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2004.2.10


第6話 白熊(4)



 「そろそろ行くか。」
 なんか入り口で敵の戦闘員ががんばっているけど、俺の強化障壁方陣は破れないぞ。
 「どちらに向います?」
 どこに行こうか? てか、ルーファやメズキちゃんたちは大丈夫だろうな?
 「どこ行きたい?」
 内部構造は現地で把握することになっているからどこに何があるのかわからんし。事前に調べようとしたけど、無理だったみたいで、こんなことになっている。
 「ねぇ。あそこに電話があるけど、ハッキングとかしようか?」
 リリスがなんか言っている。リリスの指差す先に公衆電話ってやつが置いてある。
 「ハッキングなぁ。よし、がんばれ!」
 リリスが背中のリュックからノートパソコンを出して公衆電話に繋いでいる。かちゃかちゃっとキーボードの上をリリスの指が走る。
 「うわ。セキュリティよわ〜い。簡単に入れちゃった。まずはここの見取り図だよね。」
 はや。リリスが繋げてから5分と経ってないし。
 「罠と言う可能性はないの?」
 セラがリリスのパソコンを覗き込みながら言う。
 「ふにゅ? 大丈夫みたいだよ。あ、見取り図だね。」
 なんか見つかったみたいだな。
 「あ、プリンター。」
 リリスがリュックからプリンターを取り出してパソコンに繋げる。しばらくして見取り図が出てくる。
 「出てきたな。ここはどこだ?」
 全然分からん。
 「ここですよ。ここから入ってこのルートでここまで来たんです。」
 フレリアがここまできたルートを指でなぞって見せる。
 「ほほう。よく覚えているな。」
 俺ってこういう道順を覚えるのって苦手だし。
 「入ってからエル様の後ろをついていくだけでしたし。」
 そう言えばな。こいつって銃の扱いが全くできないとか言って俺の後ろで剣を構えていたんだったな。
 「んで、どこに行くよ。」
 ふと気付いたら見取り図が何枚かプリントアウトされていた。
 「ここに研究室って言うのがありますよ。」
 セラが俺の持っている見取り図とは別の見取り図を持ってくる。なんか小さく“LAB”って書いてある。研究室なのか?
 「エレベータが使えれば早いんですけど、止められていますよね。こっちの階段から行きましょう。」
 エレベータはこの部屋を出てすぐの場所にあるのだが、まぁ、この非常事態だし、止められているだろう。それに中で襲われると大変だしな。
 階段はちょっと離れているけどまぁ、そんなに遠くないな。見取り図を並べると地下5階から屋上まで続いている様子。屋上までって言ってもこの建物は2階しかないし。研究所は地下4階にある。
 「あ。食堂があるな。ここの連中ってどんなのを食べているんだ?」
 研究所より近いし、同じ階だし。
 「ルーファさんがいるかもしれませんね。」
 セラがふふって笑う。
 「ありえるな。冷蔵庫を見つけたら勝手に開けるやつだからな。」
 ルーファが初めての家に泊まった時、勝手にアイスクリームをラーメンどんぶりで食べていたからな。
 「よし、最初は食堂でルーファと再会だな。見取り図とか渡して情報を交換しよう。」
 すでにルーファが食堂にいるのは決定事項だし。
 「次はどうする? 研究室は地下4階だから途中に何かあれば寄って行った方が早いぞ。」
 リリスのプリントアウトした見取り図を見ながら行き先を考える。
 「地下1階に資材倉庫なんてありますよ。」
 資材倉庫?
 「使えるものがあったら奪っていくか。」
 セラが見取り図に移動ルートを赤サインペンで書き加えていく。ここから廊下を通って食堂へ行き、そこから階段に向かい、地下1階の資材倉庫へ行く。
 「ここに資料室なんてありますよ。」
 資料室か。地下2階だな。こんな所に重要機密とか置いていないと思うが、行ってみたいな。
 「資材倉庫の次は資料室だな。」
 まぁ、とりあえず怪しい所は一通りまわってみるか。

 きゅっきゅっと移動ルートを示す赤いラインが地下5階まで繋がる。さて、そろそろ出発しようかな。
 「よし、このルートで行くか。フレリア、道案内よろしく。」
 移動手段はさっきと同じ。俺がエルウィップで道を切り開き、その後ろにフレリアが続く。後ろはセラとリリスが銃で守ると。
 「はい。この見取り図は私が持ちますね。」
 赤いラインの入った見取り図をフレリアがまとめて懐に入れる。
 「エル様。その前にこの部屋からどうやって出ましょう?」
 ・・・。
 まず、入ってきた入り口は敵戦闘員がぶち破ろうとがんばっているな。外に出る窓の外も同じく。天井裏にも潜んでいるらしく、強化障壁方陣で作り出した障壁を叩く音が聞こえる。
 「結界を解除すると同時にエルウィップで壁をぶち破って出よう。この結界を解除する瞬間って微妙にテクニックがいるよな。」
 周りに敵が集まってしまっているからな。
 「よし、321で結界を解除するから、解除した瞬間に銃撃に会わないようにその辺にいて。」
 このまま結界を解除して壁をぶち破ろうと思ったんだけど、敵の侵入を遅らせるために入り口と窓を自動販売機とマッサージ器で塞ぐ。
 「よし、3、2、1、Go!」
 結界が切れると同時に入り口と窓を塞いでいたマッサージ器と自動販売機が蜂の巣になり、天井から何人か突入してきた。天上から突入してきたやつらと出口の壁を同時にエルウィップでなぎ払い、部屋から脱出する。


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