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2004.2.11


第6話 白熊(8)



 地下5階。
 「エル様! ミュータント・タイプHです!」
 でか! それにモンスターのくせに服を着てロケットランチャーで武装してんじゃねぇよ!
 「ブルーゲイル!」
 セラが青い刃の魔法剣で空を切り裂く。青い魔法の刃が空気を切り裂き、見えない風の刃を作り出す。見えない刃に敵は避けることもできずに切り裂かれる。
 「効いてない。」
 着ていた服が切れただけで、その下の皮膚に傷はない。
 「エルウィップじゃねぇと傷つけられねぇか!」
 光の鞭が敵を襲う。身長4mの巨体はその光の帯を素早い動きで交わしてみせる。さらに天井へ張り付くと同時に腕に持つロケットランチャーの引き金を引く。
 「アホか!」
 敵が撃って来たロケットを俺のエルウィップで空中破壊してやる。爆発すると同時に煙が立ち込める。
 「エル様! 煙幕です!」
 煙で敵の姿を見失った! 気付いた瞬間にはわき腹へ鋭い爪が襲い掛かってきていた。
 「にゃろ!」
 俺の体を守る護衛鎧方陣ごえいがいほうじんで敵の爪を弾くと同時にエルウィップを叩き込んでやる。
 「ぬお!」
 もろに敵の爪が入って吹き飛ばされる。しかし、俺に爪を向けた敵も俺のエルウィップを胴に喰らい、腹を弾けさせる。
 「まだ倒れない!」
 そのまま倒れるかと思った敵が踏みとどまる。しかし、そこをフレリアが首を跳ねてとどめを刺す。
 「敵は1匹じゃないわ! 気をつけて!」
 フレリアが隙を見せずに剣を構えなおす。
 「エルウィップ一撃で倒れないなんてタフだなぁ。」
 煙が晴れると向こうに2匹のミュータント・タイプHが待ち構えていた。
 「うわ。」
 セラとリリスじゃ役不足だな。
 「セラとリリス。強力障壁方陣で結界を張るからここで待っていろ。」
 標的にされた瞬間にぐちゃぐちゃになっちゃうぞ。
 「エル様!」
 強力障壁方陣!
 セラとリリスを光の球に閉じ込める。この中にいれば大丈夫だ。ミサイルの直撃にもびくともしない防御シールドだ。
 「フレリア。お前にも護衛鎧方陣をつけておくぜ。」
 フレリアの胸元にぺたっと魔法カードを貼り付ける。
 「護衛鎧方陣!」
 魔法カードが燃え尽きると同時にフレリアの体がシールドに包まれる。
 「ありがとうございます。」
 さて、行くぞ。
 準備を終えて敵に向うと2匹同時にロケットを放ってきた。
 「同じ手に乗るかよ! 大氷結方陣!」
 強烈な冷気の風がこっちに向ってくるロケットと敵を襲う。ロケットは空中で凍りつき、不発のまま床に転がる。敵も強烈な冷気で凍りつく。
 「死にな!」
 凍りついた敵へとどめにエルウィップを振るう。
 「エル様! 気をつけて!」
 突然のフレリアの警告。2匹とも凍り付いて動けないと思ったが無理やりと言った感じで片方が前に出る。
 「クソ!」
 俺のエルウィップをロケットランチャーを盾に防がれてしまった。その瞬間、もう一方の青い目が光ったのを見た。
 次の瞬間。強烈な光とともに足に激痛が走る。
 「イテェ!」
 イテェじゃねぇよ! 血。俺の足から真っ赤な血が噴き出していた。
 「ぬお! 護衛鎧方陣が効かねぇ!」
 シールドが破壊された感じはなかった。素通りした感じだ。
 「エル様!」
 フレリアがこちらを振り返る。その向こうに再び敵の青い目が光るのが見えた。
 「畜生が!」
 噴水呪符と氷結呪符の同時撃ち。フレリアの後ろに氷の壁が出現する。敵の放った光は氷の壁の中で屈折し、方向が変わる。
 「治療護符!」
 穴の開いた足へ魔法カードを叩きつける。魔法カードが燃え尽きると同時に足の穴がふさがる。う〜ん、さすが俺の魔法だな。
 「物理攻撃は全部弾くけど、光や熱は素通りするんだったわ。油断した。」
 今のが『ブラストビーム』だな。セラが強烈なレーザー光線って言っていたからな。
 「エル様。足は・・・。」
 フレリアが心配そうにしている。
 「大丈夫だ。」
 フレリアに立ち上がってみせる。足に痛みもない。
 「やべぇ。障壁方陣もレーザーは通すじゃん。セラ、無事か?」
 後ろのセラたちを確認する。泣きそうな顔をしているが、大丈夫そうだな。
 「これも安全じゃねぇな。」
 セラとリリスが入っている結界を解除する。それと同時にセラのビンタが炸裂する。
 「ぬお?」
 「バカ。」
 戻れ、と言おうと思ったんだが。
 「エル様! 来ますよ!」
 なんかセラがブルーゲイルを鞘に収めて別の剣を構えている。あれは予備の剣で普通に支給される鉄の剣だよな?
 「私も戦います!」
 セラが叫ぶと同時に氷の壁が砕け散る。敵の凍り付いていた体が回復してしまったようだ。
 「よくもエル様に!!」
 次の瞬間、敵の胸にでかい風穴が開いた。


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