さて、どうするか。
総帥が死んでいるのを発見したから、もうこのアジトは制圧したも同然だ。しかし、あの凶暴な猫をどうにかしないと。この部屋の中だけで暴れているから、大して被害はないのだが、外に出る様な事があれば凄いことに・・・。
俺様の支配する予定の世界に傷をつけられたら堪ったものじゃないぞ!
「う〜む。」
やつはクレストに憑依されて巨大化しただけで所詮、飼い猫だ。
「キャットフードとか落ちてねぇかな?」
餌で釣るのだ。
「キャットフードですか? ああ、元はここの総帥の飼い猫ですものね。その餌が残っているかもしれませんね。」
数秒後、すぐに見つかった。
「俺の座っていた箱にキャットフードが入っているじゃん。」
生肉タイプか。マグロとか入ってんじゃん。意外と豪華なもん食べてんなぁ。
「よし、この餌でやつの気を引いて、その隙にぶちのめす!」
作戦がせこいな。しかも餌に飛びつかなければ全く意味ないし。
「毒とか仕込んだ方がよくないですか?」
フレリアの意見。
「クレストで肉体を強化されたスーパー猫だから、匂いで分かってしまうかもしれない。やめておこう。」
猫を超えた猫だからスーパー猫。ネーミングが安易な。
「あの大きさですし、この全部、開けますか。」
体長10mだからな。普通の猫の体長を40pとすると体長は25倍にもなる猫だ。体長にあわせて餌の量をふやすと25食分でよいのか? いや、体積にすると25の3乗で・・・。
「全部、開けるか。ちょうどよくでかい皿みたいなのがあるじゃねぇか。こいつに盛り付けよう。」
皿って言うか、でかいトレイ。缶詰を開けてスーパー猫をおびき寄せる餌を用意する。
「んじゃ、俺とフレリアで運ぶから、セラは後方支援だ。猫が跳んできたらシャイニングソードで機動力を殺ぐこと。エルウィップが当たればあんな猫、恐れるに足りんからな。」
と、言うことで猫の餌が大量に乗ったトレイをフレリアと一緒に運ぶ。
「あ?」
あの凶暴なスーパー猫がリリスの足元で丸くなっていた。
「なに?! 倒してしまったのか? 俺の出番なし?!」
リリスがスーパー猫のあごをくすぐるとごろごろ言って寝返りを打つスーパー猫。生きてるし、元気そうだな。
そんなスーパー猫が突然、立ち上がって俺たちに向かって来る!
「この猫が! 返り討ちじゃ!」
エルウィップ起動!!
しかし、俺の横を通り過ぎて行ってしまった。
「・・・。」
今回、俺っていい所がねぇ〜。
「エル様。おなかがすいていただけみたいだよ。」
リリスがこっちにやってくる。
「おやつに持ってきたサラミソーセージをあげたらおとなしくなっちゃって。」
何でおやつにサラミソーセージなんだ?
振り返ると俺とフレリアで運んできた餌をがつがつ食べていた。
「・・・。」
ああああああ。
なんだかんだ言って手懐けた。所詮、飼い猫だな。
おなかいっぱいならご機嫌な様子。
「エル様ぁ〜。ふわふわのもこもこでかわいいよぉ〜。飼っていいよねぇ〜。」
リリスがスーパー猫の上に跨ってなんか言ってる。
「この猫。アレクサンダーってオスの猫らしいですよ。」
その後、白熊総帥の寝室で日記を発見。かなり可愛がっていた様子。
「俺のアパートじゃ飼えないぞ。」
物理的に無理だ。ドアをくぐれないし、部屋の体積が足りない。
「あのアパートはペット禁止ですし。」
セラが言う。
「ふぅ〜。猫ねこぉ〜。」
肉球ぷにぷにぃ〜。
「もう何人も殺しているんだぞ。この猫は。」
5人ほどだな。
「あの人たちはこの子を閉じ込めて虐めていたからだよぉ。酷いこと、しなきゃ、こんなに素直だよぉ〜。」
なんかリリスに懐いている猫だな。
「エル様。この猫に憑いているクレストは私の探しているデッドクレストではありませんでした。火属性の下位種である熱の紋章、ヒートクレストでした。」
さっきなんか、猫の体中を調べていたな。クレストを探していたのか。
「この人間社会に置いていたのでは危険ですので、私たちの村でお預かりした方がいいと思います。」
村の裏はモンスターの巣窟だしな。
「そうだよな。あの猫に暴れられたら俺でも手に負えないし。」
まだリリスが飼いたいってねだっているが、こればっかりは飼えないって。
「おい、リリス。その猫はフレリアが引き取ってくれるってよ。」
リリスがなんか首をかしげている。
「フレリアさんってエル様と一緒に住んでいるじゃないですか。」
まぁ、そうなんだけど。
「正確にはフレリアの実家で引き取る、だな。あの辺りは似たようなのがたくさんいるし。」
思い切りモンスターだらけだからな。
「似たようなのって・・・。友だちがたくさんいた方がこの子にもいいよね・・・。」
なんかもの悲しそうな顔をしているが、さすがにあんなでかい猫は内緒で飼えない。
「殺してクレストだけ手に入れればいいんじゃないですか?」
セラがなんか言っている。
「聞いた所によると、クレストは宿主が死ぬとすぐにどこかへ行ってしまいますから、クレストだけ取り出すということは無理だそうですよ。」
無理なのか。
「そうですか。さすがにこれだけ凶暴な猫を黒馬ビルで飼うわけにもいきませんし、フレリアにお願いできますか?」
任せてくださいとフレリアが頷く。
なんだかんだで白熊は壊滅し、白熊の研究した物は全て黒馬が没収した。
でかい猫のことアレクサンダーはフレリアとリリスに付き添われて南アメリカにあるアルフヘイムへ旅立つことになった。さすがにあの猫を引き取るリスクは負えないとのことで、クレストを諦めて見送ることになったのだ。
しばらく家は俺とセラの2人だけになるな。
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