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2003.11.19


第2話 黒馬(4)



 「ごめんください。」
 現在、マンションの30階(最上階)にある管理人室の玄関前にいる。
 『なんじゃ?おら!』
 インターフォンからおっさんの声がする。
 「8階に住んでいるセラ・ベルガナですけど、お話していたエル様が到着いたしましたので、 網膜パターンの登録をお願いします。」
 と、セラがインターフォンに話し掛ける。
 『ああ、セラちゃんか。今、開けるけ、ちょっと待っとれ。』
 なんか急に声が優しくなるし。
 しばらくして玄関のドアが開く。中からバーコード頭のおっさんが現れる。
 「おう、お前がセラちゃんと同棲するっちゅう、野郎か。さえねぇ、顔してんなぁ。」
 大きなお世話だ。
 「ほれ、とっとと来い。」
 おっさんの後に続いて中に入ると、中は物凄いハイテク機器であふれかえっていた。
 「ぐお、凄いな。これ。」
 どっち向いても所狭しとコンピュータの箱とそれを繋ぐ太いコードが置いてあるのが見える。
 「管理人さん、この辺りで有名なハッカーらしいですよ。」
 あのバーコード頭の口の悪いおっさんがハッカーねぇ。
 「おら、ここだ。その辺のブツにむやみやたらと触んじゃねぇぞ!」
 へいへい。なんか触ったら感電しそうだし。

 「ちぃーっと動くな。まばたきもするな。」
 現在、網膜パターンの登録中。目に変なカメラが取り付けられている。
 「よし、逆だ。」
 右目から外して左目に取り付ける。
 「よし、動くな。」
 ん。
 「おっし、終わりだ。野郎の顔なんて見たくもねぇ!さっさと帰りな。セラちゃんはゆっくりしていっていいからね。」
 おいおいおい。
 2人一緒にお礼を言って管理人室を後にするのであった。

 「網膜チェーック!」
 玄関横のアイパス(網膜パターン識別装置)を覗き込む。ピッと言う機械音がする。鍵が開いたようだ。
 「しっかり登録されているみたいだな。」
 がちゃっとドアを開けて中に入る。
 「ただいまーって何、喰ってんだよ!お前は!」
 リビングに入るとラーメンどんぶりに盛られているアイスクリームを抱えてTVを見ているルーファを発見してしまう。 ピンク色のパジャマがかわいいなぁ、とか思ったのだが、抱えているラーメンどんぶりがなぁ・・・。
 「あ、お帰り。いーお風呂だったよ!」
 ルーファが嬉しそうに言う。てか、何を食べているのか答えろ。
 「エル様もアイスクリーム、食べます?」
 あー、ルーファが美味しそうに食べているのを見たら食べたくなったな。
 「んじゃ、少しもらおうか。」
 さすがにラーメンどんぶりに盛られるのは勘弁だが。
 「はい、少しお待ちくださいね。」
 と言ってセラがリビングから出て行く。
 帰ってきて改めて見るリビングは広いなぁ。何uあるんだ?

 しばらくルーファの隣でTV観賞しているとセラがトレイにアイスクリームの盛られた涼しそうなガラス小鉢を載せて帰ってくる。
 「お待たせしました。」
 セラの持っているトレイからアイスクリームを受け取る。そう言えばアイスクリームなんて食べるのって何年ぶりだろ?
 ガラスの容器に盛られた半球形の白いアイスクリームを銀色のスプーンで少し崩し、口に運ぶ。 う〜ん、バニラの濃厚な甘さとアイスクリームの冷たさがなかなか美味だのう。あー、かなり高そうだ。
 「う〜ん、冷たくて美味いな。いくらのアイス?」
 セラがちょっと考える仕草をして、
 「1パック1万Cです。」
 「1パックって何人分?」
 「これ1杯を1人分にしますと10人分くらいですか。」
 て、ことはこれ一杯で1000C?!俺が普段食べているやつの10倍か!味わって食べよう。
 ふと、ルーファのどんぶりを見ると軽く10人前くらいは入りそうだよな。・・・こいつ1人で1万Cのアイスクリームを食べているのか? まぁ、食べている姿がかわいいし、たくさん食べて大きくなれよって、こいつは23歳だよ。もう10時回ったこの時間にこんなアイスクリームを10人前も食べたら太るぞ。
 「あー、おいしかった♪もう1杯持ってきてよい?」
 かわいいから許可してしまいそうだったが、
 「お前、これ以上食べたらマジで太るぞ。昼に食べたカツ丼はあの後の戦闘で消費されたかもしれないが、 もう後は寝るだけだろ?ぷくぷくに太るぞ。」
 ルーファがぷくっと頬を膨らませて眉をひそめる。かわいい。23歳に見えないな。
 「歯、磨いて寝る!」
 ルーファがドンっとテーブルに空になったラーメンどんぶりを置いてリビングから出て行く。
 「あ。報告書、書かなくちゃ。お先に失礼しますね。」
 と言ってセラもリビングから出て行ってしまう。
 「・・・・女っ気がなくなると寂しいな。」
 広い分、余計に。
 「風呂に入ろう。」
 んで、夜這いするために早く寝てしまおう。 


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