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2003.11.30


第3話 魔法文明(7)



 「この辺りにくるとまだ運び出されていない物が残っていますね。」
 おおおおおお!!!発掘したてのやつか!
 「薬だな。使えるのか?」
 なんか薬品の入った茶色の瓶がたくさんある。
 「割れてませんから使えると思いますよ。」
 4000年以上前に作られた物だぞ?まぁ、発掘された薬品類を実際に使ったことのあるやつはいるが。
 「ここから先はまだモンスターが出ますから、見学はここまでですね。」
 なに?!
 「せっかくここまできたのに終わりか!」
 この先にまだ発掘されていない4000年もの間、誰も踏み入ったことのない領域があると言うのに。
 「さ、帰りましょう。」
 と、ライナがきた道を帰ろうとしている。
 「俺は行くぞ!モンスターがなんだ!俺の魔法で焼き払ってくれるわ!」
 うおりゃっとライナの向く方と逆方向、発掘途中の未開地域へ走り出す。
 「あ!エル様!そっちは危険だって!」
 ぐお!セラが追ってきた!しかも早い。俺との差がぐぐぐっと縮んでくる。
 「ここまできて捕まってたまるか!脚力強化護符!」
 ポケットから取り出した魔法カードを足に貼り付ける。カードが燃える尽きると同時にセラとの差がぐいっと広がる。 文字通り脚力を強化する魔法だ。
 「戻ってください!」
 はるか向こうでよたよたと走っているライナが見える。ライナは余裕でぶっちぎったな。
 「おおお!?」
 な、なんか、セラとの差がゆっくり縮んできた。スゲ!俺の魔法で強化した脚力で走るスピードに追いついてくるとは。
 「うおおお!!追いつけるものなら追いついて見やがれ!」
 マジでダッシュする。これにセラも追いつけまい。

ドン!

 「ぐわ!」
 「ぐおお!」
 何かとぶつかった。思い切り弾かれてしまう。
 「いってぇ〜。そっちはケガないか・・・・。」
 そこに見たものは。
 「うわああ!エル様!!」
 後ろでセラの悲鳴が聞こえる。
 「うっそぉおおおーー!!モンスター!!」
 そこに全身を体毛で覆われた見たこともない異形の生物がいた。 俺の体当たりに転んだのか地面に座っている。
 「エ、エル様!に、逃げましょう!モンスターと遭遇したら逃げるのが常識です!」
 知ってるわ!突然のことで腰が抜けて動けん。
 とりあえず、冷静になろう。やつの姿に物凄い恐怖を感じるが、この姿を客観的に受け止めて「恐怖」、 という感情をごまかそう。うむ。
 やつの体の大きさは座った状態で頭まで2m超。足は短いが、立ったら軽く3mを超えることだろう。 体はライトに照らされてつやのない青い体毛に覆われている。腕は4本あり、ハムみたいな筋肉でめちゃくちゃ太い。 手には鋭い爪のついた指が5本、人間の手の様な形でついている。顔はヤギだな。でかい角が2本、頭から生えている。 その目は黒目と白目の境がない赤い目をしている。顔はヤギでも草食じゃねぇな。口から鋭い牙が見える。 草食動物ならこんな歯はついていないはずだ。
 「よし、落ち着いた。」
 やれやれ。突然の遭遇で腰が抜けてしまったが落ち着いたぜ。いつも冷静な俺様だ。 しかし、俺が落ち着くまでに座っていたモンスターが立ち上がってしまう。
 「ちぃ!」
 モンスターが俺に向かって地を蹴る。そのスピードは弾丸のごとく。気づいた時には殴られて宙を舞っていた。 俺の護衛鎧方陣がなかったらあの鋭い爪に引き裂かれていた。
 「セラ!下がれ!お前じゃ一撃だ!」
 モンスターにぶっ飛ばされセラの後ろまで吹き飛ばされてしまった。 セラは勇敢にも剣を構えて俺の前に立つ。
 「くそ!」
 モンスターを容赦なくセラに爪を振り下ろす。そのスピードにセラは反応できない。

バチィ!!

 しかし、セラに振り下ろされた爪は見えない壁に弾き返されてしまう。それで体の勢いがそがれることなく突っ込み、 体も見えない壁に弾き返され、5m程吹き飛ばされる。俺の障壁方陣がセラを守ったのだ。
 「ありがとうございます!」
 と、俺にお礼を言いながらセラがモンスターに銃撃する。床に転がったモンスターの体に弾丸が突き刺さる。しかし、 大して効いていない様子だ。
 「ダメ!エル様!逃げます!」
 セラが叫びながらこっちに走ってくる。その途中で何かモンスターへ投げつけた。

ドオォーーン!!

 セラの投げた物が爆発する。手榴弾だ。黒馬ビルの購買に行った時に「手榴弾」なんて書かれた箱がいくつかあったな。 マジで爆弾だったのね。
 「セラ!後ろ!」
 爆発で起こった粉塵の中からモンスターが現れる。さっきの手榴弾で少し焼けているようだが、 大した傷じゃない。モンスターの振り下ろす爪を横にステップを踏んで交わし、すれ違い様に剣を胴に叩きつける。 もろに決まった。
 「え!?」
 剣が折れた。モンスターの腹にいくぶんの傷がついた様だが、致命傷ではない。
 「雷神呪符!!」
 電撃がモンスターの顔面を襲う。しかし、目くらましにしかならない。 その隙にセラがモンスターの懐から脱出する。
 「マジやべぇ!今の装備じゃ全く歯が立たん!」
 セラの銃と剣が効かない時点で打つ手なし。俺の攻撃魔法は全く威力がない。どうがんばっても人を殺すほどの威力は出ない。 俗に言う絶体絶命のピンチと言うやつだ。俺の魔法なら何とかなると思ったが過信しすぎた!


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