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2003.11.18


第2話 黒馬(3)



 「あ、俺の家から持ってきた荷物があるじゃん。どうしようかな。」
 部屋には一通りそろっているので前のアパートからもってきた私物がなくてもこのまま生活が始められる。 しかも、アパートから持ってきたやつより良品が用意されている。いい待遇だな。
 「えっと、どこにあるんですか?」
 もう3日も前の話だから忘れていると思うが、俺が転送方陣で亜空間に荷物を送っておいたのだ。 んで、転送方陣とセットとなる亜空間から荷物を取り出す出現方陣で荷物を呼び出せるのだ。
 「そうだな。実の所、リビングだけですっぽり俺のアパートの荷物が全部入ってしまうんだな。 リビングに出すから使えるものと捨てる物の仕分けを手伝え。」
 つーことで、研究室からリビングへ移動する。

 「よし!出現方陣!いでよ!」
 懐から出した魔法カードが燃え尽きると同時に目の前にアパートの部屋に置いてあった配置のまま、 アパートにあった荷物が目の前に出現する。
 「わああ!いつの間に運び込んだの?!」
 ルーファが驚いてる。セラは絶句している。
 「俺の魔法で亜空間に保存しておいた物を呼び出したのだ。んじゃ仕分けするから手伝え。」
 とりあえず、魔法研究で書き溜めた資料は研究室行き。たくさんあるファイルとかCDとかハードディスクとかを研究室に運ぶ。 全部運んだら物が少なくなってしまった。
 エロ本とか鞭とか麻縄とかいかがわしい物がいくつかあったが、2人に気付かれないように真面目な物と混ぜてこっそり部屋に運んでおいた。 寝る前に目を通す研究資料の名目で寝室に運んだのだからいかがわしい物だとは気付かれてはいまい。
 「資料を全部運んだらテーブルとかベッドとかしか残りませんね。まだ使えそうですし、空になっている空き部屋にでも入れておきます?」
 まぁ、そうだな。ベッド、テーブル、空の本棚、空の冷蔵庫をセラの部屋の隣にある空き部屋に運ぶ。
 「後は俺の服の入ったタンスか。服は全部俺の部屋に入れてタンスは空き部屋行きだな。」
 とりあえず、下着は自分で運ぶ。しかし、部屋のクローゼットの中に新品の綺麗な(結構高そうな)やつがあるので、 こんなゴムの伸びたようなパンツは捨ててもいい気がするな。数も十分あるようだし、ゴミか。
 「なんか雷鷲ブランドの服が結構あるね。」
 ルーファが鷲の描かれたトレーナーを広げて言う。
 「よく安売りしているし、なかなかかっこいいからな。」
 そのトレーナー(新品)は700Cで手に入れた物だ。
 「私も下着が雷鷲ブランドだったりするんだよね。」
 安いからな。
 ちなみに雷鷲は今、俺が所属している黒馬と犬猿の仲にある敵対組織である。
 部屋のクローゼットに服を片付け、空になったタンスを空き部屋に運んで俺の持ってきた荷物の仕分けは終了。

 「おお、もうこんな時間じゃん。」
 ふと、リビングにある時計を見るとすでに7時を回っていた。
 「あ!見たいテレビがあったんだった!」
 と言ってルーファが断りもなくリビングにあるTVの電源を入れる。
 「アニメかい!」
 とルーファに突っ込みを入れつつ、ルーファの隣に座って一緒に見るやつ。
 「セラ!あのテイクアウトしてきたカツ丼とお茶!」
 向こうで立ち尽くすセラに声をかける。
 「あ、はい。」
 忘れていたと思うが、さりげなく玄関にある靴箱の上に放置しておいたのだ。

 しばらくしてカツ丼とお茶が運ばれてくる。カツ丼はレンジで温められ、湯気を立てている。
 「お待たせしました。」
 と言うセラをアニメに夢中で気付かない俺とルーファであった。
 「・・・。」
 セラは無言で俺とルーファの前にカツ丼とお茶の入った茶碗を並べる。 その後、ソファの空いている所に座って一緒にTV観賞をしながらカツ丼を食べるのであった。

 現在、午後9時。
 「泊まってくのか?」
 ルーファはすでに泊まる気満々で客間に荷物を運び込んで、客間に常備してある着替えを脇に抱えている。 風呂に入る気か?
 「え〜、こんな夜遅くなってこんなかわいい女の子を追い帰すの?一晩くらい泊めてよ。」
 と言うルーファだが、俺の返事を待たず、リビングから出て行く。やはり風呂か?
 「お〜い。」
 とりあえず、廊下に出てみると、ルーファが左手突き当たりのドアに入っていく所であった。やはり風呂だな。
 「いいじゃないですか。部屋はいっぱいあるんですし。」
 なんかセラが嬉しそうにしている。
 「お前なぁ。俺たち以外に誰かいたら安心してできないじゃないか。 やはりロストバージンくらい3Pより1対1でやった方がいいだろう?」
 ぴくっとセラが反応して一歩引く。
 「あ、そうだ、報告書を書かなくちゃ!」
 セラが逃げる様に部屋から出て行く。あれだけもったいぶったこと言っておいてやる気ないのか? まぁいい。いつかがばっと襲ってやるぜ。
 「さて、セラがいなくなったことだし、ルーファが何をしているか見てみるか。」
 こそこそっとベランダに出るガラス戸から外を見る。外から気付かれない様に壁に隠れてな。 ここから浴室が覗けるのだ!!あいつも一応、女だからな。しかもスタイルは申し分ない。ぬふふふふふふ。
 「エル様、そこで何をしているんですか?」
 !!
 「ぐぉ!セラ!何か忘れ物か?!」
 いつの間にかセラが帰ってきていた。セラが首をかしげている。
 「あ、はい。エル様の網膜パターンの登録が済んでいないのを思い出しまして。 登録をしないと部屋に入れませんから。」
 ぐ、そう言えばしていなかったな。玄関は網膜パターンのチェックをするセキュリティシステム採用だったからな。 しかも、鍵とか使わないでチェックすると鍵が開く仕組みになっていた気がする。
 「さっさと行ってくるか。」
 ちぃ。ルーファの裸体はまた今度の機会にするか。きっとまた泊まりに来るだろう。
 「それでは行きましょう。あ、ルーファさんに留守番を頼んできますね。」
 セラがパタパタと出て行く。玄関で待ってるか。


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