
う〜ん。シルビアの裸が見たいなぁ。ヌードショーだけじゃなくてセッ○スまで持ち込みたいよなぁ。いい体してるし。
ごしごしと垢を落としていく。
ああ、久しぶりの風呂で気持ちいいわい。チティスからこの町へ行く道中に川や池とかなかったから、水浴びもできなかったのよ。今度は川沿いに歩きたいなぁ。
・・・。
川と言えば、ここの世界って島が浮いているのよな。浮いていると言うことは端まで行ったら落ちるのよな。水が川を通って島の端まで行ったら落ちて行ってしまうよな。
絶えず水が供給されていないとすぐに干上がるな。
荒野が多いのはこのせいか?
う〜ん。
俺って普段は体を先に洗うのだが、今回は頭に砂がじゃりじゃり言って気持ち悪いから頭から先に洗った。
次に頭の石鹸を流さずに顔を洗って、また流さずに体も洗って、体を洗った所で頭からシャワーを浴びて石鹸を流す。これだと一度に石鹸が流せて早くないか? さらに何度も流す必要がないから水道代が節約できると思わないか? なかなか経済的な雰囲気だな。今度からはこれで行くか?
まぁ、宿で水道をいくら使っても割増料金を払うわけじゃないからそんなケチる必要もないのだが。
「あー、スッキリ。」
砂だらけだった体がスッキリしたぜ。
ざぶざぶと湯船に入る。
「ああ、でかい風呂は足が伸ばせて気持ちがいいのぅ。」
もろ独り言だし。
「こっちに来てからでかい風呂にしか入ってないのか。」
あの小さな湯船が懐かしいのぅ。まぁ、アパートの風呂では浴槽があってもガス代と水道代がもったいなくて溜めるようなことはしないでシャワーだけ使っていたのだがな。
ちょっとゆったりしていると急に水かさが増し、鼻まで沈む。
「うっぷ。」
でかいおっさんのことゴンザレスが湯船につかっていた。
でかいなぁ。あまり体がでかいと着る服がなくて不便だろうなぁ。やはりこう言うことに関しては標準サイズでよかったと思うよな。あの身長だと入り口をくぐる時にかがまなければならないんじゃないのか?
「小僧。まもなく別れるわけだが、それからどうするつもりなんだ?」
小僧って言うなって。
「よく分からんけど、フェスレドでしばらく滞在して旅費稼ぎじゃねぇ?」
この荷物運びの一団と一緒にフェスレドまで行くのだが、その後はどうするのか聞いてないな。そもそも最終的な目的地がどこなのか忘れちまったぜ。
「そうか。俺たちもフェスレドに着いたらしばらく滞在して今後の資金稼ぎだな。」
ゴンザレスとレイシアもフェスレドまでの仕事なのか。
「気になっていたんだが、聞いてもいいか?」
この2人のことでどうしても気になることがあるのよな。
「なんだ?」
おっさんが低い声で答えてくる。あれだけ味のある声でしゃべれるのっていいなぁ。なかなかかっこいいぞ。
「本人に聞くのはちょっとためらわれることだから相方のあんたに聞くんだけど、レイシアって何歳なんだ?」
絶対に三十路を過ぎていると思うのだが。
「26だ。」
・・・。
「なにぃ! まだ三十路を過ぎてなかったのか!」
あの厚化粧でまだ20代。スッピンが見てぇ〜。
「それであんたは?」
このおっさんも20代と言う可能性も?!
「俺は30だ。お前はいくつなんだ?」
ギリギリ30代だな。
「俺は21だ。ちなみにシルビアの年齢はよく分からん。聞いても詳しく答えてくれねぇし。」
まだ大学3年なのよな。単位は順調に取っていたから、卒研だけ無事に終われば何の問題もなく卒業できていたはず。それから平凡な会社に入って、平凡な仕事をしながら平凡な家庭を築いて、平凡に老後を迎えて死ぬ予定だったのよな。
全く持って予定が狂ったな。
今の希望としてはシルビアとの間に子どもとか作ってこのファンタジー世界で悠々自適に生活をしたいなぁ、なんて思っている。最低でも子どもは1人か2人欲しいよな。
「21か。意外と歳を食っていたな。そのくらいの年齢ならばもっと落ち着きも出てくるのだがな。」
子どもっぽいと言いたいのか?
「悪いな。お坊ちゃま育ちで。」
この世界の一般人よりは贅沢な暮らしをしていたことだろう。実際に一般人の生活を見たわけじゃないが、ファンタジー世界に出てくる中世の平民の様な感じなんだろ? 学校とかなくて教会で読み書きをちょっと教えるくらいとか。
「そうか。」
頷かれてもしょうがないのだがな。
・・・。
「小僧。お前の剣はなかなかの物だが、どこで手に入れたんだ?」
しばらくの間が空いて、ゴンザレスが話し掛けてくる。
「森でモンスターに襲われた時に拾った。」
事実だな。
「拾い物か。なかなかついているやつだな。」
あれはラッキーな出来事だったね。あの剣を拾ったからこそ、こんな感じになっているのだからな。
「あんたの剣ってやけにでかいけど、特注だよな?」
俺の身長ほどもあるんだものな。
「そうでもない。置いている店はだいぶ少ないと思うが、普通に売っている剣だ。魔法もかかっていないでかいだけのなまくら剣だ。」
でっかいおっさんが振るうでっかい剣の威力は尋常じゃないんだけどなぁ。
「へぇ。あんなでかい剣を使うやつが他にもいるのか。」
俺には扱えないだろう。
「自分の身長よりでかい剣を使う剣術流派もある。それほど珍しい流派ではない。」
それはそれは。
「器用な連中がいるものだな。」
自分よりでかい剣って機動性が悪くてふところに入られるとやばいんじゃねぇの?
「器用と言えばお前も器用だろう。あんな大きな剣をその細腕で難なく使っているのだからな。」
あれは剣が軽いから。まぁ、分からんか。
「まぁ、器用な方か。」
器用な方だよな。いくら聖剣が強い力を持っていようが剣を持って1ヶ月にもならない俺が何度かモンスターと戦って無傷なんだからな。その戦闘センスは我ながらさすがだな。
「そうそう。レイシアが礼を言っておいてくれと言っていたな。昨日の戦闘中に銃弾や矢から守ってくれたそうじゃないか。レイシアを狙ったその全てを弾いたそうだな。」
まぁな。
「たいしたことじゃねぇよ。」
本当にたいしたことない。聖剣の力なのか弾丸や矢の飛んでくる速度が遅く見えて、それがそのまま飛んでいくと危ないと言う物を叩き落していただけだ。
「そろそろ上がるぜ。」
そろそろ腹も減ったし、ゴンザレスとその他のおっさん供を残し、風呂から上がる。