身長4mの巨人が2人、セラの前に倒れ伏す。
「・・・。」
なにごと?
「エル様。先に行きますよ。」
セラとフレリアが先に行ってしまう。
「おう。何が起こったのかよくわからなかった。」
後ろでリリスも何が起こったのかわからずにぽかん、と口を半開きのまま固まっていた。
「リリス。んな所でボーっとしていないで行くぞ。」
ドサクサにまぎれてリリスの胸を鷲掴みにしてみたり。
「きゃああ! な、何するのよ!」
正気に戻ったな。
「行くぞ。」
リリスに背を向け、セラとフレリアを追う。
「あ! 待ってよぉ!」
「おい。さっき、何をしたんだ?」
セラの隣を歩きながら聞いてみた。
「何ですか?」
セラは何事もなかったかのように澄ました顔で聞き返してくる。
「あのモンスターを倒した時に何をしたんだって話。」
綺麗に穴が開いていましたな。
「あれはガレオサス流剣技の奥義、シャイニングソードです。早い話が強烈な突き技ですね。」
シャイニングソード?
「この剣で突いただけ?」
本当に綺麗に穴が開いていましたな。
「はい。でも、一応、ガレオサス流剣技の奥義ですから皆が皆、できることではありませんよね。」
突いただけか。
「ガレオサス流剣技と言うのは今、世界で一番普及している剣流派の1つです。技は1対多を想定して考えられています。私みたいに敵地へ単身で潜入して情報を収集するなんて仕事をしていると結構便利なんですよ。」
剣術なんて全く無縁だったから知らなかったわ。
俺が大氷結呪符で敵の動きを封じ、セラがシャイニングソードって言う技で穴を開けたり、フレリアが首を跳ねたりしてとどめを刺し、さくさくと進んでいくのであった。
「この部屋だな。」
見取り図によるとこの扉を開けた先の部屋が最奥の部屋だな。
「開けた瞬間に襲われるかもしれないから注意しろよ。」
ドアにぴたっと張り付き、ドアノブをゆっくり回す。
「ん?」
中からなんか変な音がするな。何かほえているような。
「ドアから離れろ!」
俺の声にフレリアがドアの前から飛び退き、ボケっとしていたリリスを俺が蹴飛ばし、後ろにいたセラを床に押し倒す。
ゴォ!
一瞬、辺りが真っ白になった。それと同時に背中に激痛が走る。
「エル様!」
いってぇ! なんか背中が。
ふと後ろを向くとドアのあった壁に丸く穴が開いていた。
そこへフレリアが駆け寄ってくる。
「エル様、背中が。」
なんか背中がひりひりしてスースーするんだけど。
「やけど?」
フレリアに聞いてみる。
「すぐに手当てをしないと。」
ぐお。
「治療護符。」
自分に魔法カードを貼り付け、念を込めると魔法カードが燃え尽きて背中の痛みが引く。なんかスースーするのは変わらんな。
「背中、どうなってる?」
首を回して見えないし。
「綺麗な背中ですね。」
フレリアが回復した俺の背中を撫でてくる。フレリアの指の感触が直に肌で感じられる。
「うわ。最悪。」
俺の下敷きになっているセラは無事のようだな。
「リリス、生きてるか?」
フレリアの後ろに無傷のリリスを確認。
「エル様! また来るよ!」
リリスが叫ぶと同時に4人でその場から離れる。その次の瞬間、もといた場所が強烈な光に包まれる。
「がぼーん! 何事だよ!」
壁が蒸発したぞ!
「エル様。あんなのを食らったら骨も残りませんよ。」
綺麗に壁がなぁ。
「俺が警告しなけりゃ、最初の1発でドアと一緒に蒸発していたな。」
こうしていてもしょうがないな。
「あれは俺の障壁方陣は無意味だな。見た感じ、強烈な光だ。素通りしてしまうわ。」
ミサイルとか物理攻撃は完璧に跳ね返せるんだけどな。
「エル様。どうしましょう?」
とりあえず、恐る恐る光の元を見てみよう。
「・・・何あれ? 猫?」
でかいぞ。地面から頭まで軽く3mはあるか。なんか猫の様なでかい怪物がいた。
「エル様。上の研究室で見たレポートにはあんなモンスターはありませんでしたよ。」
トップシークレットなんだろ?
「よし。今まで通り、俺が大氷結呪符で動きを封じて総攻撃な。」
そう言いながら敵の様子をうかがっているとやつの口の中から強烈な光が漏れるのが見えた。
「また来る! 逃げろ!」
ばたばたとその場から離れるとでかい猫が口から強烈な光を吐き出した。強烈な光は今まで俺たちが隠れていた壁を蒸発させてしまう。
「行くぜ!」
あれは連発できるものじゃないはず! 連発されたら困るけど。
俺を先頭にでかい猫に向って突進。大氷結呪符で強烈な冷気を敵めがけて発射する。
「何?!」
避けやがった! でかい猫が跳んだ。ちょっと高めに作られた天井に着地するように貼り付く。天井を数歩走ってこっちに飛び込んでくる。
「ふざけんな!」
突っ込んできた所をエルウィップで迎撃する。しかし、俺のエルウィップを体をひねらせて交わしやがる。
「これならどうだ!」
大風塵呪符! 強烈な突風が空中のでかい猫へ襲い掛かる。さすがの猫もそれにバランスを崩す。大抵のやつなら天井に叩きつけられて動けなくなるような物だが、さすが猫だな。天井にすとっと着地しやがる。
「畜生! 何だあれ!」
天井のでかい猫の口が光る。さっきのあれがまた来る!
うっひょう! 床が蒸発してでかい穴が開く。
あんな猫、相手にしてらんねぇよ!
BACK
/
TOP
/
NEXT
|