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2003.10.26


第1話 スカウト(10)



 あたしはリタ・ヒラルカ18歳。高校を卒業したばかりの女の子です。
 今は進学前の長期休暇を利用して大好きな旅行でヨーロッパに来ています。
 楽しい旅行のはずが、不幸続きでへとへとです。
 最初の不幸はニューヨークの空港で置き引きに遭いました。 陸上部短距離で鍛えていたあたしですから、難なく捕まえたのですが、その拍子に鞄の鍵が壊れて荷物をばら撒くことに。
 お気に入りのバックだったのに。買い換えるお金がないので留め金はガムテープになってしまいました。
 その次は飛行機に乗っている時。ふと横の窓から外を見ると、なんとエンジンから黒い煙が噴き出しているじゃないですか! スチュワーデスさんを呼ぼうとじたばたしていると火が噴き出してきたじゃないですか!! ドーン、と言う音と共に機体が物凄い揺れて死ぬかと思いました。うぇ〜ん!
 最新型の飛行機は羽1枚でも飛べるんだって。って、そんなわけないじゃん!!って降りてから気付いた。
 本当はウィングスまでいく予定だったのに飛行機の故障で最寄のセフィラト空港に着陸して、飛行機の乗り換え。
 次の不幸はその乗り換えた飛行機の中でした。乗る飛行機間違えちゃったの! 離陸した時にウィングス行きって言っていたから安心していたら、いきなり剣とか槍を持った人たちが戦闘をはじめちゃうし!! ガインって人が脱出ポットに案内してくれたから助かりました。
 パラシュートでゆっくりと降りていく脱出ポットの中で一緒に乗り込んでいた人たちと窓の外を見ると、 山にあたしの乗っていた飛行機が墜落するのが見えたの。
 その脱出ポットの中で間違えて乗り込んじゃったのを知ったの。
 あの飛行機って、黒馬グループのVIP専用だったのね。どうりで一番安いビジネスクラスだったのに足が広々と伸ばせる席だなぁ、と思っていたの。
 ガインさんには親切にしてもらっちゃいました。脱出ポットで着地後、最寄の街、ヴァスタに連れて行ってもらって、 Eagle Grand Hotelなんて高級ホテルに部屋をとってもらっちゃった♪ラッキー、とか思ったんだけど、 なんか武装したゴツイ人ばかりが泊まっていてちょっと困っちゃった。 しかも、酔っ払った兵隊さんに襲われて犯されそうになっちゃうし! 途中でガインさんが助けてくれて、恐かったよぉ〜。うぇ〜ん!
 翌朝、親切なガインさんにヴァスタ駅まで送ってもらって、今はヴァスタ駅で切符を買おうと列に並んでいます。 ついてないことにかなり混んでます。
 私の前は黒髪のスタイルのいい凄い美人。あたしもあんな美人になりたかった。
 ああ、もう18歳。胸はBカップのまま大きくならず。童顔でそばかすだらけ。美人にはほど遠いです。
 あ、割り込み、と思ったけど、あたしの前の美人さんにジュースを買ってきた彼氏でした。 あたしも彼氏、欲しいなぁ。

 10分くらいして、あたしの番。ウィングスまで片道12500C。
 なにか後ろが騒がしいなぁ。
 うぇ〜ん!銃激戦しているし!しかもさっきの黒髪の美人さんが銃を持っているし!
 「ぎゃああ!!」
 ひーん!私の後ろに並んでいた人が撃たれちゃったよ!う、うわ!即死?!あ、切符が出てきた。避難避難。
 あ、ガインさん。って、あんたかい!銃撃戦の張本人は!!銃を持っている人は昨日、あたしの泊まったホテルにいた人たちじゃないですか!!
 「死ねや!火炎呪符!!」
 と言う声がしたと思ったらガス爆発ですか?こんな駅のホームで?!昨日の兵隊さんたちが炎にまかれちゃってるぅ!
 うぇ〜ん!電車が来た!!中に避難しよ!
 「電車が参ります。黄色い線まで下がってお待ちください。」
 ってそんなのんきなアナウンスをしていていいんですかぁ!
 「駅の構内での銃撃戦はお客様に大変ご迷惑です。そう言うことは外でやってください。」
 そんなアナウンスがなんかねぇ。
 あ、美人さんがこっちに走ってくる。げ!兵隊さん!こっちに銃を向けないでよぉ!うぇ〜ん!
 「鏡壁方陣!!」
 あ、美人さんの彼氏がなにかバリアみたいなのを出したよ!おお!銃弾を弾き返してる!てか、あたしみたいな一般市民に向けて発砲しないでよ!!
 「貴方、乗るなら早く乗って、奥に行って!」
 「はい!」
 美人さんに背中を押されて慌てて電車に乗り込む。
 「トドメの一発!雷神呪符!!」

ピカ!ドォーーーン!!

 こんな所で落雷ですか?!あ、兵隊さんたち、体が痺れて動けないみたいです。
 あ、電車の出発ベルが鳴ってる。
 「ふぅ、一安心。エル様。おけがはありませんでした?」
 と、美人さんが彼氏に言っている。
 「昨日、魔法カードを補給しておいて良かったなぁ!こんな所で襲われるんだもんな!電車にはそこの女以外に乗せてないから、 とりあえずは安心だぞ。そいつがヒットマンってことはないだろうからな。」
 ふぇ?あたし?
 「人は見かけによらねぇって言うし、とりあえず拘束しとく?」
 って、もう1人いた短髪の美人お姉さん。
 「さすがに雷鷲が偽善組織とはいえこんな子どもをヒットマンにはしないだろ? そもそもあの襲撃は俺らを殺すのが目的じゃなくて捕獲が目的だし、銃弾も麻酔弾だったじゃん。」
 あ、そうなの?あのあたしの後ろで撃たれて倒れた人は即死じゃなくて、即眠?な〜んだ、良かった♪
 「捕獲が目的ならなおさらですよ。殺し目的でなければ子どもの方が油断するからって良く使う手ですよ。」
 って、美人さん。そんなこといわないで。
 「そんな深く考えなくてもいいだろ?恐がらせてるぞ。」
 ああ、彼氏が優しい!
 「とりあえず、監視下に置いとくか。おい、嬢ちゃん。面ぁ、貸せや。」
 と、短髪のお姉さんが。どっかの危ない人たちですか?うぇ〜ん!
 「おい、ルーファ。小さい子を泣かせるなよ。ごめんねぇ〜。怖いおっさんが無言の威圧で脅してて。」
 いや、そっちのおっさんは関係ないし。
 「一人旅?どこまで行くのかな?顔の形が綺麗だね。将来、美人になりそうだ。」
 将来っていつでしょう?すでに18のあたしはこれ以上、成長できるのでしょうか?
 「えっと、一人旅です。ウィングスまで行きます。えっと、一応、18歳で高校卒業しているんですけど。」
 これ以上、子ども扱いされるのはちょっと。
 「18?こんな童顔も可愛くていいなぁ!」
 童顔言うなぁ!
 「つーことで、このねぇちゃんたちが目の届く所に置いておかないと安心できないみたいだからウィングスまで旅の話に花を咲かせようじゃないか! よし、決定!おっさん!車内販売探して4人分の菓子と飲み物買って来い。」
 この彼氏、美人さん、短髪のお姉さんに、多分あたしで4人。おっさんの分は?それとも、あたしの分が入ってない?
 「あ、あそこの席が空いてるな。座れ座れ。」
 4人で向かい合う形の席だね。あ。あの人は別?


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