「あれがアルフヘイムか。」
ジャングルの道なき道を踏破し、目の前に村の様な場所が現れる。
「わぉ!あれがアルフヘイムね!」
後ろからぬぅっとシャロンが現れる。相変わらずの露出度が高い服を着用していて、所々血を流している。
皆、ヒルに噛まれたものだ。
「よし、行くぜ。」
研究員仲間の野郎その1が村に向って歩き出す。
名前は最近知ったのだが、ジャックと言うらしい。フルネームはジャック・ラクスリーだ。
ついでに野郎その2がマーク・イエスマン。最後に女がミーナ・クリスナだ。シャロンはシャロン・マッセラだな。
後ろには俺たちを襲ってきた凶暴な獣や他組織の戦闘員が倒れている。
全て俺の魔法で一掃してやった。大した殺傷能力はないから失神しているだけだ。
まぁ、失神している間に猛獣に食べられるかもしれないが、そこまで面倒見れんな。
「お!かわいいねぇちゃん発見!」
野郎その1、ジャックが走っていく。
「何!かわいいねぇちゃん!」
それに続く俺。アホだ。
「うお!かわいい!」
村の入り口らしき辺りに1人の女が水の入った木製のバケツを持って歩いていた。
癖のない綺麗な金色の髪を腰の当たりまで伸ばして、なかなかのスタイルの美人だ。胸もかなりあるな。
セラといい勝負だ。
「そこのお嬢さん!ここの村の人?!」
ジャックが走りながら女に声をかける。その声に女が振り返る。
見返り美人、金髪バージョン!
長いまつげとすらっとした鼻、白い肌、赤い唇!
「はい?」
女の目がこちらを向く。
「目がぁ!!」
赤い。ちなみに白目がない。いや、黒目部分がなくて白目だけと言うのかも。
「ああ、外の方ですね。ようそこ、私達、エルフの村へ。」
女がにこっと微笑む。髪が揺れて金色の髪の中から先のとがった長い耳がのぞく。
「エルフか。う〜ん、ファンタジー小説のまま美しい容姿に長い耳か。」
そんな感じだ。
「わたくし、エル・ハウンディーアと言います。よろしく。」
目に絶句して固まってしまったジャックの脇を抜けてエルフの女の前に立つ。
「はい!フレリア・アツァリウォです。」
再びにこっとな。う〜ん、目はともかく、美人だ。かなりの美女だ。
「えっと、この村にはどういった御用でお立ち寄りになられたのですか?」
なんだっけか?
「君をさらいに・・・。」
くっとあごを上げさせ、顔を近づける。慣れれば普通に綺麗な目だよな。
「えっと、人攫いですか?」
フレリアの顔がちょっと引きつる。う〜ん、作戦失敗か。
「アルフヘイムの調査です!綺麗な人を見つけたら手当たりしだいナンパしないでください!もう、恥ずかしい。」
セラが俺の腕を掴んでフレリアから引き剥がす。
「いいじゃねぇかよ!減るもんじゃなし。」
セラの足が俺の足を踏み潰す。
「イテェ!」
「減ります!全くもぉ。」
やれやれ。
「あ、ごめんなさぁい。私達、この辺りの調査がしたいの。いいかしら?」
俺と入れ替わりにシャロンが前に出る。
「あ、はい。まずは長老様にお会いください。ご案内いたしますね。」
にこっと笑ってフレリアが村の中へ足を向ける。
「さ、行きましょ。」
フレリアの後にシャロンが続き、ジャック、ミーナ、マークと行く。
「さ、私達もいきますよ!」
機嫌悪いなぁ。
「喰らえぃ!仲間のかたきぃ!!」
突然、後ろからマシンガンの乱射。その全てを障壁方陣で弾き返す。
う〜ん、戦闘訓練でメズキの鬼女とゴズキのおっさんにしごかれたからな。反応速度が上がっているぜ。
「なにぃ!」
なにぃ、じゃねぇよ。
「とりあえず、寝てろ。雷神呪符!」
電撃が襲ってきた戦闘服の野郎に当たる。電撃だから着込んだ防弾チョッキも通過してダメージを与えるぜ。
まぁ、ちょっと痺れさせて動けなくする程度の威力しかない。しばらく動けないだろうが、命に別状はなかろう。
「か、雷?」
俺の魔法にフレリアがなんか驚いている。
「んん?俺の魔法がもっと見たいか?」
懐からずばっと魔法カードを取り出して扇の様に広げる。
「ま、魔法なんですか?!み、見たいです!」
なんか落ち着いた雰囲気がなくなったな。持っていたバケツをひっくり返してしまっているし。
「よし。まずは派手な炎の魔法!火炎呪符!」
空中の何もない所に炎が出現する。燃やす物がないからすぐに消えてしまうが。
「続いて噴水呪符!と、氷結呪符!」
空中に放った水柱を強烈な冷気で固める。この熱帯雨林のど真ん中で氷柱が立つ。
「う、うわぁ!うっそぉ!!ババァに知らせなきゃ!」
フレリアが走り去ってしまう。ババァ?
「あ。」
長老の家を探して村の中をさまようことになってしまうのであった。
そんな頃、フレリアは。
「ババァ!た、大変!魔法、魔法よ!」
木のドアを勢いよく開けて走り込んできたフレリアにもうよぼよぼのばぁさんが顔をあげる。
「なんじゃ?騒々しい。ババァじゃなくて、長老様と呼びなさい。」
ばぁさんがよぼよぼの声で言う。
「だ、だから魔法なんだってば!何もない所から炎を出したり、氷の柱を出したりしたのよ!!」
もう世界の崩壊よぉ!みたいな慌てようのフレリアだ。
「そんなことより、長老様と呼びなさい。」
よぼよぼのばぁさんがちょっと強い口調で言う。
「ババァ!だから魔法なんだって!」
「ババァじゃなくて、長老様と呼びなさい!」
「ババァってば!私の話を聞いて!魔法なんだってば!」
「わしの話を聞きなさい。ババァ、じゃなくて、長老様、と呼びなさい。」
「魔法だってばぁ!ババァ!」
永遠と終わらないのであった。
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