「今日はここに泊まりましょう。」
Black Horse Hotel・ヴァスタ店。黒馬運営の宿泊施設だ。ヴァスタって調べたらウィングスから2つ西に自治エリアを超えた所であった。
自治エリアって言うのが出てきたから説明しておくが、この時代は国と言う単位はなく、自治エリアと言う単位で政治が行われている。
政治の大本は世界政府なのだが、地方の政治はこの自治エリア単位で行われる。現代の都道府県みたいな感じで、
地方の権利がちょっと強くなったようなやつ。
国境はなく、通貨、言語が世界共通となっている。ちなみに通貨単位はクレス(C)。現代の通貨と価値を比べると1Cが大体1円と同じくらい。
「魔法カードを補給しておくか。ネットワーク回線に繋がったパソコンとプリンタ使える?」
「使えると思いますけど。そう言えば気になっていたんですけど、エル様が魔法を使う時にいつもお札みたいな紙をポケットから取り出して燃やしてますけど、
なんなんです?」
ライターとかで燃やしているわけじゃないんだがな。
「これか?」
ポケットに残っていた札を見せてやる。ちなみにこれは『潜水方陣』と言うやつだ。
「何か紋章みたいなのが描いてありますね。」
なんか不思議な形の図形が描かれている。
「これが魔法を使う時に媒体となって発動させるんだ。俺はこれを“魔法カード”と呼んで、
この魔法カードを使った魔法を“簡易魔法陣”って呼んでいる。」
セラが魔法カードの手触りを調べたり、匂いをかいだりしている。
「普通の紙ですね。これがあれば私も魔法が使えるんですか?」
なんかセラがわくわくと言った感じで目を輝かせている。
「う〜ん、無理じゃないか?なんか特殊な勘が必要みたいでな、人に紹介しても使えたやつが1人もいないんだわ。」
この簡易魔法陣を発明した当初は周りの人に自慢して回った。しかし、誰も使えなかった。
「がんばりますから使い方を教えてくださいね!」
まぁ、がんばって。
「パソコンとプリンタなんて何に使うんですか?・・・まさか、魔法カードをプリンタで印刷するとかですか?」
ホテルに設置されているパソコンを借りている。
「その通りだ。ちなみにこれが俺の公開しているサイトだ。実は公に発表していたり。」
その名も『エル様の大魔法講座』!?
「うわ〜、アクセス数が合計89人だ。」
少ないな。
「宣伝していないからな。この半分くらいが俺だったり。とりあえず、魔法カードのプリントアウトだな。」
魔法カードの絵が公開されているし。がーっと印刷された紙がプリンタから出てくる。
「これをこの線にそって切って、完成だ!」
安易だな。
「ハサミ、ハサミ!」
「あ、私が切りますよ。この線にそって切ればいいんですよね。」
「じゃ、任せた。」
ジョキジョキとな。
10分ほどで魔法カードの補給完了。
「予定よりかなり遅れてますけど、明日には着きそうですね。ウィングスに入ってしまえばもう雷鷲も襲ってきませんから。」
現在、8時。レストランで夕食をとっている。今日は魚料理だ。
「で、明日の交通手段は?俺の魔法で今日みたいに走っていった方が速いと思うのは気のせいか?」
この料理、ソースが美味いな。
「ウィングスまで1000qくらいありますよ?」
それはだるいな。
「その距離を走るのは無理だな。せめて200kmまでだな。」
魔法効果は永遠ではないし、魔法効果を持続させるには体力を消費する。
「護衛を呼びました。今度は黒馬戦闘員の精鋭が2人来るそうですよ。大勢で護衛するより目立たないとかで。」
2人か。むさい男が2人だったら疲れるけど、魔法で走っていくぞ。
「明日は護衛2人と合流後、ヴァスタ駅からウィングスまで電車移動です。ウィングス駅まで5時間くらいですね。
乗り換えはありませんからゆっくりくつろげますよ。」
5時間って尻が痛くなりそうだな。
その夜。
「だ、ダメです!危険日から前後3日くらいは普通、安全のために避けるでしょ!」
「やった後に魔法で受精卵を殺せば大丈夫だって。」
「あ、明日は最後の追い込みですよ!最後の襲撃が一番の山場って昔から決まっているじゃないですか!
その前日に体力を消費してしまってはダメです!」
「今まで単に運が良かっただけで明日はぽっくり逝ってしまうかもしれないじゃないか。
死ぬ前にロストバ○ジンしておけ。」
「うぅ、大丈夫ですよ!エル様がいれば絶対に無事、アジトまで行けます!」
「人間は完璧ではないからな。いつ、何が起こるかわからんぞ。」
じりじりとセラを壁際に追い詰めて飛びかかろうとした所で、ドアをノックされる。
「あ!誰か来たみたいですよ!早く出ないと!」
ちぃ、誰だよ。こんないい所で。セラが俺の脇を抜けてドアまで走っていく。
「はいはい!何の御用でしょうか?」
全く、間違いだったら八つ裂きにしてくれるわ。てか、雷鷲の襲撃だったらもろぶっ殺すぞ。
「エルってやつの護衛に来た黒馬戦闘員ルーファ・ミラルダとファラ・マルコスでーす♪」
お!女の声!ルーファとファラって女っぽいな。
「あ、はい。ご苦労様です。今、開けます。」
セラがドアの鍵を開けて2人を中に入れる。
「お前がエル?」
「いえ、エル様は奥です。」
「あそ。」
この会話はちょうど壁の陰になって見えない。なんか性格の活発そうな女だな。
「お!お前がエル様か。明日はよろしく!」
なんか金属の槍を担いだ女が現れる。赤髪の短髪がなかなか活発そうでいいな。胸も結構あるし、戦闘で鍛えられた引き締まったスタイルがかなりいい。目は茶色だな。
「私がルーファ・ミラルダで、こっちがマルコスだ。」
ルーファに続いておっさんがぬぅっと出てくる。
「おっさんじゃん!てか、定年間近のじぃさんって感じ!!」
ファラって女じゃねぇし!てか、マルコスが名前でファラが苗字じゃねぇの?
「まぁ、確かに54歳で定年間近のじぃさんだね。これでも素手の戦闘のスペシャリストで、
武器を使わない戦闘なら黒馬最強だから明日は安心してもいいよん♪」
てか、マジで定年間近かよ!
見た目の説明をしておくとだな、身長2mくらいので無駄な肉のないスッキリとした細めのマッチョで、
頬骨が出ている。んで、なんか知らんけど、ターバン巻いている。
それから、格闘のスペシャリストに見えないくらい優しそうな垂れ目をしている。鼻が高いな。
髪の毛はターバンに隠れて見えないのか、実はないのか、ない方に100C(←お金の単位、クレス)かけたいな。
「あいさつも済んだし、君は酒には強い方かね?んん?」
にへら、とした顔をルーファが近づけてくる。
「まぁ、それなりに弱い方ではないと思うが。」
金がないからあんまり酒を飲んだことがないし。
「おお!そうか!これから一緒に飲みに行こう!マルコスのやつって酒が弱くてダメなんだ!行くぞ!」
ルーファに腕をつかまれ、強引に引っ張っていかれるのであった。
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