「凄かったですね、エル様の魔法。」
現在、アジトに到着してランチだ。俺の前にでかいステーキがある。
「俺様は天才だからな。」
久しぶりのステーキ♪ 肉汁の滴るレアステーキ♪ 大好物である。
「ホントに天才ですよね。そう言えばまだ契約書のサインをいただいておりませんでしたのでお願いします。」
セラが契約書とペンをステーキの横に置く。
「内容は同じだろうな?」
契約書にサインする時は慎重にね。ん、同じ内容だな。たまに違う時があるからな。
「エル・ハウンディーアっと。」
「はい、朱肉です。」
ぐりぐりと親指にインクをつけてぺたっと拇印を押す。
「ありがとうございます! これで正式に我々、黒馬のメンバーとなりました。そして、私はエル様の助手になります。」
セラが契約書をそくささっと封筒に入れて片付けてしまう。
そう言えば助手として身の回りの世話を全部してくれるとか言っていたな。もちろん、夜のお世話まで、とか。しかも初めてとか何とか。
夜が楽しみだ。
「俺の部屋とか用意してくれんの?」
銃弾で穴だらけにされたあの部屋には帰りたくないぞ。
「はい、こちらでご用意させていただきました。今日はここに泊まる事になりますけど、明日の夜にはご案内いたします。」
今日は部屋に入れないのかよ。
「あ、そう言えば詳しい組織の方針とか聞くのを忘れたが、説明してくれるか?」
こういうことは契約書にサインする前にちゃんと訊きましょうね。
「早い話が世界征服が目的です。愚かな民を支配し、さらなる高みへ導くというのが我々の方針です。目的のために手段を選んでいませんので、悪のレッテルが貼られていますが、慈善活動もしますよ。支配者へ信用がないとすぐにその支配体制は崩壊してしまいますからね。ある程度信頼は得ておかないとなりません。虐殺とかは避けてくださいね。」
悪の組織と言っても最低限のモラルはあるのね。
「ついでにさっき襲撃してきた雷鷲についてですが、私たちの組織とはいわゆる犬猿の仲と言うもので、
最大の敵対組織です。規模も私たちと同じくらいで、黒馬と雷鷲の2大勢力が世界を牛耳っています。雷鷲を潰せば私たちの目的は80%達成したといっていいくらいです。」
なんか凄い所からのスカウトだったのな。
「他にも色々と敵対組織はありますが、雷鷲だけには気をつけてくださいね。」
へ〜い。
「ここは地方の中継地点の様なアジトで、それ程重要な拠点ではありません。
宿泊と武器の補給くらいしかできないんです。」
てか、アジトは外から見て普通の高級ホテルだ。さっきのステーキもここのレストランで食べた。ぐるっと見渡すと普通の宿泊客もいるようだ。
「部屋は1208号室ですね。」
てか、普通のホテルだな。エレベータで12階へ。1208号室。普通の2人部屋だな。
「普通のホテルだな。」
「地下に武器が保管してあるだけで、普通のホテルですね。でも、黒馬所有の物件なので、
黒馬のメンバーは無料で宿泊できますよ。食事やサービスは有料なんですけど。」
普通のホテルだな。
「ゴムは置いてないのか?」
ラブホじゃないんだからないか? ベッド周辺を捜索してみる。ねぇな。
「ゴムって、コンドームですか?」
セラがなんか引いている。
「ん? 生でした方がいいか? 俺的にはそっちの方がいいが。」
セラがさらに引いている。
「ちょっと、今日は危険日ですので、遠慮して欲しいなぁ、なんて。」
セラが引きつっている。
「危険日? しょうがねぇなぁ。魔法でやった後に受精卵を殺してもいいんだが、面倒だしな。しょうがない、我慢するか。」
なんかセラがほっとしている。まだやるのに心の準備ができていないか?
「明日は朝8時出発でセフィラト国際空港へ向かいます。途中、雷鷲の襲撃があると思いますが、ここから応援が加わりますので、ご安心ください。」
当たり前の様に襲撃があるのな。ほとんどマフィアだな。
「昼過ぎには空の上です。昼食は機内で、と言うことになりますね。機内でもスパイが紛れ込んでいる可能性がありますので、注意してくださいね。」
おい。
「それから夕方には本部へ到着いたします。黒馬総帥に面会した後、エル様のお部屋にご案内いたします。」
黒馬総帥か。世界征服をたくらむ悪の総帥だからな。どんな残虐非道なやつなのか。
「総帥と言っても気さくな方ですから、無理して慣れない敬語を使ったり、緊張して硬くなったりなさらなくてもいいですよ。」
気さくなサディストなのか。横に裸のねぇちゃんをはべらせて酒を飲みながら下品に笑っているのか。
「戦闘部隊の隊長、メズキ様にだけは気をつけてくださいね。あの人だけは場違いに厳しい人ですから。」
メズキってあの頭が馬のあれ? てと、ゴズキもいるのか?
「エル様の仕事場、研究室は明後日になりますね。週休は日曜日の1日だけですけど、大抵の人は4日くらい休んでいるらしいですよ。」
それは仕事に不真面目と言うのではなかろうか。
次の日。
「ねみぃ。」
現在、午前7時。普段なら確実に寝てる。
「それでは防弾チョッキとヘルメットをつけてください。外は過激派に包囲されていますから、注意してくださいね。」
おい。
「時間だ。玄関を出たら正面、青い車の右にある黒い車へ走って乗り込め。」
なんか凄い格好をしたおっさんがなんか言っている。この装備なら銃弾の雨を食らっても大丈夫そうだな。
「エル様、行きますよ。私から離れないでくださいね。」
はいはい。
ホテルから出ると同時に銃撃戦が開始されるという徹底した襲撃であった。黒馬のアジトと言っても秘密じゃないやん! てか、昨日は気付かなかったが、ホテルの名前がBlack Horse Hotelだし。
「エル様、大丈夫でしたか?」
無事、車に乗り込んだ。
「眠い。着いたら起こして。」
銃撃戦の真っ只中だというのに緊張感の無い。
「こんな銃撃戦の真ん中なのに余裕ですね。」
セラの顔が引きつっている。外で悲鳴が聞こえる。
「まぁ、銃撃戦なんて慣れているからな。俺の会社の周りって凄かったぞ。3日に1回は銃撃戦に遭遇するという。」
「慣れですか。」
車が銃弾を弾き返しながら出発する。
「銃弾の当たる音がうるさいな。これをぺたっと貼って、障壁方陣!」
車の天井に貼った札が燃え尽きると同時にさっきまで聞こえていた銃撃の音が聞こえなくなる。
「何をしたんですか?」
「この車の周りを障壁で覆った。バズーカも効かないぞ。」
ミサイルはその衝撃で車が横転するなんてこともありえるが、破壊されることは無い。
「んじゃ、着いたら起こしてね。」
セラの太腿を枕に寝る。
外では物凄い銃撃戦で応援の車の何台かは破壊されてしまっている。かなりの死傷者が出ている様だが、こんなにのんきにしていていいのだろうか。
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