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2004.6.2


第7話 デート(1)



カリカリ・・・。

カタカタ、カチ・・・。

キィ・・・。

カタカタカタカタ・・・。

カリカリ、カリカリ・・・。

 「エル様。お茶をお持ちいたしました。」
 ・・・。
 「エル様?」
 !
 「うぉ! セラか。なんだ?」
 なんか、めちゃくちゃ没頭していた。肩を叩かれるまで気づかなかったわ。
 「お茶をお持ちしました。」
 お茶か。セラがカップを2つ載せたトレイを持っている。カップからホットミルクの甘い香りがしている。
 「ありがとう。・・・、置くとこがないな。」
 周りを見ると凄いことになっていた。
 パソコンの置いてある机の上はもちろん、椅子の周りの床にも大量の書籍やファイルが積み上げられている。
 「少し、休みませんか?」
 セラがちょうどいい高さに積み上げられた本の山を椅子にしてホットミルクを飲み始める。俺もセラからホットミルクのカップを受け取って口をつける。
 う〜ん、ちょうどいい甘さだな。
 「今、何時?」
 暗くて時計が見えん。
 「午前5時です。」
 5時?
 「もうそんな時間か。」
 何時間ぶっ続けでやっていたんだろう?
 「進み具合はどうですか?」
 セラが少し笑みを浮かべて首をかしげる。進み具合なぁ・・・。
 「どこまで進んだんだろ・・・?」
 新たに使えるようになった魔法は20や30ではない。しかし、本来の目的はそんなことではない。
 「あ、金属の鋳造とかできる工具が用意できないか?」
 ちょっと実験してみたいものがある。
 「黒馬ビルの兵器開発部に行けば借りられるのではないですか?」
 そう言えばそうだな。
 「設計図があれば作ってくださいますよ。」
 設計図か。
 「設計図の書き方なんて分からん。」
 全然知らん。
 「どんなものを作るのか言ってくだされば私が代わりに書きますよ。エル様、工具を借りても使い方はご存知ありませんよね。ケガとか心配ですから、設計図を書いて作っていただきましょう。」
 なるほど。
 「んじゃ、設計図を書いて作ってもらうか。」
 色々調節せねばいけない所があるけど、作っている時に立ち会って口出せばいいか。
 「エル様。その前に少し、お休みください。目元にクマができてますよ。」
 え?
 1日や2日くらい徹夜しても全然平気だと思ったがな。
 「もう4日目なんですから休んでください。」
 4日?
 「今日は何日?」
 俺の記憶が確かならば、21日の夜から始めたはずだ。
 「24日です。」
 3徹か。そう言えば無性にだるいな。
 「資料の整理とここの片付けは私がしておきますから、ベッドに入ってください。」
 ホットミルクで体が温められたせいか強烈な眠気が。
 「ん。おやすみ。」
 セラに空になったカップを渡してふらふらっと退室する。廊下に出てすぐ左のドアが俺の部屋だ。ベッドに入るとそのまま気を失う。

