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2004.3.21


第6話 白熊(12)



 「それじゃ、いってきまぁ〜す♪」
 リリスがぶんぶんと手を振っている。その隣でフレリアがなんかそわそわして落ち着きなさそうにしている。
 空港にてリリスとフレリア、アレクサンダーの見送り。
 アレクサンダーってでかい猫は檻に入れられてすでに飛行機へ積み込まれている。
 リリスとフレリアもこれから搭乗だ。
 「エル様。一応、リリスさんって捕虜なんですけど。こんな自由にさせていいのですか?」
 セラが何か言っている。
 「別にいいんじゃねぇの?」
 無責任な発言だが、問題ないだろ? まぁ、リリスのやつは時々、オグに電話をかけたり、手紙を書いたりして連絡をとっているようだが。
 「さて、セラ。行くぞ。」
 リリスたちの乗る飛行機が飛び立つのを確認せず、空港を後にする。


 「さて、しばらく2人きりだけど何する? やはり夜伽とかして欲しいなぁ。」
 さすがに普通道路で120キロとか出しているセラの運転にも慣れた。
 「エル様。黒馬はすでにいくつかのクレストを入手しているみたいです。」
 無視された・・・。
 「封印解除済み?」
 クレストは魔法文明の時代にそのエネルギー放出を封印されている。クレストから放出されるエネルギーは俺の使う魔法の原動力となるのだ。
 「封印解除済みです。フレリアさんによるとクレストの封印が解けた状態だと生物に憑依して存在する、とのことですが、黒馬もクレストの憑依した動物をカプセルに入れて眠らせているのでしょうか?」
 そんなもん知らんけど。
 「普通に飼ってんじゃねぇ? 猫ちゃ〜ん、とか言って。」
 黒馬と言えば世界の大部分を牛耳る2大組織の内の1つだからな。なかなか何をやっているのか分からない所もかなりある。クロウ(総帥)の目の届かない所もあるのだろう。
 「クレストが体に憑依していればクレストのエネルギーを使用して強力な超能力を使うことができるよな。あの猫ちゃんだって元々はただの飼い猫だったのに口から強烈な怪光線とか出せるし。こう言う超能力者って近場に1人いたよな。あれもクレストが憑依してんじゃねぇ?」
 生物と言えば人間も入るからな。
 「エル様ですか? モンスターでもないのに魔法が使えるなんて不思議ですってフレリアも言ってましたし。」
 オイ。
 「俺じゃねぇって。俺の魔法は魔法カードを媒体にしてクレストのエネルギーを使うだけだ。俺の体からエネルギーが出ているわけではない。超能力者といえばクロウだろうが。あれはただものじゃねぇよ。」
 初対面でマインドリーリングとテレポーテーションを披露してくれたからな。
 「あ、そうですね。総帥も超能力者でしたね。」
 まぁ、クロウのやつは俺みたいに派手な魔法はめったに使わないからな。
 「フレリアによると、クレストに憑依されたやつは体のどこかに紋章が浮き出るそうじゃないか。クロウのやつの体のどこかに紋章がついていれば間違いないのだがなぁ。」
 誰が確かめるんだよ。健康診断の時の医者とか?
 「総帥の体にそれらしい紋章はなかったと思いますけど・・・。」
 ん?
 「なかったと思いますけどって、まさか!!」
 クロウと寝たのか?!
 「あ、うふふふふ。」
 笑ってごまかすな。
 「おい! はっきりと言え! クロウとできているのか!?」
 時と場合によっては殴りこみに行かねばならんぞ!
 「なんでもないです。」
 セラは表情を崩さず、笑顔のままだ。
 「今日からしばらく2人だけだからな。このことについてはたっぷり聞かせてもらうぞ。」
 まずは呪縛呪符で体の動きを奪い、鞭にローソク、木馬とか用意して・・・。
 「嫌ですよ。そんなプライベートなことまで聞かないでください。それより、今日の夕飯は何が食べたいですか? 久しぶりに私が夕飯を作りますから。」
 リリスが来てから家事はリリスが全部やっていたからな。
 「夕飯はステーキかハンバーグが食べたいけど、クロウとの関係を言え。まさか実はクロウの腹心で俺が黒馬を乗っ取らないように見張っているとか?! それでクロウとベッドを共にしながら、ふふ、馬鹿な男ね、とか顔の通りの悪女の笑みを浮かべて俺をバカにするのか?!」
 ヤバイ! セラの顔じゃ似合いすぎる。
 「そんなことないですよ! 顔の通りの悪女って何ですか! エル様を影で笑うようなことは絶対にしません! それに総帥の様なトップの人間が私みたいな下っ端を相手にするわけないじゃないですか。」
 さすがに気分を害したのかセラの眉間にシワが寄る。
 「クロウと何でもないのならこの2人きりの生活を機会に俺の女として添い寝しろ。ベッドの上で可愛い声をあげて鳴いてくれ!」
 こいつが本当に処女なのか確かめたいな。もう二十歳を過ぎているのだから初体験は終わっていると言うのがほとんどだし、スカウトの時に聞いた初めてなんですって言うのは助手なんてするのが初めてってことだったしな。
 「あ、帰りに買い物していかなくちゃ。今日の夕飯はステーキですね〜♪」
 カロリーを気にせずステーキを食う女って言うのもなかなか珍しいよな。さらっと聞いてない振りをされてしまったな。ルーファいわく、セラは押しに弱そうだ。今日は押して押してベッドまで押していくぞ!


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