「お茶が飲みてぇな。誰かお茶っ葉持ってねぇの?」
やはり饅頭には緑茶でしょ。
「どうしてお茶っ葉なんです?こんな電車の中でお湯はないでしょう?」
と、リタが饅頭をかじりながら言う。
「あ、マルコスが持っていたよね?」
ルーファが通路を挟んで隣に座っているマルコスに呼びかける。
「まぁ、持っているが。茶碗は2つしかないぞ。」
と言ってマルコスが小さなバックから茶筒とやかんを出してくる。
「茶碗3つくらい何とかするか。リタちゃん、俺様の大魔法を見せてやるぜ。」
ばっと腕を広げる。肘がルーファのでこにぶつかってしまうし。
「痛いって。」
ルーファがでこをさすりながらこっちを睨んでくる。
「あ、悪い。とりあえず、見とけ。」
ここに取り出しましたは種も仕掛けもない白い紙とペン。それにこんな模様をカキカキとな。
俗に言う六亡星ってやつ。んでもって、その真ん中に手を置いて呪文を唱える。
すると、紙の上においた手が光り始める。
「いでよ!茶碗!!」
紙の上から手をどかすと同時に閃光が走る。光が収まった紙の上に茶色のなかなか渋いデザインの茶碗が現れる。
「うわ!湯飲み茶碗だ!凄い!今のぴかぴかってどうやってんの!」
リタが出現した湯飲み茶碗を持ち上げて六亡星の描かれた紙に何か仕掛けがあるのか裏返して確かめている。
「旅のお土産にプレゼントするぞ。俺様の名前入りだからいい記念になるぞ。」
湯飲み茶碗をひっくり返した所に『エル様・作』と書いてあるのを発見する。
「わ!ありがとうございます!」
う〜ん、女の子は嬉しそうにしているのが一番かわいいのう。続いて、自分の分とセラの分も作る。
「どこに隠し持っていたんですか?」
と、湯飲み茶碗を受け取ったセラが真面目な顔で訊いて来る。
「お前。俺の大魔法を信じていないな?昨日、空を飛んだり、水の上を走ったりって散々俺の魔法を見ていたくせに。」
ルーファとリタが種を教えろと騒いでくる。種なんてねぇって。
「ルーファ、お前。俺が何でスカウトされたか知ってんのか?おっさん、やかんとお茶っ葉、貸して。」
ルーファ経由でマルコスからやかんと茶筒を受け取る。
「えっと、何で?私ってウィングスまで護衛しろって言われただけなのよね。」
ふぅ、俺の偉大さを見せ付けてやろう。
「この何の仕掛けもない紙をよく調べろ。これから水を出すから。」
ルーファが俺に渡された紙を調べている。
「この変な模様は何だ?」
「模様だ。他に何もないな?やかんに水を入れるぞ。」
ルーファから変な模様の描かれた紙を返してもらう。
それに念を込めると青い炎をあげて燃え尽きると同時に空中から水がやかんの中へ注がれる。
「おお!手にホースでもついてんのか?!」
ルーファがなんか言っている。
「よく見ろ!空中から出てんだろうが!」
リタとマルコスなんか無言で水の出現する様に見入っている。
「んで、ここに茶葉を入れて・・・。」
茶筒からぱらぱらと茶葉をやかんの中に投入する。
「んで、温めると。」
再び新しい別の模様の描かれた紙を取り出し、やかんの底に張り付ける。
それに念を送ると今度は赤い炎をあげて燃え尽きる。
「あ、お茶の良いにおいがしてきました。」
リタの目がキラキラ輝いている。俺の魔法に感動しているみたいだな。
「んなもんかな?茶碗出して。」
リタの差し出した湯飲み茶碗に出来上がったお茶を煎れてやる。
「熱いから注意しろよ。」
リタが湯飲み茶碗からお茶をすする。
「お茶だ!なんでなんで!」
ふ、魔法の力さ。
「世界最高の魔法使いだからさ。セラ。茶碗出せ。」
セラにもお茶を煎れてやる。ルーファもマルコスから茶碗を借りて持ってきたのにお茶を煎れてやる。んで、俺の分もな。
5人にお茶が行き渡る。
「魔法ねぇ。手品でも何でも良いけど、マルコスの持っているお茶は美味いのう。」
と言ってルーファがお茶をすする。
「饅頭には緑茶が良いと思うのだが。」
と言いつつも茶色のお茶をすする。
「100グラム100Cの安いお茶だし。」
さよか。
雷鷲饅頭なんて変な名前の饅頭だったがなかなか美味であった。薄皮の生地にこしあんが入った饅頭で、
『雷鷲』って書いてあるお菓子だ。毒は入っていなかった。
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