 白熊のアジトを壊滅させたが、ほとんど俺のいい所がなくて悔しくてな。セラをデートに誘っても逃げてばかりで捕まらないし、余計に欲求不満になって研究に没頭することにしたのよ。
 まずは魔法の威力アップを目的に研究をしたのだが、なかなか上手くいかない。
 火炎呪符などの攻撃系魔法カードに威力を上げる強化系の模様を加える事で大火炎呪符のような強力な攻撃魔法を作ることにはすでに成功している。モンスターに初めて遭遇して返り討ちにあったヤスニソス遺跡から帰ってすぐに作った。並みのモンスター相手ならば十分だ。普通の人間相手にすれば強力すぎて一発で灰にするほどの攻撃力がある。
 しかし、白熊のアジトで遭遇した人工のモンスターたちにはほとんど効き目がなかった。動きを封じたりするだけで、致命傷を与えることはできなかった。さらにあのアレクサンダー(でかい猫)相手にはかすりもしなかったし。
 つーことで、更なる攻撃力アップを試みたのだが、成功しない。
 強化系の模様を二重に組み込んでも意味なかったし、同系の魔法を組み合わせても大して意味なかったし。
 今の作り方ではこれ以上の威力は望めないと言う結論に達した。
 分からんものは分からんにしておいて、その内にいい案でも思いつくでしょう。他にもやることはたくさんあるからな。
 続いて取り掛かったのが、セラをどうやって落とすか。
 こればっかりは毎日研究しているが、なかなか上手い手がない。色々と恋愛関係の書籍を読み漁って思い立ったことが1つあった。
 そう言えば、何かプレゼントしたり、色々と世話してくれたことにお礼を言ったりとかしたことがなかったではないか。
 もらうばかりでこっちからあげたものがない。
 これはちょっとな。
 つーことで、何をプレゼントするかってことになったのよ。
 俺は天才魔法研究家として黒馬にスカウトされたわけよ。セラもその能力に期待しているのは確かだ。
 俺自身で魔法を使うのはできるのだが、俺以外のやつに魔法を使わせることに成功していない。
 たびたび、セラやリリスとかに魔法を使わせようと色々と試してみたが、全くダメだった。
 俺の魔法カードを使って魔法を発動させる簡易魔方陣と言う形では俺しか実現不可のようだから、他の方法を考えるべきだろう。
 そこでヒントになったのが、白熊のアジトにいた戦闘員が着込んでいた炎と電撃の効かなくなるファイアガードとサンダーガードだ。
 魔法研究の第一人者であるモッチョン博士が作ったものだ。インナースーツにファイアクレストとサンダークレストを描いて、何らかの方法で炎と電撃に対する防御能力を発動させていたのだ。
 つまり、俺みたいに派手な魔法でなくても、ファイアガードやサンダーガードのように何かのアイテムとして提供すればそれなりの効果があると言うことだ。
 つーことで、セラにプレゼントするのは俺の特製マジックアイテムに決定。
 どんなのにするのかはすぐに決まった。セラの身を守るやつよ。
 あの武骨な防弾チョッキを脱がせたい!
 あれって弾丸を防御する頻度より、俺のセクハラを防御する頻度の方が高いのよな。
 俺をスカウトしに来た時は俺を色香で誘うために脱いでいたらしいが、それ以来ずっと、この家の中でゆったりしている時ですら防弾チョッキで完全武装してやがんの!
 ペンダントかイヤリング辺りがいいな。決して防弾チョッキみたいなのはダメだ。あのファイアガードやサンダーガードみたいなインナーシャツにするのも却下だ。服を脱がした時にあんなダサい下着を着ているのは萎える。
 ペンダントだな。セラは髪が長くてほとんど耳を隠してしまっているからな。胸元にきらめくようなペンダントにすればさりげなくあの深い胸の谷間も覗ける!!
 決定。
 防御魔法の効果のあるペンダントを作ろう!
 意外と面倒だったのよな。
 最初にモッチョン博士の作ったファイアガードとサンダーガード(白熊のアジトから回収したやつ)を研究してどういう仕組みになっているのか確認した。
 あれは体から放出されるエネルギー(気とか、オーラとかっていうやつ)を放出するツボとかチャクラ穴とかって言う部分にエネルギーの受信機をつけ、インナースーツに描かれた魔法の模様で増幅し、魔法として展開すると言う仕組みになっていた。
 これはペンダントに使えん!!
 やはりあれ単体で魔法を発動できるか、ペンダントの形でもエネルギーを取り入れることができるようにせねば。
 そんなこんなで色々あって、こんなことをしているわけよ。
 もうすぐあの防弾チョッキを脱がせてやるからな。その暁にはあんなことやこんなことしていちゃいちゃして、ぬふふふふ。


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