「仕事の成功条件はここの管理責任者をしているモロノっていうやつを捕まえるかぶっ殺すかして遺跡を制圧することね。」
オイ。
「俺はここに遺跡発掘に来たんだよな?」
俺は魔法研究家であって戦闘員ではないぞ。
「そうだよ。雷鷲の連中を追っ払ってから発掘調査した方が楽しいでしょ?」
別に一緒にやってもいいんだけど。
「あ、作戦開始の合図だよ。行くよ!」
向こうでなんか爆発した。それに見張りの連中が混乱する。
「がんばってくれぃ。」
さっさと行ってしまったルーファの背中を見送る。
「エル様! 私達も行きますよ!」
ルーファに続いてセラとマルコスのおっさんも行ってしまった。
「ああ。皆、行ってしまった。」
ルーファとマルコスに見張りの兵士がばったばったと倒されていくのが見える。別に俺が行かなくてもいいじゃん。
「そこに誰か隠れているぞ! 撃て撃て!!」
ガボーン!
隠れている所を見つかってしまった。俺に向かって機関銃を乱射してくる。
「ああ。」
障壁方陣で銃弾を全て弾き返し、エルウィップでやつらの足元を抉って埋めてやる。
このエルウィップで人間を直接打ってしまったらスプラッタなことになってしまうからな。間接的に攻撃せねば。
「しょうがない。行くか。」
さっさとモロノってやつを捕まえて帰ろう。
「なかなかしっかり残っている遺跡じゃねぇか。」
見張りの兵士を魔法で蹴散らし、遺跡内部へ侵入した。
「2週間前に発見されたばかりの遺跡です。この一番奥にクレストを祭った祭壇が発見されたんですよ。」
セラが横で説明をしてくれる。
現在、敵の銃撃から隠れて壁に背中をついて隙をうかがっている。
「エル。あれってどうにかならないの?」
さすがのルーファとマルコスもこれだけ乱射されていたら出て行くことができないらしい。
「しょうがないな。喰らえ! 妖術呪符!」
敵に幻を見せて混乱させる魔法だ。何が見えるのか知らないけど、突然の幻に敵の銃撃が止まる。
「エル、ナイス!」
銃撃が止まったと同時にマルコスとルーファが通路に踊り出る。それに続いて俺とセラも行くと、すでに敵は全て倒されていた。
「この調子で行くよ! にゃはははは!!」
ルーファがご機嫌だな。
「あ、メズキちゃんだ。」
だいぶ奥に進んできたら戦闘部隊隊長のメズキ率いる本隊に遭遇した。
「もう追いついてきたのか。さすがにお前達の隊は移動が早いな。と言うか、ちゃん付けにするのはやめろ。」
通路の真ん中にキャンプを組んで中継地点を作ってた様子。俺たちはそんなことをしないで突き進んできたから早いのだ。
「別にいいじゃねぇか。メズキちゃんってなかなかかわいいじゃないか。」
黒馬戦闘部隊のトップとして冷酷非道な女だが、女としてかわいい一面があるのを俺は知っている。
「メズキちゃん。あのセーター、誰にあげるの?」
こそっとメズキちゃんに耳打ちしてやる。それにメズキちゃんが赤面する。
「な、なぜそのことを!」
顔を真っ赤にして慌てるメズキちゃんってかわいい♪
「秘密だ。」
実の所、意識転送陣でメズキちゃんの行動をトレースしたら作ってた。編み棒で器用に赤い毛糸でセーターを編んでいたんだよ! 見た時はマジでびっくりした。初対面でいきなり剣で切りかかってきたり、サバ折で俺を気絶させたり、戦闘部隊の隊長で冷酷非道な女として恐れられていたあの女が編物してたんだぜ? しかも慣れているらしく、手つきが様になっていたし! さらにな、部屋にいっぱいかわいいのが置いてあるのよ!
それを見てしまってから、メズキのことをちゃん付けで呼んでいるのだ。
「とっとと失せろ。」
ちょっと怒っちゃった?
「それじゃ、メズキちゃん! 俺らは向こうに行ってみるから。」
メズキちゃんの背中に手を振ってその場を離れる。
「メズキ隊長をちゃん付けで呼ぶのってエルだけだよ。」
メズキちゃんからだいぶ離れた所でルーファが口を開く。
「あれはあれでなかなかかわいい所があるんだぞ。メズキちゃんの趣味を知ったらちゃん付けをせずにはいられなくなるからよ。」
あの趣味はメズキちゃんが戦闘部隊隊長としてやっていくために言ってはならないと思うのだが、ばらしてしまった方が女として幸せになれるのではないかと思うのだが、どうよ?
「メズキ隊長の趣味って何? 何でエルがしってんの?」
ルーファが不思議そうに聞いてくる。まぁ、気になるよな。
「本人に直接聞けばいい。ほとんど毎日顔をあわせているんだろ?」
ルーファはメズキちゃんの部下だからな。仕事に出るとほとんど毎日顔をあわせるはず。
「気になるよぉ!」
ルーファになら言っても大丈夫か?
「帰ったらこっそり教えてやるよ。」
人の秘密をばらして回るような子ではないと思うが。
「んじゃ、帰ったらエルんち行くからね!」
毎度のことながら泊まっていくのな。
「夕飯は出さんぞ。」
こいつって俺とセラの食べる量を合わせたのより食うからな。
「えー、ちょっとくらいいいじゃないの! ねぇ、セラちゃん!」
ルーファがセラに話をふる。
「たくさん用意しておきますね。」
お前は子どもに甘い母かよ! まだ20歳で俺とルーファより3つも下だろうが。
マルコスが話に入る余地は全くないのであった。
BACK
/
TOP
/
NEXT
|