「エル様。デートに行きませんか?」
え?
睡眠から起きて、風呂に入って、飯を食っている席でセラがなんか言ってる。
「ちょ、ちょっと、聞き取れなかった。もう1度言ってもらえるか?」
一応、聞こえていたが、信じられないセリフだったので聞き返す。
「ですから、デートに行きませんかって。」
頬をかすかに染めながら言うセラがなんともかわいい。
「行きましょう。」
セラとのデートが突然決まった。
今まで何度デートに誘っても逃げてばかりいたのにどういう心変わりなのか。まぁ、嬉しい心変わりではあるが。
「決まった。」
鏡に物凄い美男子が映っている。俺なんだけどな。う〜ん、やはり最高に美しいな、俺。
「ぬっふっふっふ。バッチリ、ゴムは持った、クレジットカードも持った、ハンカチチリ紙持った。完璧だ!」
白のワイシャツにダークグレイのジャケットで、下はブルージーンズだ。髪にはクシを入れて、ヒゲもしっかり剃ってある。ガラスが丸くて小さいサングラスをつけて完璧だ。
これでセラもイチコロだぜ。
「よし、行くぜ!」
よっし、セラと初デート!
同棲を始めて半年が過ぎようとしている所で、ようやく初デートだ。デートより同棲が先って言うのはかなり特殊だが。
「おっしゃあ!」
部屋から出て、セラの部屋へ向かう。廊下を歩いて距離にして約10m。長いな。
セラの部屋のドアをノックする。
「はい。今、開けます。」
中からセラが返事する。少ししてドアが開く。
「エル様。行きましょうか。」
少し頬を赤く染めながら笑顔を見せるセラが無性にかわいい。普段は口紅をちょっと入れるだけの化粧なのに、今日は結構気合が入っていて綺麗だ。派手過ぎない程度のアクセサリーも首と耳につけている。ダイヤっぽいな。
服装は胸元の大きく開いた赤いシャツに白のジャケットを羽織り、白のスカートをはいている。それに黒のショルダーバックを持っている。
「どう、ですか? 変、じゃないですよね。」
セラの防弾チョッキを着けていない所を久しぶりに見た気がする。
「綺麗だよ。やっぱりお前にはあんな物騒な防弾チョッキとか似合わないって。」
さりげなくセラの腰に腕をまわす。普段、ベルトにつけている手榴弾とかナイフとかは持っていない様子だな。
そのまま玄関に向かう。
「今日は私に任せてくださいね。」
地下駐車場の車の中。俺は免許持ってないからセラの運転だ。
「色々と計画してあるんですから。」
突然のデートで俺は何も計画していないからな。
「それじゃ、出発しますね。」
いつもと違い、ゆっくりと出発する。
普段は法定速度を余裕で50キロとかオーバーしているのに、今日は法定速度内だ。珍しい。
「フレリアとリリスは明日、帰って来るそうですよ。」
結構長かったな。2週間くらい向こうにいたよな。
「お土産はあるって?」
いつ連絡が来たんだろう?
「楽しみにしててくださいって。」
てか、あいつらの行った所って南米アマゾンのど真ん中だぞ? そんな所のお土産ってなんだよ?
「ほら、エル様。綺麗ですよ。」
街に入るといたる所に飾り付けがされていた。
「あ、クリスマスか。」
忘れてた。今日って12月24日じゃん。クリスマスイブ。
「最初はショッピングですね。たっぷり付き合ってもらいますからね。」
デートって荷物持ちか?!
セラはデパートの地下駐車場に車を止める。
「エル様。これ、かわいいですね。」
なんか、いつもに増してはしゃいでいるな。猫のぬいぐるみか。先に白いのが付いた赤い帽子をかぶっている。
「リリスの誕生日プレゼントはこれにしましょう。」
セラが猫のぬいぐるみを手に取る。
「そう言えば、あいつの誕生日って12月25日のクリスマスだっけな。」
すっかり忘れてた。
「エル様はどうします?」
そうだな。ベッドに誘って女にしてやるって言うのをクリスマスプレゼントにしたいがな。
「俺はもう少し見てからにするわ。」
セラと同じぬいぐるみをプレゼントしてもな。えっちぃ下着とかいいな。黒か赤のTバックとか。
「エル様。会計を済ませてきますね。少し待っていてください。」
セラがそういい残してレジへ向かう。
ふと、横を向くとでかいトカゲのぬいぐるみがガキ供にボコにされていた。
「お待たせしました。次に行きましょう。」
セラがさりげなく俺にぬいぐるみの入った袋を俺に手渡す。
「エル様。次はあそこですね。」
さりげなく腕を絡めてくるセラ。
せっかくのデートだしな。
「セラ。せっかくのデートだし、敬語、止めない?」
今まで、いつ言い出そうかと思っていたんだけど、ちょうどいいや。
「敬語、ですか・・・。えっと・・・。」
ん?
「とりあえず、呼び捨てにして。」
様付けされるとどうもよそよそしい。
「呼び捨てですか。」
普通に敬語使ってるな。
「呼び捨て。エルって呼んで。」
急に変えるのは無理か。
「エル・・・。変な気分がします。」
変なってなぁ。
「んで、ですます調を止めろ。」
タメ口利くセラってなかなか想像できないが。
「それは無理です。この言葉遣いに慣れてしまって直せません。」
無理か。
「まぁ、いいや。その内に。肩の力を抜いた言葉遣いをすること。」
別に肩の力が入ってるわけではないのだがな。
「はい。」
続いて服だ。
「どっちにしたらいいと思います?」と訊かれたら「こっち」と断定してやるのではなく、「お前はどっちがいいと思っているんだ?」と訊き返してやるのがいいらしい。
大体の場合はすでに決まっていて同意が欲しいだけなのだそうだから。セラを落とすために呼んだ本に書いてあった。
「重い。」
両手に手提げ袋が合計8個。手に抱えた箱が縦に3つ。
「このくらいにしましょうか。少し何か食べていきましょう。」
もう限界。腹も減ったし。
リリスへのプレゼントは銀の十字架のかっこいい、黒いベルトのチョーカーにした。ちょっと言い方を変えると、銀の十字架の付いた首輪。
「エレベータが来ましたよ。」
うぃ。
エレベータに乗って料理店の並ぶ階へ向かう。
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