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2004.9.14


最終話 世界征服(3)



 早速、セラの部屋に行ってパソコンを立ち上げた。
 「セラにパソコンの中身を見られたことを知られちゃっているんだよな。」
 パソコンの起動画面を見ながら言ってみた。
 「消されちゃっているかもね。」
 ルーファがのんきにそんなことを言う。まぁ、ありえる話だ。
 「おい、パスワードだ。なんて入れるんだ?」
 俺が入った時は俺の名前を逆から入れたやつだったな。
 「お前の名前を逆から、eruhaundieaだからaeidnuahureか。」
 クロウが俺の思考を読んで、俺が言う前にキーボードを打ち始める。しかし、そのパスワードでは通らなかった。
 「まぁ、俺が見たって知ったのならパスワードくらい変えるわな。」
 当然の結果だな。
 「ハッカーを呼ぶか。どこかにいないか?」
 ハッカーか。どこかで聞いたな。
 「あ、ここの管理人。」
 アイパスの網膜パターンを登録しに行った時に家の中が太いコードでいっぱいだったからインパクトが強かった。
 「管理人?! 即行で呼んで来い。」
 俺が行って来てくれるかな?
 「無理だ。俺が行っても話を聞いてもらえないだろう。」
 セラと行った時は思い切り嫌われていたからな。
 「なら、ルーファ。力尽くでも色仕掛けでもいいから連れて来い。」
 ルーファが色仕掛けって。
 「了解! エル、その管理人ってどこにいるの?」
 なんかノリノリだな。
 「ここの最上階にいるけど、ケガさせちゃダメだぞ。」
 最後まで俺の言葉を聞かずに行ってしまった。マルコスも一緒に行ったから大丈夫だと思うのだが、心配だから俺も行ってみよう。
 玄関から出たら2人はすでにエレベータに乗って登っている所だった。俺もぽちっとエレベータの上ボタンを押してしばらく待つ。
 悪の組織だからって胸倉つかんで脅迫とかしてないといいのだが。てか、セラは涼しい顔でいきなり拳銃を突きつけて脅迫しそうだな。
 エレベータで最上階まで上がって、ドアが開いた所で変な物を見てしまった。見てはいけなかったかもしれない。

 ルーファのセクシーポーズ!!

 「ねぇん、私のお願い聞いてぇ〜。」
 ルーファ、止めてくれ。全く色気なんてないから。マルコスは平気そうにしているな。慣れているのかしら。
 ルーファの声にインターフォンから返事があって、管理人室のドアが開く。
 「ささ! 中に入ってくれ。ゆっくり話を聞こうじゃないか!」
 思い切り鼻の下を伸ばしたおっさんが出てきた。女好きなんだな。
 「マルコス、確保!」
 おっさんがいきなりマルコスに担ぎ上げられてしまった。管理人のおっさんが驚いてじたばたする。
 「急いでるからぁ〜、少し大人しくしてね!」
 最後にちゅっとか言って投げキッスとかしているし! それに管理人のおっさんが大人しくなる。おいおい。
 「あ、エル!」
 4人でエレベータに乗るのであった。なんかなぁ・・・。

