あれから何人かあいさつまわりをした。心配したみたいに実験台にされなくてよかった。
「えっと、次は倉庫の管理人さんですね。」
倉庫の管理人?何でそんな所にあいさつしに行くんだ?
「一応、私たちは世界征服を企む悪の組織で、他の正義を名乗る偽善者集団から襲撃されることもあるんです。」
あるのか。
「それでですね、身を守るために必要最低限の物資、傷薬とか銃の弾とかですね、そう言うのを支給しているのですが、
支給している所がこれから行く購買部です。」
購買かよ。
「そこに売っているお弁当で山菜釜飯って言う幻のお弁当があるらしいですよ。私は見たことないですけれど。」
なんだよ、その幻の弁当って。てか、弁当売っているって普通の購買だな。
「あそこですよ。」
タバコ、酒ありませんって看板が出ている。
「こんにちわ!ミラさん。」
と、購買のカウンターに突っ伏しているシアンの髪をした女(?)にあいさつをするセラ。
店の従業員がこんなんでここは商売が成り立つのか?
とか思っていると眠そうな目つきのままカウンターに突っ伏していた女(確かに女)が顔を上げる。
「お、セラちゃん。久しぶりぃ〜。ちょっと待っててね〜。支給品、持ってくるから。」
そう言ってカウンターのねぇちゃんがカウンター奥にあるドアから出て行く。中はかなり広い倉庫になっているようだ。
「この奥が倉庫ですね。薬や武器、弾薬、文房具、食料とか色々保管してあります。」
ふ〜ん。俺がいる場所の後ろはコンビニみたいになっている。弁当とか飲み物とかお菓子とか売っている。
しばらくしてカウンターのねぇちゃんがちょっとした事典を2つ重ねたくらいの大きさの包みを持ってくる。
「はい、これねぇ〜。他に何かいるものあるぅ?」
セラがカウンターで包みを開けて中身を確認している。中には薬とか弾丸とか入っている。なんか『手榴弾』なんて書いてある小さな箱があるが、
・・・手榴弾ってあれ?
「しばらく危険な所に行く仕事もないし、今日はいらないわ。」
そう言いながらセラが着ていた服の色んな所に受け取った物を入れていく。弾丸とかもポケットの中に。
「んじゃ、次は、えっとぉ〜、初めての顔ね。社員番号と名前を言ってぇ〜。」
俺の噂はここまで来ていないらしい。
「あ、ミラさん。紹介しますね。こちら、今度、魔法研究所に配属になったエル・ハウンディーア様。
社員番号はM8000−546−7788よ。それから、エル様。こちらは倉庫の管理人ミラ・ルラさん。」
そんな社員番号だったのか。ミラ・ルラさんか。ぼさぼさの長いシアン色の髪で、眠そうな目つきのなかなかかわいいねぇちゃんだ。
「ああぁ〜、あの噂のエル様ね。噂は聞いているわぁ〜。魔法が使えるんですってねぇ〜。」
ちゃんと噂はここまで来ているようだ。
「ちょっと待っててねぇ〜。あなたの支給品、持ってくるから〜。」
そう言ってミラが倉庫に入っていく。
しばらくしてかなりでかい段ボール箱を抱えてくる。
「えっと、まずは、銃ね。」
と言って、ミラが箱の中から無造作に銃を出してカウンターに置く。
「それから弾ね。それと防弾チョッキと、ホルスター。ここにこうやって銃を入れて、ここにこうして弾を入れておくのよぉ〜。」
眠そうな声とのんびりした声とは裏腹に慣れた手つきで素早く防弾チョッキとホルスター、銃、銃弾を組み立てていく。
「あ、こういうことはセラちゃんの方が詳しいわねぇ〜。」
詳しいのか?
「ここに入れておくからぁ〜、後でセラちゃんに指導してもらってねぇ〜。」
はい。しっかり指導してもらいます。特に拳銃の扱いとかな。
「エル様ってあのメズキ様の突きを弾き返したバリアみたいなのをつけているから特に防弾チョッキって要らないですか?」
そう言えばな。
「そう言えば昔はつけていたのだが、護衛鎧方陣ができてからはつけなくなったな。」
なんと言っても前に務めていた職場近くは3日に1回は銃撃戦に遭遇するという所だったからな。
「銃はとりあえず持っていてください。」
そう言ってホルスターのベルトの長さを調節して俺の体につけるやつ。
「手榴弾とかは訓練してからお渡しいたしますね。」
そう言って『手榴弾』と書かれた小さな箱をでかい段ボール箱に戻す。
「それから、ウェストポーチですね。とりあえず、ここに薬とか入れて携帯します。」
セラが紺色のウェストポーチにダンボールの中にある薬とか色々な雑貨を詰め込む。それからベルトの長さを調節して、
俺の腰につけるやつ。
「銃はとりあえず支給品ですからあまり威力ないのですが、もっと強力なのが欲しい時はここでそれなりの代金と引き換えに購入できます。」
購入するのかよ。
「あ、それからナイフですね。」
そう言って段ボール箱の中から皮の鞘に収められた刃渡り20pくらいのナイフを取り出す。それをウェストポーチのベルトに取り付けるやつ。
「う〜ん、こんな所ですね。」
完成してしまったらしい。
「どこかに行く時は忘れずにつけてくださいね。」
なんか工作員に仕立て上げられたようであれだな。
ダンボールの中にまだ色々残っているが、セラが今は必要ないとか言ってミラに倉庫保存を頼んでいた。
ミラに別れを言って次の所へ向かう。
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