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2004.6.1


第7話 デート(3)



 「ここのパスタがおいしいって評判なんですよ。」
 荷物を抱えながら店に入る。いい匂いが漂っている。
 「2名様ですね。こちらへどうぞ。」
 時間が時間だけに空いているな。ウェイトレスに案内されて席に着く。
 「ご注文が決まりましたらそちらのボタンを押してお呼び下さい。」
 ウェイトレスが頭を下げて去っていく。
 「おれ、カルボナーラ。」
 メニューの写真が美味そうだった。
 「私はこれにしようかしら。」
 きのことクリームのスパゲッティだな。
 「他に何か注文します?」
 ちょっと遅いランチだし。
 「ワインとか飲みたい所だが、車だし、止めておこう。」
 俺は運転しないから飲んでもいいのだが、1人で飲んでもしょうがないしな。
 セラがぽちっとボタンを押すとさっきのウェイトレスがやってきた。
 「ご注文をお伺いいたします。」
 ウェイトレスがメモを片手に注文を聞く。それにセラが注文を言う。
 「かしこまりました。少々お待ちください。」
 ウェイトレスが去っていく。
 「エルすぅ・・・、えっと、訊いてもいいですか?」
 今、エル様って様付けで呼ぼうとしたな。エル様って様付けで呼ぶのに慣れてしまっているのだろうな。
 「なんだ?」
 セラに目を合わせると、セラは頬を染めてすぐに目をそらしてしまう。
 「あの、えっと、何日も徹夜して何をしていたのですか?」
 まぁ、気になりますわな。
 「あの部屋でやることなんて1つしかないと思うがな。魔法の研究。」
 そのための部屋だし。
 「それは分かります。どんな内容の研究なんですか?」
 内容なぁ。
 「モッチョン博士の作って白熊の戦闘員が使っていたファイアガードとサンダーガードを覚えているか? あれをヒントに俺みたいな魔法を使えるようにするのが難しくても、あんなふうに魔法の力を応用した物を作った方がいいのではないかと思って研究していたんだよ。」
 動機が不純だが、研究の内容はまともだ。
 「もう半年になりますものね。早く魔法研究で成果を上げないと戦闘員にされちゃいますよね。」
 今の所、俺の仕事の80%が戦闘員の仕事だったりする。ナンバー2の実力者になっているみたいだし。
 「そうなんだよ。前回の白熊を襲撃する仕事なんて成果が出ないからって言うんで引き受けたんだよ。まぁ、魔法研究にとっても無駄ではない仕事の内容だったからいいけど。」
 ファイアガードとサンダーガードだな。
 「進み具合はどうですか?」
 進み具合なぁ・・・。
 「微妙。今朝も言ったけど、設計図書いて作ってもらって上手くいくのかいかないのか。」
 俺の直感的な感覚としては上手くいきそうだけど。
 「楽しみですね。」
 あ、こいつへのクリスマスプレゼント。どうしよう・・・。忘れてた。
 「最初に出来上がったのはお前にやるよ。」
 セラの防弾チョッキを脱がすためって言うのが動機だからな。今は防弾チョッキをつけていないが、スタイルいいよな。
 「デートって楽しいですね。」
 は?
 「そうだろ? 全く、何度誘っても受けてくれなかったくせに。」
 非番になるたびにデートへ誘っていたんだけどな。
 「えっと、それはですね・・・。」
 セラの顔が真っ赤になる。かわいいやつだ。
 「単に恥ずかしかっただけだろうが。1回やってしまえばその後は楽しいだろ? セックスも同じなんだがな。」
 セラが顔を赤くしたまま眉間にしわを寄せる。
 「いつもそれですね。」
 今日はクリスマスだし、ベッドへ押し倒すぞ。
 「お待たせいたしました。」
 ウェイトレスがスパゲッティの皿を運んでくる。う〜ん、美味そうな匂いだ。
 「ご注文は以上でよろしいですね。では、ごゆっくりどうぞ。」
 ウェイトレスが伝票を置いて去っていく。
 「それでは、喰ってみるか。」
 う〜ん、なかなか美味よの。


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