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2004.6.4


第8話 会食(1)



 「セラ。プレゼント。」
 セラにダンボールでできた何の飾りもない箱を渡す。手のひらくらいの大きさの箱だ。
 「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
 俺が頷くとセラが箱を開ける。
 「ペンダントですか?」
 丸い真鍮のメダルに奇妙な模様が描かれている。それに銀の鎖がつけてあり、ペンダントの形をしている。
 「俺様特製のマジックアイテム1号、シールドメダリオンだ。」
 ネーミングが普通過ぎて面白くないが、ついに完成した。長かった。これほど真剣に研究室にこもったことはなかったであろう。

これでセラの防弾チョッキを脱がせる!!

 「あ、ついに完成したんですね! 本当に私にいただけるのですか?」
 セラが嬉しそうにはしゃぐ。こうして一緒に喜んでくれると嬉しいな。
 「お前のために作ったんだよ。」
 動機が不純だが。
 「エル様・・・。」
 セラが俺の頬に口付けをしてくる。
 今までにキスしてくれたことなんてあっただろうか! 動機は不純だが、お前のために作ったんだよって言うありきたりなセリフに感動したのか? 全く嘘が入っていなかったから、それだけ心を打ったのだろう。
 「早速、着けてみろよ。ちょっと貸してみろ。」
 セラからペンダントを受け取って鎖の留め具を外し、セラの首の後ろに腕をまわして着けてやる。それからちょっと離れてペンダントをつけたセラの姿を眺める。
 センスは悪くないな。
 「おまけとしてここに写真を入れられるのだ。」
 真鍮のメダル部分がぱかっと開く。中にもびっしりと奇妙な模様が描かれている。
 「ふふ。後で写真を入れさせていただきますね。」
 あらかじめ俺のかっこいい写真を入れておいてやろうと思ったのだが、セラが防弾チョッキを脱ぐっていうので頭がいっぱいになって忘れていたわ。
 「このマジックアイテムの効果を説明しておくな。」
 魔法の品だから普通のアクセサリーではないのだ。
 「早い話が、これはお前の身を守るためのものだ。これを着けていると身に危険が降り注いだ時、オートで防御してくれる。俺の体についている護衛鎧方陣ごえいがいほうじんより強力になった物だ。物理攻撃だけでなく、護衛鎧方陣で防げなかったレーザー光線や強すぎる紫外線、核の放射能なんかも防いでくれるぞ。夏はこれをつけているだけで日焼け止めがいらないぞ。」
 セラのためを思えばこそだな。我ながらよくこんなのを作れたなと感心するな。やはり俺って天才だよな。
 「ありがとうございます。」
 うむうむ。
 それはともかく、本題に入ろう。これを言わねば何のためにこんなに苦労したのか分からん。
 「これを着けていれば防弾チョッキがなくても銃弾は防げるぞ。脱げ!」
 このために研究室にこもったのだ!
 「そう・・・、ですね。エル様のくださったこれがあれば防弾チョッキは必要ありませんね・・・。」
 なんか乗り気じゃなさそうな雰囲気だな。
 「その通りだ。防弾チョッキなんて鉛入りの重たい物を外せば身軽にもなるぞ。」
 20キロぐらいあるのよな。
 「えっと、部屋で脱いできますね。」
 セラがパタパタと私室に走り去る。
 「よっしゃあ! これでスキンシップの頻度も増えると言うもの! あの邪魔な防弾チョッキさえなければこっちのものだ! うははははははは!!!」
 嬉しくて小躍りしちゃうぞ。
 「エル様。あたしのは?」
 ん?
 振り向くとリリスとフレリアが奇異の目で俺を見ていた。うわ、恥ずかしい所を見られてしまった。
 「完成品1号はセラにやるって言う約束が1ヶ月以上前からあったからな。2号が完成したらお前たちにもあげよう。」
 兵器開発部に言って量産の準備をしてもらっているからな。近い将来、黒馬の戦闘員に銃弾が効かなくなるはずだ。
 「えー、ないの?」
 リリスが頬を膨らませてプーたれてる。
 「ねぇな。俺のもないんだから諦めろ。」
 リリスがスタスタスタとTVの前に歩いていってスイッチをつける。なんか機嫌が悪そうだな。フレリアも自室に去っていってしまう。
 「セラの顔でも拝みに行くか。」
 リリスのつけたTVからむなしく笑い声が響いていた。


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