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2004.2.10


第6話 白熊(2)



 「エル様からこういう仕事をなさるのって初めてですよね。」
 あれから3日が過ぎて、作戦決行直前である。
 「色々あったんだよ。てか、今日は珍しいメンバーだよな。」
 今日はルーファとマルコスがいないんだよな。今日は別行動だ。
 「今日は私も用事があったものですから。」
 まずはフレリアだな。普段はクレストを探して色んな所に行っていて、たまに帰ってくるだけなのに。
 「白熊って雷鷲にとっても厄介なとこなんだよ。それに、エル様にお世話になるだけで、何もしないのも悪いかなって。」
 続いてリリスだな。ソレリア遺跡で捕まえてから家で飼って夜な夜なあんなことやこんなことを・・・させたいと思ったんだがなぁ。まぁ、セラの代わりに家事全般をやってくれているのよ。リリスの料理もなかなか美味で。
 「フレリアの実力は見たことあるけど、リリスはどんなだよ。足ひっぱんなよ。」
 アルフヘイムでクレストの確認をしに行った時な。あのモンスターの猛攻の中をすいすいと進んでいく戦闘能力は物凄いぞ。
 「今日はいっぱい武装してきたから大丈夫だよ。」
 なんか物凄いたくさんの重火器を背負っているのだが。
 「エル様。そろそろ作戦開始の時間です。」
 今日はいきなり白熊のアジトに攻め込むのよね。正面からメズキちゃんとゴズキのおっさんが率いる部隊が攻め込み、裏口からルーファとマルコスの率いる精鋭部隊と俺様チームがかき回すって言う作戦だ。
 「それじゃ、行くぞぃ。」
 腰のエルウィップを確かめ、裏口へ向う。


 「見張りが2人だな。ここは俺の妖術呪符で混乱させてさくっとやっちまうか。」
 物陰に隠れて入り口を確認した。
 「喰らえ! 妖術呪符!」
 魔法が発動し、辺りが少し霧に包まれる。それに見張りの2人が幻を見て錯乱するはずなんだが。
 「・・・効いてる?」
 反応がない。
 「失敗ですか? 珍しいですね。」
 珍しいな。
 「おかしいな。幻を見ても錯乱しない強い精神力でも持っているっぽいな。」
 面倒臭いな。
 「魔法がダメでしたら、私がやりましょう。」
 フレリアが何かするみたいだ。物陰に隠れたまま風上に移動する。

 「これをちょっと風に乗せて飛ばします。」
 フレリアが腰に持っていた袋から何か白い粉を出して、風に飛ばす。それが風下にいる見張りにかかる感じ。
 「お。何、やったんだ?」
 なんか突然、見張りの2人がぶっ倒れた。
 「眠り粉です。今の内に入りましょう。」
 なかなかいい物を持っているじゃねぇか。よし、行くぜ。
 見張りの2人の横を通り過ぎると、2人はいびきをかいてぐっすり寝ていた。


 「さて、見張りを寝かしてこっそり入ったんだけど、すぐに見つかってしまったな。」
 いきなり見つかって銃撃戦になってしまった。
 「ここは俺の魔法で蹴散らしてやるか。」
 向こうは本気で俺たちを殺そうとしているからな。容赦するまい。
 「喰らえ! 大火炎呪符!」
 強烈な火炎が狭い廊下を走る。遺跡内のモンスターも1発でしとめる火力がある。こんな狭い通路では隠れる所もなく真っ黒になってしまうはずだ。
 「うひょ?」
 火炎の向こうから銃撃で反撃してきやがった。常時、俺を守っている護衛鎧方陣ごえいがいほうじんで銃弾を弾き返したが、これがなかったら危なかった。
 「効いてねぇのか? うらぁ! 大雷神呪符!!」
 さっきの火炎で全員真っ黒焦げになっているはずだが、無傷なのが大半だ。そいつらに向って強烈な電撃を見舞ってやる。それに残りの連中も倒れる。
 「何だ? 俺の魔法に耐性でもあるのか?」
 ゲームとかによくある得意属性があって、その得意属性の攻撃はダメージにならないとかか?
 「エル様! これを見てください!」
 セラがなんか呼んでる。
 「何事だ?」
 俺の電撃に倒された戦闘員をセラが調べていた。
 「これを見てください。エル様の魔法カードに描かれている模様に似ていませんか?」
 電撃で煙をあげる防弾チョッキをはがしたその下に奇妙な模様の描かれたシャツを着込んでいた。
 「ん? 似てるな。火炎呪符にそっくりだ。」
 おう?
 「エル様。それってファイアクレストですよ。」
 後ろから覗き込んできたフレリアが言う。フレリアってクレスト関係に詳しいのよな。
 「あれか? ゲームとかによくある防御属性とか言って火が効かないとかか?」
 ゲームの世界じゃないんだぞ? まぁ、魔法を使っている俺が言ったらダメなんだが。
 「エル様! 次が来たよ!」
 リリスが警告してくる。面倒だな。
 「先に進むぞ。こいつらが武力だけで成り上がってきたって言う秘密がこれかもしれない。詳しい資料とか探すぞ。」
 俺の他にクレストを使っているやつがいるなんて嫌だな。
 後続の敵をエルウィップでなぎ倒し、先に進む。


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