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2003.12.11


第4話 アルフヘイム(1)



 「皆、喜べ!次の仕事は自治区外よ!」
 (ちなみに私達に分かりやすく言うと「皆、喜べ!次の仕事は海外よ!」です。この時代の前、古代魔法文明の時代に国境と言う物がなくなり、 国の枠が消えた。その代わりに自治エリアと言う単位で政治が行われている。)
 昼過ぎ、シャロンが研究室に走りこんできて叫ぶ。
 シャロンの声に皆が「やっほぅ!」とか言って喜んでいる。
 「旅行費は全部経費よ!」
 仕事で費用自腹だったら泣く。
 「で、どこ?」
 俺が前に住んでいたセフィラトとか隣の自治区だったら大して面白くないしな。
 「南アメリカ、熱帯のパラダイス、アマゾンよ!」
 (ちなみにジャングルで有名なあれな。)
 「アメリカは行ったことないな。」
 う〜ん、楽しみだ。
 「各自早速、旅行の準備よ!戦闘もあるだろうから武装も忘れずにね。」
 オイ。
 「エルとセラは戦闘訓練受けているからしっかりね!」
 オイオイ。
 俺はヤスニソス遺跡でエルウィップ(←Myブレイズウェポンに命名)を手に入れてから地下の戦闘員訓練施設でセラと一緒に週に何回か戦闘訓練を受ける羽目になった。
 おかげさまで重火器の扱いなんか覚えてしまった。
 「戦闘って何ですか?普通、私達みたいな研究員は先に戦闘部隊の方達が制圧した所の調査でしょ?」
 遺跡調査って言ってもモンスターが出るからな。その辺を片付けないと仕事にならない。
 「発見されたばかりで色んな組織の人たちが来るの。」
 他の組織ねぇ。
 「皆、仲良くって言うのはないのか?」
 とりあえず聞いてみた。
 「そうした方がいいと思うんだけど、古代遺跡の発掘は皆で取り合いだからね。ま、死なない程度に楽しみましょう!」
 オイオイ。
 皆、いつものことだ、とか言って慣れた様子で旅支度をしに今日は解散になってしまった。
 「私達も準備しないといけませんね。」
 俺たちも研究室を後にする。


 かれこれ、この黒馬魔法研究所に入ってから4ヶ月過ぎた。
 黒馬での仕事には慣れた。大抵は解読の仕事なので、いくぶんの魔法書は読める様になった。 おかげで新しい魔法の発見とかかなりある。
 悪の組織って言ってもやっていることのほとんどは善良な物で、人体実験とかやらせてくれないし。 前に開発した胸を大きくする魔法「豊胸方陣」の実験をしたいのだが。
 しかも、悪の組織だと言うのに正義の組織から襲撃されたり、仕事の邪魔をされたりしないし。
 一方、セラのガードは堅く、いまだに崩れない。家にいると悶々してあれだが、魔法研究に没頭すると忘れられるので今まで耐えてこれた。しかし、最近は限界が近い。着々と夜這いの準備は整えられてきているのでもうすぐだ。むふふふふふふ。

 「エル様。お手伝いにきました。」
 部屋で持っていく物を選定している所にセラがやってくる。もう準備は終わったのか?
 「熱帯雨林ですよ?こんなの持っていったら壊れちゃいますよ。」
 と、バックに入れておいた携帯ゲームを取り上げられる。
 「待て。移動中の暇はどうやってつぶせと言うんだ?」
 バックに入っていたソフトも全部、取り上げられてしまう。
 「本でも読んでください。」
 と言って投げてあった雑誌をバッグに入れるセラ。
 「待て。それはエロ本だ。別のにしろ。」
 エロ本って言うのにセラがバックに入れた雑誌を取り出して確認する。ぼっと赤面させてゴミ箱に放るやつ。
 「もっとまじめな雑誌を読んでください!」
 お前がやらせてくれねぇんだからいいだろうが。
 「えっと、持っていくのはこれとこれとこれとこれと・・・・。」
 セラが俺の意思を無視してバッグに荷物を詰め込んでいってしまう。
 「暇つぶしはこれです。」
 『初めてのイングリッシュ2』。魔法書に書かれた言語の1つだ。教科書かよ。
 「早く初歩的な言語を覚えてください。」
 全く、エロ本の1冊くらいでそんなに怒らなくてもいいだろうが。
 「あ、魔法カードの準備を手伝ってくれ。今回は湿気の多い所でも大丈夫な耐水インクと紙で作るぜ。」
 なんて言っても熱帯雨林だからな。
 「あ、はい。」
 魔法カードは自宅の研究室で作る。

 「今回は多いですね。」
 プリントアウトした魔法カードの山。
 「新しい魔法が多いからな。こっちで人体実験できねぇから敵の戦闘員で実験しなきゃならないんだよ。」
 豊胸方陣とか、即死させる呪殺方陣とかな。
 「すみません。エル様の魔法を警戒してか、最近は他組織との抗争がなくて。」
 なるほど。襲撃がないのは俺を警戒してか。さすが天才魔法研究家エル様々だな。名前だけで敵を恐れさせるとは。
 「まぁいいや。線にそって綺麗に切ってな。」
 なんかファンタジーの話を読んでいるとこういう魔法カードは自分の血で書いたり、筆で1枚1枚書いて色んな儀式をやっていたりするが、俺の魔法カードはパソコンで作って、それをプリンタで印刷して作ると言うなかなかお手軽なやつだ。 ちゃんと大きさを合わせて切るのが面倒だが、これも開発部にでも発注するかな?
 「これ、障壁方陣ですよね?」
 と、セラが切り出した魔法カードを俺に向ける。
 「ん、そうだな。」
 改めてみるとよくわからない絵が描いてあるよな。
 「何枚も作って覚えちゃいました。」
 さよか。
 ジョキジョキとな。


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