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2004.8.17


第9話 訪問(2)



 「何だ、これ?」
 モンスターとの戦闘を数回繰り返して進んで地下5階まで辿り着いた。ここまで人間の死体が見ていない。
 「金庫の扉みたいですね。」
 ああ、そう言えば。あの円くて分厚い扉がなかったから分からなかった。銀行の金庫みたいなやつだ。セラの指差した先に酷く変形した金庫の円くて分厚い扉が転がっていた。
 「まだ奥があるな。」
 元々円形の扉が付いていたらしき所を通り抜け、奥へ進む。
 途中、かなり厳重に守られていたのか、同じ様な扉の跡があった。そして、急に周りの雰囲気が変わった。
 「これは遺跡じゃないのか?」
 魔法文明の遺跡。この雰囲気はそれだ。
 「この遺跡からモンスターが出てきたみたいですね。」
 遺跡への入り口を塞いでいたのがあの金庫の円い扉か。あれがあの状態ではモンスターが脱走し放題だよな。
 モンスターに警戒しながら奥へ進んでいく。

 「あれ?」
 1人足りない。
 「あら? セラちゃんは?」
 そう、セラがいない。
 遺跡に入ってからモンスターの襲撃は激化し、連戦の内にはぐれてしまったようだ。
 「いやぁ〜ん。まぁ、俺のシールドメダリオンを着けていれば問題ないけど。」
 物理攻撃が利かないから、疲労で眠ってしまっても問題ない。
 「しょうがない。探しに行くか。」
 しかし、来た道を戻るにもどっちから来たのか分からない。
 「どっちから来たんだ?」
 シャロンに訊いてみた。
 「え、私に訊かれてもわかんないわよ。あなたにくっついていくのに必死で道なんて覚えてないわよ。」
 俺も夢中でモンスターを蹴散らしていたからどのような道を進んできたのか覚えていない。いつもはセラが来た道を覚えていてくれたのだが・・・。
 「まぁ、なんとかなるでしょ!」
 もう、笑うしかないな。とりあえず、適当に進んでみる。

 「あれは何だ?!」
 なんかロボットがモンスターと戦っている所に遭遇した。
 「その声はエル君か!」
 どこからか聞いたことのあるような男の声が聞こえた。とりあえず、ロボットに加勢してモンスターをエルウィップでぶっ飛ばしてやる。
 「モッチョン博士!」
 シャロンが泣きそうな顔をしながら声の主を探す。
 「エル君、シャロン君。よく来てくれた。」
 モッチョン博士の声がそう言いながらロボットがこっちに歩いてきた。
 「モッチョン博士?」
 俺たちの前まで来たロボットの正面が開いた。
 「あ。」
 ロボットの中にモッチョン博士がいた。
 「とりあえず、魔法で結界を張りますから話を聞かせてください。」
 ポケットから結界方陣の魔法カードを取り出しながらモッチョン博士に近付く。
 「ゆっくりしている暇はない。これを見てくれ。奥に進みながら説明する。」
 モッチョン博士はかなり焦っている様子だ。モッチョン博士からA4サイズの紙袋を受け取る。
 「変なお札とCDっすか?」
 袋の中身は数枚の奇妙な模様の描かれたお札のような紙と、1枚のCDだった。
 「エル君のホームページを参考に私の発見したクレストで魔法カードを作ってみた。自分で試してみてもダメだったのだが、エル君なら使えるかもしれないな。」
 いまだに俺以外で俺の魔法カードを使えるやつって会ったことがないんだよな。
 「こっちだ。奥に逃げ送れた仲間がいるんだ!」
 それはそれは。モッチョン博士がロボットの中に戻ってしまう。
 「はい、行きましょうね。」
 モッチョン博士の作った魔法カードだけ袋から取り出してポケットに入れ、他はシャロンに持たせる。そして、モッチョン博士の乗るロボットを追いかけて走り出す。
 「手短に説明しよう。」
 ロボットで走りながらモッチョン博士が説明を始めた。
 説明の内容は魔法カードのことで、どれも上位のクレストを使用したものだった。その中にライフクレストとデッドクレストと言う最強のクレストもあった。
 「これが魔法文明で最後に作られた2つのクレスト・・・。」
 全てのクレストを合わせたクレストを作るために作り出した2つのクレスト。この2つの合成に成功すれば全てのクレストの頂点に立つクレストが誕生するはずであった。
 「んで、これがフレリアの探しているデッドクレストか。」
 複雑で何がモチーフなのか全くわからないが、何か冷たい印象を受ける模様だ。いかにも『死』の象徴と言うべき印象を受ける。
 他にも火属性の最上位クレストとか色々あった。
 CDの中身はこの魔法カードについての研究報告書らしい。
 「早速、試してもいいかな?」
 走っている内にモンスターに囲まれてしまった。
 「強力すぎるかも知れんな。慎重にな。」
 なんと言っても最上位だからな。威力は半端じゃないだろう。
 「んじゃ、あんまり危なくなさそうなのから。」
 氷の魔法、氷結呪符の上位となる魔法カードだ。
 「喰らえ!」
 魔法カードに念を込める。
 「・・・。」
 何も起こらなかった。
 「失敗か?!」
 別の魔法カードにしてみる。次は火の魔法。
 念を込めると赤い大きな炎を上げて燃え出し、魔法が発動した。次の瞬間、目の前のモンスターが一瞬にして灰となった。
 「うっはぁ〜。半分は燃えたぞ。」
 あまりの威力に後ろの2人が口を開けて絶句していた。
 「先へ進みますよ。」
 モッチョン博士の乗るロボットを叩くと金属のいい音がした。それに2人が我に帰る。
 「は! そうだ。行くぞ、2人とも!」
 走り出したモッチョン博士に続いてさらに進む。


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