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2003.12.11


第4話 アルフヘイム(3)



 「ここが長老の家か。やっと着いたな。」
 村の中をさまようこと1時間。やっとたどり着いた。
 「聞けぇ!魔法なんだよ!魔法!」
 「ババァとは何じゃ!この長老様に向って!」
 「だからババァ!魔法だよ!何もない所から炎とか氷の柱とか出したんだよ!」
 「全くこの子は。ババァ、じゃなくて長老様じゃ!」
 何、やってんだ?
 「オイ。」
 とりあえず、気づかれていないのでフレリアの肩を叩いてやる。
 「うきゃああ!」
 そんなに驚かなくても。
 「おぅおぅ。客人か。最近は外からの客人が多いな。ささ、中に入れ。」
 ババァ、じゃなくて長老様が俺たちを中に通す。
 「ああ!魔法使った人!ババァ!この人だよ!この人!空中から炎を出したりしたの!」
 村の入り口ではちゃんと長老様って呼んでいたよな?
 「なんじゃい。この前、ジルキスのじぃさんがコップの底を貫通させてコインを中に落としたり、 何もない水槽の中からコインを出して見せたり、わしの引いたトランプを見ないで当ててみたりしていたじゃろうが。」
 手品か。
 「いや、手品じゃないんだけどな。」
 俺の魔法は手品ではないぞ。
 「ひょっひょっひょ!もう5000年も生きているわし、長老様をからかうんじゃないよ。」
 わし、とか言ってびしぃっと親指で自分を指してしっかりアピールするばぁさん。
 「今、俺の大魔法を見せてやるぜ。驚いてぽっくり逝くなよ!」
 懐からしゅばっと魔法カードを取り出す。
 「おい、マーク!靴擦れしてたな?出せ。今回は特別に治してやる。」
 シャロンとかミーナとかセラとか女の傷はすぐに治してやるが、野郎の傷まで治してやる趣味はない。
 「お、ラッキー!ほれ。」
 マークが靴と靴下を脱いで俺に足を向ける。靴下が血で黒くなっているのがあれだな。
 「くっせぇ〜!何日、洗ってねぇんだよ!」
 「昨日、洗ったわ!」
 昨日って何秒前だよ。この臭いはしゃれにならないな。
 「おお。なかなかの靴擦れじゃな。」
 ばぁさんがマークの靴擦れを指で突付く。
 「いってぇよ!触らないでくださいよ!」
 マークが足を引っ込める。
 「まずはその臭い足を白光呪符で清めてからだな。」
 別の魔法カードを懐から取り出す。
 「待て!白光呪符ってあのあっついやつじゃねぇか!やめろ!」
 攻撃魔法だからな。一瞬、光るだけで何の魔法かと思ったらアンデットとかバンパイアとか不浄なる不死のモンスターを倒すための魔法だったのな。魔法書が読めるようになって初めて知ったし。
 「大丈夫だ!熱消毒でしっかり臭いも消える!やけどしてもどうせ治すんだから一緒だ!」
 やけどします。
 「ジャック!取り押さえろ!」
 「よっしゃ!」
 逃げようとするマークをジャックが取り押さえる。
 「なぁに、痛くないさ。うりゃ!白光呪符!」
 マークの臭い足が強烈な光に包まれる。
 「あっちぃ!!」
 手加減したが、ちょっとやけどしたみたいだな。
 「よし、治療するぞ。」
 熱消毒されて臭いが軽減された。
 「治療護符!」
 マークの足からやけどや靴擦れが綺麗に消える。
 「おお!靴擦れが消えおった!」
 「うぉおお!回復魔法?!炎と氷に続いて回復魔法なの!?」
 ひょええええぇぇーーー!みたいな顔でばぁさんとフレリアが驚いている。うぉおお!ってなんだよ。
 「ほれほれ!トリックであの臭い足の臭いが消えるか?!」
 「そっちかよ!まぁ、確かに臭いも消えてるけど。」
 マークがツッコミを入れてくれる。
 「お前、ちょっと眼を見せてみろ!」
 ばぁさんが俺の頭をがしっとか言って掴んでくる。
 「普通の眼じゃな。」
 ばぁさんの眼はフレリアの眼みたいに白目と黒目の境目のない赤い目だな。
 「ま、まさかクレストの封印が解かれたのか・・・。」
 ばぁさんがよろよろって感じで椅子に座る。
 「ババァ!だからさっきから言っているじゃないか!」
 フレリアがばぁさんに向って言う。
 「だから、長老様と・・、そんなことよりクレストじゃ。」
 クレストってなんだよ。なんかの紋章ってやつ?ドラゴンの紋章とか言って額に何か出るのか?
 「フレリア。頼まれてくれるか?」
 「嫌です。」
 フレリアがばぁさんの問いに即答する。
 「行ってくれたらわしのとっておいたぶどう酒をやろう。」
 「行ってきます!」
 オイ。
 「それから、おぬし・・・。」
 俺か?
 「エル様々だ。」
 胸を反って偉そうにな。
 「エルサマルサ殿か。」
 全く違うって。
 「エル様です。」
 横からセラがフォローを入れる。
 「エルサマ殿?」
 微妙だな。
 「エル。エルだって。俺の名前はエル・ハウンディーアだ。」
 ABCD・・・っと行ってIJKの次のLだ。スペルはEruだけど。
 「エル殿か。始めからそう言えよ。」
 はい。
 「フレリアについてクレストを確かめてきてくれんか?」
 クレスト?
 「ただでとは申さん。お前達がエンシェントウェポンと呼ぶ剣を1つ差し上げよう。」
 何それ?
 「ほ、本当ですか!エル様!引き受けましょう!」
 なんかセラがはしゃいでいる。
 「エンシェントウェポンってなんだよ。」
 直訳すると古代の武器だな。武器か。
 「エル様のブレイズウェポンみたいな魔法文明の時代に作られた武器ですよ! 買うとうん十億ってするんですよ!」
 うん十億?!
 「このエルウィップは?」
 「2桁くらい違いますけど。」
 そんなに高いものだったのかぁ!
 「引き受けましょう。」
 金に目のくらむ俺。
 「フレリア。奥からブルーゲイルを持って来ておくれ。」
 フレリアが青い片刃の剣を持ってくる。金属みたいだけどあの綺麗な青はどうなんだろう?
 「ブルーゲイルじゃ。斬撃がかまいたちを作る。取り扱い注意じゃな。」
 振るたびにかまいたちがその辺を切り裂くってか?危険な。
 鞘付でくれた。


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