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2003.11.10


第1話 スカウト(13)



 「おお、ウィングスだぁ〜!」
 5時間、何事もなく(車内販売もなく)ウィングス駅に到着した。
 「時間かかりすぎだぞ。ホテルでサインした後、エルは悪の組織黒馬で世界征服計画を着々と進めていくのであった。 の一言で第1話が終わってもよかったんだよ。」
 電車から降りて背伸びをしている。5時間座っていて緊張していた筋肉がバキバキっとか言っている。
 「第1話ってなんですか?本当は昨日の内に本部に着いて、今日からお仕事をしてもらうはずだったんですけど、 皆、雷鷲のせいですよ。」
 セラがなんか言っている。
 「午後2時か。ハラヘッタ。まずは飯にしようぜ。リタちゃんも一緒にどう?」
 もうすっかり仲良くなって電話番号、住所まで聞き出してやったぜ。ニューヨークに行くことがあったら訪ねてみよう。
 「あ、はい。一緒に行きます。」
 リタが電車からでかい荷物を引きずりながら降りてくる。
 「んじゃ、ルーファ。ウィングス観光案内は任せたぞ。」
 ポンっとルーファの肩を叩いてやる。
 「任せろ!私は生まれも育ちもウィングスだぜ!行くぞ!皆!」
 ルーファが走っていってしまう。元気だなぁ。
 「あ!待ってくださいよぉ〜!」
 でかい荷物を引きずったリタは歩きにくそうだな。女性にはとりあえず親切にしておくというのが俺のモットーだからな、 そんな困っているリタを手伝ってやる。

 「ここだ!ここのカツ丼が美味しいの!」
 『今日の飯屋・ウィングス支店』
 「色んな所にある有名チェーン店じゃねぇか。セフィラトにいたときもお世話になったぞ。」
 自炊はほとんどしなかったからな。旅行に行った街には大抵1つはあると言う世界規模の食堂チェーン店だ。 そう言えば本店ってどこにあるんだ?
 「そのチェーン店の中でここのカツ丼は格別なんだよ!ほれほれ、行くぞ。」
 と言ってルーファが乗り込んでいってしまう。
 「私もニューヨークでよく入りますよ。」
 とすぐ横にいるリタが言う。1つの荷物を2人で引いているからな。
 「まぁいいや。大して味が変わらなかったらルーファに全員分おごらせよう。」
 マルコスのおっさん、セラに続いて入る。

 「おばちゃん!カツ丼6つね!」
 玄関をくぐるとルーファがすでに席について注文していた。
 「おい。1つ多くねぇか?」
 ルーファ、マルコスのおっさん、俺、セラ、リタで5人前のはずだ。
 「私が2つ食べるんだよ!文句あるか!」
 びしっとルーファが指差してくる。
 「カツ丼1杯のカロリーが大体950kcalで2杯だと1900kcalか。1日に摂取する適性カロリー数って言うのが大体2000kcalって聞いたことがあるから、 さっきの饅頭と合わせて確実にオーバーするな。」
 そんな噂を聞いたことがあるって程度で、確かな数字ではないが。
 「筋肉が多いと消費するカロリーも高いんだよ!これでも普段は3杯行く所をさっき甘い物を食べたから1杯抑えてんだよ!」
 お前は23歳ですでに成長期は過ぎているだろうが。後でかくなるのは腹と胸くらいじゃないのか?
 んなことを言っているとカツ丼が6つ運ばれてくる。
 「他の所以下の味だったら全員分おごれよ。」
 といいながらルーファの正面に座る。
 「美味かったらこの6人前プラス、テイクアウト7人分おごれよ。」
 13人前?えー、1つ300C(クレス)だから3900Cか。
 「って、何でテイクアウトまで払わねばならんねん!しかもお前3つも喰うのかよ!」
 うん!とか言ってルーファが満面の笑みで頷く。過剰分が腹ではなく、胸についてくれることを願うばかりである。
 「冷めない内に喰え。」
 ルーファがガツガツと言いながらカツ丼を掻き込んでいる。よく噛んで食べろよ。
 「んじゃ、どれどれ。」
 とりあえず、御飯が見えないくらい巨大なカツを喰ってみよう。てか、ここって世界設定上、 スイスの辺りなのに何でカツ丼があるんだ?って、世界規模のチェーン店だからか?
 ちなみにセフィラトがポルトガルの辺りでヴァスタがフランスの辺りだ。
 う〜ん。噛んだ瞬間にサクッと言って柔らかい肉が口の中に飛び込んできやがる。 噛むと肉汁がじゅわ〜っと染み出してきてなかなか。
 んで、御飯。たまにべちゃっとしていて美味くないがこれは大丈夫だな。タレが絶妙な絡まり方で美味。
 「う〜ん、なかなか美味じゃないか。って、もう1杯空けてんのかよ!!」
 俺の突っ込みにルーファが御飯粒をほっぺたにつけた顔を上げる。
 「お代わりして良い?」
 と言うルーファ。
 「さっき饅頭食べたから抑えてんじゃなかったのか?」
 と言う俺の意見を聞かず、お代わりを注文しているやつ。
 「食え喰え!たくさん喰ってぷくぷくに太ってしまえ!」
 聞いてねぇし!
 「あ、デザートも良い?」
 デザートってフルコース食べても穀物が少なくて何か物足りないから最後にちょっと甘い物を食べて物足りなさを補うっていうやつであって、 こんなカツ丼を3杯も・・・・、と思ったのだが、ルーファの横に3つからになったどんぶりともう1杯持っているから4杯か、 んな食べてデザートも食うのかよ。
 「やめとけ。」
 と言っている途中で注文しているし!しかもケーキ!!
 こんなに食べているから戦闘員なんてハードなことしているのに顔が丸いのか。
 結局ルーファが4杯と他4人が1杯ずつ、テイクアウト7つにルーファの喰ったティラミスのケーキで合計4750C払わされるのであった。

 「それじゃあ、皆さん。またどこかで会いましょう。」
 リタちゃんとはここでお別れか。
 「きっと会いに行くよ。」
 と言ってさりげなく手を握ってやる。
 「お茶碗、大事にしますね。それじゃ、さよなら!」
 リタちゃんがバスに乗り込んでしまう。それを手を振って見送るのであった。

 「んじゃ、総帥に会いに行くか。」
 この長いプロローグもここで終わりか。


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