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2003.12.13


第4話 アルフヘイム(4)



 「ぬおおおお!!!」
 村の裏手に出るとモンスターの巣であった。見た事もない異形の魔物が襲ってくる。
 シャロンたちはばぁさんの家で待機だ。戦闘訓練を受けた俺とセラ、そしてフレリアの3人で来ている。
 「わぁ!ブレイズウィップですね!珍しい!」
 モンスターたちの猛攻に魔法使う暇がない。まぁ、俺の光の鞭がなぎ払うから大丈夫だが、たまにもつれる。
 「エル様!よく切れますよ!」
 セラが後ろででかいモンスターを青い刃で切り伏せた所だった。すげぇの。
 フレリアもなかりの使い手だ。あの細い腕と剣で巨大なモンスターの攻撃を受け流し、 確実に急所を切り裂いて倒している。
 いやぁ、ヤスニソス遺跡であんなに苦戦していたのが嘘の様だな。 俺様にも戦闘のセンスがあったのなぁ、なんて。
 ああ、そう言えばな、ブレイズウェポンって太陽光を浴びてエネルギーを蓄積するバッテリーで動いていてな、 ヤスニソス遺跡で襲われた時に使えなかったのは4000年も地中深くに埋もれていてエネルギー切れになっていたからなんだ。 そんなわけで地上に出たらみょ〜ん、と光の鞭が出てきたのだ。なかなかクリーンなエネルギーでいいな。
 「アホか!モンスターが出たら逃げるのが鉄則だろうが!」
 まぁ、これだけの数に囲まれて逃げるのは無理か。
 「エル様!この先の洞窟に行きます!ついてきてください!」
 フレリアがモンスターを切り伏せながら先に走っていく。ついてきてくださいってなぁ、おい。待ってくれぃ!


 「ぜぇぜぇぜぇ・・・。お前ら、元気よすぎ!」
 もう息切れ。現在、目的地の洞窟横で休憩中。モンスターに囲まれているが、俺の強化障壁方陣でシェルターみたいなのを作って、その中で休んでいる。
 『強化障壁方陣』はいつも使っているモンスターを弾き返す『障壁方陣』を強化支援魔法で強化したやつだ。 障壁方陣は前方に盾みたいにして障壁を展開するだけだったが、これは上下左右の全方向に障壁を展開してシェルターみたいにできる。
 「くそぉ。野生児は息も乱してねぇし。」
 もう俺は息切れして動けないって言うのにフレリアは平然としている。 セラはちょっと息を切らしている。
 「鍛え方が足りないですよ。そんなんじゃこの辺りで生き残れませんよ。」
 この辺りに住む気ねぇし!俺はもっと安心して過ごせる場所に住む!
 モンスターの襲撃を強化障壁方陣で作り出したシェルターで弾き返しながら、中で俺の息が整うまで休憩する。


 「そろそろ行くか。さすがうん十億の仕事。ハードだぜ。」
 障壁を解除すると同時に回りに群がっていたモンスターをエルウィップの光の鞭でなぎ払う。
 俺の武器はセラとフレリアの剣と違って広域攻撃ができるからいいな。まぁ、それができなきゃすでに死んでいるけど。
 「さ、こっちです!」
 そくささっと洞窟に侵入する。

 「戦い辛いなぁ。狭くて俺のエルウィップが壁を削るじゃん。」
 洞窟の中もモンスターでうじゃうじゃだった。
 「下がってください。ここは私が!」
 セラが俺の前に出て剣を構える。
 「行け!かまいたち!」
 セラの振るう青い剣、ブルーゲイルが空気を切り裂く。間合いのない斬撃のごとく見えない風の刃、かまいたちが敵を切り裂く。
 「任せた。」
 先頭をフレリア、最後尾をセラが守り、俺は後方支援で真ん中にいる。やれやれだ。
 「あの分かれ道を左に行きますよ!」
 こうしてフレリアが分かれ道に来るたびに知らせてくれるのではぐれることはない、と思う。
 フレリアに言われた通りに左へ進む。


 「ぜぇぜぇぜぇ・・・。もう嫌。」
 もう何十体のモンスターを倒したか分からん。ちょっと休憩。
 「おかしいです。もうこの辺になればクレストの影響でモンスターも近寄らないはずなのに。」
 オイ。
 もうモンスターの数は最初から全く減る気配がない。多分増えているんじゃないか?
 「そのクレストって何だ?」
 もうモンスターの猛攻をいなすのに大変で忘れていたが、クレストって何だ?
 「紋章です。」
 そのまんまだな。
 「えっと、詳しい話はクレストの祭壇に着いてからお話いたしますね。」
 さよか。
 「そんなことより、過労で動けん。どうしよう?」
 これぞ足が棒の様だって表現するのにふさわしいくらいだ。
 「靴擦れを治す回復魔法が使えるんですから、使えばいいじゃないですか。」
 フレリアの意見にセラもうなずいている。
 「いや、俺の治療護符はな、傷を治療できても疲労までは取り除いてくれないのだ。 ちなみに、体力を消耗し過ぎて魔法もそろそろ底をつく。」
 この洞窟に入ってからエルウィップじゃ攻撃範囲が広すぎて戦いにくいと言うことで、魔法による戦闘に切り替えた。 しっかり、モンスターにダメージを与えられる威力にしたからな。
 「う〜ん、これ使ってください。疲労を和らげる薬です。」
 と、フレリアが親指くらいの大きさの黒い球を差し出す。
 「お、遠慮なくいただく。」
 フレリアから薬を受け取って口の中へ。
 「んぐぅ!しぶ!にが!」
 思わず手の中に吐き出してしまう。
 「良薬、口に苦し、ですよ。お水と一緒にぐっと飲み込んでください。」
 といってフレリアが水筒を差し出す。
 「うりゃ!」
 パクっと口に薬を放り、水をぐいっと飲んで胃袋へ押し込む。
 「ぐ、ありがとう・・・。」
 水筒の蓋を閉じてフレリアに返す。うわぁ、口の中が苦いよぉ。

 しばらくすると動けるレベルに疲労が回復する。
 「お、動けるな。よっしゃ!行くぜ!」
 エルウィップを起動。光の鞭が出現する。
 「あっちですよ。」
 フレリアが進む方向を指差す。
 「はい。んじゃ、2人とも、伏せて。」
 強力障壁方陣の結界を開くと同時にエルウィップで回りにたかっていたモンスターをなぎ払う。 さすがは取引価格うん千億の武器だな。一瞬にして何体ものモンスターが動けなくなる。
 フレリアの後に続き、洞窟の奥へと進んでいく。


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