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2004.6.2


第7話 デート(4)



・・・チン

 地下駐車場のある階に着いて、ゆっくりとエレベータのドアが開く。
 「!」
 セラが突然、俺をエレベータの壁に押し付ける。突然のことで、手に持っていた箱が倒れる。

ドドドドドドドドドドドド!!

 一瞬にして宙に浮いた箱が蜂の巣になる。セラの買った赤い靴がぼろぼろになって箱から零れる。あれ、ブランド品で高かったのになぁ。
 エレベータのドアが再びゆっくり閉まる。
 「何事?」
 せっかくのデートなのに。
 「どこかの過激グループの様です。」
 過激グループって。
 「エル様。魔法は使えますか?」
 備えあれば憂いなしだ。
 「こういう緊急事態を想定して、いつも魔法カードを持ち歩いているぞ。」
 そんなに荷物になるものじゃねぇし。
 「2階で降りて、非常口から出ましょう。」
 1階で降りないのは待ち伏せを警戒してだ。2階の非常口もあれだと思うが、正面玄関より人通りが少なくて一般人にはそんなに迷惑がかからないだろう。
 「せっかくの楽しいデートなのに。全く。」
 エレベータの真ん中に荷物を置いて4枚の魔法カードで囲む。
 「転送方陣。」
 4枚の魔法カードが黄色の炎をあげて燃え尽きると同時に荷物が異空間に転送される。
 「これで身軽になったな。」
 ああ、やれやれ。
 「それではエル様。エレベータを降りたら左です。非常口へ一気に走りますから、ついて来てください。」
 デパートの見取り図は把握している様子で。
 まもなくエレベータが2階に到着する。俺は障壁方陣の魔法カードを構える。

・・・チン

 エレベータのドアが開き始めると同時に障壁方陣を展開。いきなりマシンガンの銃撃に晒される。
 「降りられん。」
 面倒。
 「風塵呪符!」
 エレベータの前にいた連中が突然の突風に吹き飛ぶ。
 「いまだ!」
 セラを先頭にエレベータから脱出する。なんかいつの間にかセラが拳銃を構えているし。チラッと捲れたスカートの中に拳銃を隠し持っていたらしきホルスターが見えた。やっぱり持っていたのね。
 セラが走りながら発砲し、俺たちに銃を向ける連中を倒していく。
 「エル様! あのドアです!」
 非常口って書いてありますな。
 「大噴水呪符!」
 空中から水が出現して非常口のドアに突っ込む。高圧の噴水が鉄のドアを吹き飛ばし、その後ろで待ち伏せしていたヒットマンも一緒に押し流す。
 「飛走方陣!」
 魔法発動と同時にセラを抱きかかえ、非常口から飛び出す。外に無数の待ち伏せがいたが、その頭上を跳ぶ。
 「大雷神呪符!!」
 怒りの裁きを喰らえ!
 強烈な電撃に眼下の武装集団が吹き飛ぶ。
 「俺たちのデートを邪魔した報いじゃ!」
 そのまま、走り去る。

 「エル様。お怪我はありませんか?」
 人気のない路地裏にて。
 「魔法でオートガードだから俺に銃弾が効かないのは知っているだろ? お前こそ大丈夫か?」
 護衛鎧方陣ごえいがいほうじんが常に俺の体を守ってくれる。ミサイルや戦車の砲撃も防いでくれるはずだ。
 「大丈夫です。これから黒馬ビルに向かいます。エル様。さっきの魔法の効果はまだ、大丈夫でしょうか?」
 飛走方陣なんて久しぶりに使ったな。戦場じゃ脚力強化護符の方が使い勝手がいいからな。
 「効果は切れてしまったようだな。予備はないぞ。」
 今、気づいたのだが、いつの間にか様付けに戻っているし。
 「今日は敬語を止めて呼び捨てにするって話じゃなかったか?」
 今後もずっと呼び捨てにしてもらいたい所だが。
 「あ、申し訳ありません・・・。」
 セラが困った顔をするが、すぐにまじめな顔に戻る。
 「いたぞ!」
 後ろから男の声が響く。俺が振り向くと同時にセラが発砲する。声の男が倒れる所を確認する。
 「車を調達しましょう。」
 どうやって調達するのかは、あえて訊かないでおこう。どうせどっかに放置してある車をパクるんだろう。
 「こっちだ! 撃て撃て!」
 男の倒れている方から何人もの男が発砲してくる。それを障壁方陣で防いでやる。
 セラを先頭に走り出す。


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