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2003.12.8


第3話 魔法文明(8)



 「エル様!先ほど拾ったブレイズウェポンを使ってみるのはいかがでしょう?」
 モンスターが突っ込んでくるたびに障壁方陣で弾き返しつつ、逃げている。あいつのスピードからこのままでは逃げ切れない。
 「ああ!あれか。試してみよう。」
 さっき俺様が封印を解いて手に入れた古代の兵器、ブレイズウェポンを懐から取り出す。
 「よっしゃぁ!この天才魔法使いエル様々がモンスターごときに負けるか!」
 その場で立ち止まり、ブレイズウェポンを構えてモンスターに対峙する。 俺のやる気オーラにモンスターも立ち止まる。
 「目覚めよ!ブレイズウェポン!!」
 ぬおおおおおおお!!

・・・・

 「おい。これってどうやって使うんだ?」
 ・・・・。
 「逃げるぞ。」
 再びモンスターに背を向ける。

 「くそ!刃がない剣なんてなまくら剣以下だ!」
 背中に障壁方陣を貼り付け、逃げながら刃の出ない剣の柄を調べる。
 形状は握り心地のいい金属の棒で、2握りよりちょっと長い。柄を持った時の親指側には刃が付くらしく、ちょっとへこんでいる。下の方は丸くなっていて邪魔にならないデザインになっている。装飾は全くなく機能的なデザインだ。
 「お、ボタンがついているじゃねぇか。握った時に手に隠れてわからんかったわ。」
 ちょうど親指の下に丸いボタンの様な押し込める場所があった。
 「よっしゃあ!今度こそ!」
 その場に止まり、モンスターと対峙する。俺のやる気オーラにモンスターも動きを止める。
 「おおお!俺様に力を!ブレイズウェポン!!」
 ぽちっと親指でボタンらしき部分を押し込む。

・・・・・

 「でねぇ!違うようだ。」
 再びモンスターに背を向ける。


 「くそ!もう障壁方陣が残り少ない!100枚も作ってきたのに何枚使ってんだよ!」
 90枚ちょっとです。
 障壁方陣でモンスターを弾き返し、それと同時に銃弾を巨大化させて威力をあげる倍化法陣を使い、空中に六亡星の魔法円を出現させる。その円を通してセラがモンスターに銃撃する。このちゃちなピストルの弾丸がバズーカ並の威力になるのだ。 しかし、やつはそれを爪で弾き落としてくる。
 「サービス!貫通法陣!!」
 ブレイズウェポンを守っていた魔法のバリアを破壊した封印解除方陣を物に付加させる六亡星の魔法円を空中に展開する。 セラの放った銃弾が2つの円を貫通する。
 モンスターはそれを体をひねって交わしてきた。壁と天井を蹴り、頭上から突っ込んでくる。
 「マズイ!障壁飛び越えコースだ!」
 新たな障壁方陣の魔法カードを取り出そうと懐に手を入れたその時、モンスターの脇腹が破裂する。
 「!」
 続けて2発。肩と足の付け根が吹き飛び、モンスターは地面に叩きつけられる。そしてそのまま動かなくなる。
 「エル様ぁ〜!セラさん!やっと追いつきましたぁ〜。はぁ〜。」
 振り向くとそこに銃身の細長い銃を杖に息を切らせたライナが息を整えて深呼吸していた。
 「おお!ライナちゃん!助かったぜ!」
 嬉しさのあまりライナに抱きついてしまう。
 「2人ともご無事なようでよかったです。さ、ここは危ないですから、早く地上に戻りましょう。」
 今回は素直にライナに続くのであった。


 「うぃ。地上に到着だぜ。」
 うぃってフランス語だっけか?ウィー、ムッシュっていうやつ。まぁ、よくわからんな。
 「お疲れ様でした。昼食にしましょう。」
 ああ、そう言えば昼、食べてなかったな。
 「昼食の後はブレイズウェポンの研究ですよ!」
 もう楽しみで夜も眠れませんよ、みたいな勢いでライナが言う。
 「ああ、なんか使おうとしたらダメだったんだけど。」
 懐からモンスター相手に役立たずだったブレイズウェポン(謎の金属の柄)を取り出す。
 「全く、古代の兵器って言うんならあんなモンスターなんて一撃だと思ったのになぁ。」
 もう一回ぽちっと握り部分についたボタンらしき所を押してみる。

ヴォン・・・、ヘニャ

 「・・・・・・・・・。」
 なんか出てきたし。
 「ちゃんと使えるじゃないですか。それにしても刃がヘニャヘニャですね。」
 柄から何か白い光を凝縮したような紐が出てきた。ブレイズソードって剣の刃みたいにまっすぐに伸びず、 地面にたれてしまっているし。
 「・・・。これって鞭じゃないんですか?」
 そう言えばそんな雰囲気がな。
 「ああ、SMプレーで使うあれか。アブノーマルの方が好きなのか?俺は虐める方専門だけど。」
 セラとライナがなんか赤面しているし。うぶやのぅ。
 「違います!こんな形の武器と言ったら鞭しかないじゃないですか!」
 まぁ、なぁ。かなり長いけど。
 「俺の根性が曲がっているから剣も曲がってしまったのかも知れねぇじゃねぇか。」
 俺の根性が思い切り曲がっている自信あるしな。
 「鞭ですか。新種ですね!ちょっと写真、撮らせてください!」
 いつの間にかライナがカメラを構えている。あの銃といい、カメラといい、どこに持っていたんだ? しかもあの長い銃はどこに片付けたのか見えないし。
 「はい、撮りますよぉ〜。」
 腰に手を置いてちょっとポーズを決めてみたり。

カシャ!カシャ!カシャ!

 「ブレイズウェポンの起動状態って初めてみましたよぉ〜。」
 なんか俺を撮らずにブレイズウェポンを持つ右手首から先しか撮らないし。
 「ありがとうございました!」
 20枚くらい撮ってお礼を言ってくる。
 「おい!俺も撮れ!」
 レンズを俺に向けてこなかったし!
 「あ!セラさん!ブレイズウェポンを持ったエル様とツーショット撮ってください!」
 とか言ってライナがセラにカメラを渡し、俺の左腕に腕を絡めてくるし。
 「はい、3、2、1・・。」

カシャ!

 「きゃあ!ありがとうございます!」
 なんかライナが嬉しそうだな。


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