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2004.2.2


第5話 活動(4)



 「がはははは! 逃げろ逃げろ! 弱者は俺様の前にひれ伏し、命乞いをするがよい!」
 大雷神呪符!
 こんな地中の遺跡内で雷鳴が轟く。
 俺がかつて使っていた雷神呪符は敵を感電させてちょっと痺れさせるくらいの威力しかなかったが、強力になった大雷神呪符はモンスターも一撃で倒すことができる。俺の放った雷撃が遺跡の奥に作られていたバリケードを粉砕する。
 「行くぜ。魔王エル様の怒りのいかずちを受けてみよ!」
 大雷神呪符!
 強烈な電撃に敵の電気系統は全て破壊されてしまう。
 「この俺を敵に回したことを後悔するがよい!」
 俺の魔法に敵の陣がいとも簡単に粉砕されてしまった。
 「進むぞ。」
 こんな感じで敵の要所をぶち壊しつつ、奥へ進んでいく。



 「そこまでだ。悪の使者よ。」
 なんか剣を持って背筋の伸びた偉そうなやつが出てきた。
 「悪の使者ではない。悪の大魔王様々だ。」
 剣を持った偉そうなやつがちょっとあきれた顔をする。
 「我が正義の前に滅びよ。」
 偉そうなやつがシャキンっと剣を抜く。その後ろの部下らしき同じ格好をした連中も剣を抜く。その後ろに銃を持ったやつが数人。
 「最後に愛が勝つのだ!」
 意味不明だし。
 「エル様! ここの最高責任者モロノです。雷鷲屈指の剣の使い手として有名です。気をつけてください!」
 セラが青い刃を持つ魔法の剣を構えて俺の前に出る。この魔法の剣はブルーゲイルという名を持つ魔法文明時代の遺物で振るうたびに真空の刃が飛ぶのだ。
 「こいつを捕獲かボコれば任務完了か! さっさと片付けるぞ。」
 4対9なんだけど、問題ないでしょう。
 「後列、一斉射撃用意!」
 モロノの声に後ろの銃を持ったやつらがこっちに銃口を向ける。
 「撃て!」
 俺に銃撃が届くものか。
 「障壁方陣。」
 全ての銃弾を跳ね返してやる。
 「そう何度も同じ手が通じるか!」
 モロノと剣を持った連中が障壁方陣の盾を避けて両脇から走り込んできた。
 「当たると痛いなんてものじゃないぞ。」
 エルウィップ起動。光の帯が走り込んできたやつらを襲う。
 「何の!」
 モロノが体をひねらせて俺のエルウィップを交わす。他の連中は剣で防いで弾き飛ばされたが、モロノが一気に突っ込んできた。
 「エル様!」
 俺とモロノの間にセラが割って入る。
 「敵に容赦はすまい。沈め。剣雨(けんう)!」
 モロノの剣先が無数に分裂し、セラを襲う。
 「強化障壁方陣。」
 俺の魔法がモロノの剣を弾き返す。休憩用のシェルターに使うものだけど、普通に防御にも使える。
 「おのれ!」
 ミサイルも効かんぞ。
 剣を弾かれたモロノが後ろに下がる。
 「喰らえ! ルーファちゃん我流槍術奥義! 光雨(こうう)!」
 ルーファが槍を投げると上空で分裂し、光の槍が雨のごとく敵の頭上に降り注ぐ。その攻撃にモロノがさらに後退する。 それを追撃して俺のエルウィップがうなる。
 ルーファの光雨って始めはゲームとかに出てくるなんか超常現象かと思ったんだが、拡散ミサイルを手で投げているだけだったのな。この前、ルーファから聞いてなるほどと思ってしまったぜ。奥義って何って聞いたら「かっこいいから」だそうだ。
 「人間が。この大魔王様々にたてつけると思うな。」
 大風塵呪符!
 突然の強烈な突風にモロノたちが全員壁に叩きつけられる。
 「呪縛呪符。」
 壁に叩きつけられて動きの鈍った所を魔法で体の自由を奪う。
 「捕獲完了だ。」


 「あ。」
 「あうぅ〜。エル様、酷いぃ〜。」
 捕獲した中にリリスがいた。
 「リリス。こんな所で何してんだ?」
 全員武器を取り上げて拘束後、マスクをはいだら発見した。
 「仕事で周辺警備を・・・。」
 相変わらずウルウルした顔を見るとあめをあげたくなっちゃうな。
 「そんなことより、あたし、どうなっちゃうの? 悪の組織の捕虜になってぼろぼろに拷問されて殺されちゃうの?」
 ああ、そう言えばどうなるんだ? 捕虜にした後ってどうなるのかって俺は全く関わったことがないからな。
 「大抵はそうですね。あなたみたいな子になると散々慰み者にされたあげく殺されるのがオチね。」
 セラがなんか言っている。
 「ご愁傷様。知り合いのよしみで最初に抱いてやるからな。」
 それにリリスがわんわん泣き出してしまった。
 「エル様。かわいそうですよ。」
 セラがなんか言っている。
 「お前が先に恐がらせたんだろうが。」
 セラがリリスの涙をハンカチでふいてやっている。
 「捕虜の処分はまず、捕獲した人に権利があるんです。エル様の魔法の実験体に研究室へ連れて行きます?」
 それにリリスがさらに泣く。
 「実験体が嫌なら奴隷だな。それがダメなら慰み者か。敗者の運命は悲惨だなぁ。」
 そこへルーファがやってくる。
 「エル。だれだれ? 元カノ?」
 俺、彼女いない暦23年だし。セラが俺の彼女になってくれたって確認できていないし。
 「いや、セラと一緒に俺をスカウトしに来た女。」
 その後、接点は無いが、時々『意識転送陣』で観察させてもらった。ころころ表情の変わるかわいい女で。
 「モロノの部下なら拷問して色々と情報を聞き出さなきゃならないんだけど。」
 まぁ、確かにな。
 「月給14万2千Cのやつがそんな重要な情報を持っているとは思えないぞ。」
 3日前、給料日だったんだよな。
 「うぇ? 何であたしのお給料、知ってるの?」
 セラとルーファも首をかしげる。
 「3日前、意識転送陣を使ったときにな。」
 こんな危険な任務なのにあの給料はなぁ。
 「ふぇ〜ん! お給料もらってすぐにこの仕事が入って1Cも使ってないのにぃ〜!」
 ご愁傷様だな。
 「ま。こいつの処分は俺がするからよろしく。」
 「エル様に任せると危ないですから、私が管理します。さ、行きましょ。」
 リリスを抱き寄せようとした手をセラに払われてしまった。セラのやつ。全く俺を信用してねぇな。


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