「モッチョン博士。こちらはエル・ハウンディーア博士です。」
ガインにモッチョン博士へ俺を紹介してもらう。
「おお、はじめまして、ハウンディーア博士。マーク・モッチョンです。」
モッチョン博士と握手をする。鼻がでかいなぁ。どうやったらこんなにでかい鼻になるのだろうか。
「はじめまして。」
ガインが「私はこれで失礼いたします。」とか言って去っていってしまう。そう言えばシャロンがここにいるのだからシャロンに紹介してもらえばよかったな。
「こんなにお若い方々が黒馬で魔法研究をなさっているとは思いませんでしたわ。」
そう言えば、うちの部署って若い連中ばかりだな。シャロンも多分、ぎりぎりで20代だと思うし。
「まぁ、そうですね。私もまだ24ですから。」
去年の誕生日はどたばたしてて自分でも忘れていたが、今年こそは盛大に祝ってもらうぞ。
「わしの年齢は訊かんでおくれよ。」
もう60過ぎって話じゃないか。
「あの回復魔法は驚かせていただいたわい。途中でステージから降りてしまったが、あの後はどうなったのかね?」
まぁ、気になるわな。
「包帯を取ったらあんな所で治療できるほどの傷じゃなかったのでベッドと外科の医者を借りて綺麗に治療しました。しばらくしたらドレスを着て来るはずなんですけどね。」
シャイリースがあの後、ドレスを着せずにベッドに押し倒してしまったら来ないかもしれないな。それならば後で邪魔しに行かねば。
「治療の現場に立ち会いたかったですな。借りた外科の医者とやらはどこの医者ですかな?」
どこだったかな?
「訊くの忘れたな。数分で着ましたからこの近くの人だと思うのですけど。」
治療風景かなんかを聞くつもりか?
「これが終わったら探してみますかな。」
それはがんばってくれ。
「彼を探すよりウィングス病院にいらっしゃった方が早いですよ。あそこの医者はほとんどが私の治療現場に立ち会った経験がありますから。」
特にセラの治療にあたった外科医。やつのせいでこんな慈善活動をする羽目になっているんだよ。まだ俺にしか使えない実験段階の技術だと言うのに。
「そう、魔法を使う際になにやら紙を使っていらしたみたいだったが少し分けていただけませんかな?」
ああ。世界政府の副議長をコピーに走らせたあれな。まだ余っていたな。
「これっすな。治療護符って名前が付いています。」
俺が付けた名前だのだがな。
モッチョン博士にコピーを1枚渡す。
「私も最初は驚きましたけど、本当にコピー用紙にこの模様を普通にコピーしただけなんですよ。」
シャロンが話に入ってくる。
「すばらしい。回復系クレストの下位種、ライトキュアクレスト(Light Cure Crest)に強化支援クレストの中位種、ハイサポートクレスト(High Support Crest)を組み合わせて描いてある。クレストグラフの組合せ方は完璧だ。すばらしい。上位種のクレスト同士を組み合わせればもっと効果が期待できると思うね。」
さすがは魔法研究の第一人者だな。なんかすげぇ。
一番最初に作った回復魔法は回復系クレスト単体でほとんど効果がなかったから強化系クレストを重ね書きしたんだ。効果が弱過ぎる魔法にはこうして強化系クレストを書き足すと言うことはやったことがあったから難なく完成した。これが今使っている治療護符だ。すでに強化系クレストを組み合わせてしまっているから大火炎呪符とかのように上位の回復魔法を強化系クレストの組合せで作れなかったのだ。2重に強化系クレストを組み込んでも意味はないのだ。
なるほど、クレストの上位種を使うか。上位種とか下位種とかって色々と同じ効果でも威力によって種類がたくさんあるとか何とかフレリアが言っていたよな。
「どれがどのくらいの威力のあるクレストなのかよく分からないんですよね。」
時々模様が違うのに効果は同じって言うのがあったのだけれど、威力まで確認していないからな。
「情報交換といこうじゃないか。今度、研究成果を持ってわしの研究室に来なさい。わしからクレストについての研究データをプレゼントしよう。」
おお。魔法を使うには至っていないが、世界的な魔法研究の第一人者と言われるだけあって俺より研究データは豊富に持っているはずだ。ぐぐっと研究が進むんじゃないかな?
「ぜひ、伺わせていただきます。あ、それからですね。私が黒馬に所属する前の研究データをネット上に公開してあるんですよ。黒馬に入ってから更新していないのですが、私の魔法について紹介したコンテンツがアップしてあるんです。アドレスと教えておきますね。」
昔は旅先で魔法カードを補給するのによく使ったね。アクセスカウンタの90%は自分で回してしまったからな。
「それじゃ後で見てみよう。」
メモ帳の1ページにさらさらっと書いてモッチョン博士に渡す。
「アップしてある通りにやってみても魔法は発動しませんでしたよ。」
シャロンがなんか言ってる。
「そうなのかね?」
まぁ。
「簡単にできちゃったら世界中魔法使いだらけっすよ。」
俺以外に魔法が発動できたなんて話は聞いたことがない。治療護符くらいは他に使えるやつが欲しいよな。
「それもそうじゃな。」
そうそう。
「エルったら研究室に来た当事はイングリッシュも読めなかったんですよ。」
それを言うな。
「イングリッシュくらいは辞書を片手に読めるようになったわ。」
イングリッシュとは魔法文明の遺跡に残されている言語の1つで、現在の我々が使用している言語に最も近い言語として有名である。イングリッシュの他に9つの言語があるらしいのだが、全く知らん。
「イングリッシュも読めないのにがんばったのぅ。」
モッチョン博士が笑ってるよ。2人して馬鹿にしやがって。
「はい。ちゃんと勉強してますぉ〜。」
モッチョン博士の所に行く話は来週末と言うことで話がついた。シャロンも行きたいとか駄々こねるので連れて行くことに。これにセラを加えて3人でモッチョン博士を訪ねる。
モッチョン博士は今、雷鷲に依頼された仕事をしているから雷鷲にいるのだが、普段は雷鷲、黒馬のどっちにも所属していないとのこと。今の仕事が終われば自宅の研究室にこもって自分の研究に没頭するのだとか。
俺たちが訪ねるのはモッチョン博士の自宅だ。雷鷲とは関係ないのだそうだ。
このことはセラも知っているみたいで、すぐに了解を得ることができた。
来週末が楽しみだ。
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