 「これがセラちゃんのパソコンか! 乙女のプライバシー!!!」
 なんか物凄い嬉しそうだな。
 管理人のおっさんがセラのパソコンに色々とコードを繋いでハッキングに入った。ものの数秒で最初のパスワードを突破してしまう。
 「なんだ? この『エル様観察日記』ってのは。」
 そ、それは・・・。
 「またパスワードかよ。」
 開こうとしてパスワードを訊かれた。
 「それは見なくていいから、こっちを開けようぜ。」
 画面のdiaryってフォルダを指定する。
 「セラちゃんの日記か! こっちの方が面白そうだな。」
 ふぅ。俺の行動を逐一観察された記録を見られずに済んだぜ。
 「あぁん?」
 突然、diaryのフォルダが消えてしまった。
 「トラップか! 俺としたことが油断した。パスワードのディクショナリに掛けるとフォルダが破壊されるトラップになっていやがった。」
 つまり、もう見れないってことか。
 「やっぱり、こっちか。」
 こっちって?
 「なにぃ? エル様大好き?」
 そのパスワードは、『エル様観察日記』か?!
 「やめろぉおおおお!!!」
 カタカタっとパスワードが打ち込まれてフォルダが開いてしまう。
 「昨日のがあるじゃねぇか。昨日は何をしていたんだ?」
 クロウが俺をサイコキネシスで拘束しながらマウスを動かしてファイルを開く。
 ん?
 「おい! 昨日って言ったか?!」
 昨日はデートに行ってそのままここに帰ってきていないはずだぞ。
 「3月13日。んー、何々? エル様、さようなら?」
 報告書にもそれか! てか、3月13日って言ったな?
 「今日って14日か? 13日じゃなくて?」
 俺がセラをデートに連れ出したのが11日のはずだ。日曜日だから日付を間違えるはずがない。
 「ん? お前、11日からセラとデートに行っていたのか? 3日も一緒にいたくせに逃げられたわけ?」
 嘘ん。セラとお泊りしたのは二晩か。一晩やってその次の日の朝にあの告白があって、またやったんだよ。それから1日中ホテルにいて、昼頃から記憶がない。まさか記憶が飛ぶほど1日中燃えていたわけ?
 「おい。その1日中燃えていたってどう言うことだ? しかもあの告白って何だ? 説明しろ、説明。総帥命令だ。」
 あんなもの説明なんてできねぇよ。
 「あれは子どもに聞かせられない内容だからリリスがいると話せないな。」
 18禁指定の内容がほとんどだからな。
 「ぶぅ! あたし、子どもじゃないってばぁ! ちゃんとハタチになったんだよ! お酒も煙草ものめるのよ!」
 う〜ん。見た目が子どもっぽいんだよな。
 「どっちにしろあんなもの告白できんわ。」
 俺の心の生理がついていない。
 「そんなことより、昨日の日付が13日ってどう言うことだ。俺はあの部屋で3回も朝を迎えてしまったのか?!」
 12日の朝は覚えている。あの告白のあった朝だ。昨日の日付が13日と言う。ならば今朝、目が覚めたのは14日の朝か。13日の朝は?
 「その続きには何が書いてあるんだ?」
 クロウに続きを読ませる。
 「えっと、これで終わっているな。」
 はい?
 「ところで、昨日セラは帰ってきたのか?」
 リリスとフレリアが首を横に振る。
 「おとといのはあるか?」
 ないみたいだな。
 「その前は?」
 11日のやつ。
 「11日と12日の2日間だけ抜けているな。」
 デートで外泊したからな。
 「デートで外泊? それも3晩。マジで説明しろ。」
 う〜ん、綺麗だったなぁ・・・。
 「綺麗だった? まさかついにやっちまったのか? あの女がプライベートで男に抱かれるとは・・・。」
 何だよそれ。
 「仕事ならば簡単に抱かれるんだよな。いい体をしていた。」
 いい体をしていた?
 「お前、セラを!」
 ぬおおおお! 手が届かなん! いいかげんにサイコキネシスを止めろぉ!
 「最高権力者の特権だ! うははははは!」
 いつか殺す!
 「所で、何で昨日のがここにあるんだ?」
 クロウがさらっと俺の呪詛を受け流して話題を変えた。
 中途半端に首を切ったり心臓を突いたりしても死なないのなら、首を完全に切り落とすとか一瞬で焼き尽くすとか!!
 「このフォルダは他からもアクセスできるようになっているようだ。アクセス記録がこの端末じゃねぇ。」
 管理人のおっさんがセラのパソコンに繋いだ端末を弄りながら言う。
 「どこからなんだ?」
 別にそんなことはどうでもいいじゃねぇか! 今は一発クロウを殴らせろ。
 「ウィングス空港の公衆電話からだな。」
 空港?
 「なるほど。飛行機に乗る前にここへこのファイルをこっそりアップしてエルに別れを告げたわけか。恐らく、自分が消えればエルが探すし、いつかはこのパソコンを調べられるだろうと言うことを予想してメッセージを残したか。このフォルダのパスワードが変わっていないって言うしな。実はサンチョスとできていて・・・。」
 いやあああああ!!!
 「サンチョスのやつ、最近は奥さんと上手くいっていなかったみたいだからな。やけになって俺を刺して愛人と逃亡か。そんなに追い詰められていたのなら大目に見てやらないとな・・・。」
 そんなことがあってたまるか!
 「スルトはどうなんだよ! あの野郎、世界征服をするとか口走っていたんだぞ!」
 てか、それについて調べるためにこのパソコンを弄っているんじゃないか!
 「あ、そうか。そのラグナロクってフォルダが例のやつだな。」
 いまさらスルトなんて興味ないのだがな。管理人のおっさんがカタカタっと端末を操作してパスワードを割り出す。
 「今度はエルかよ。」
 こっちもパスワードが変わっていないぞ。カタカタっとeruのキーを叩く。
 「これか。」
 そこには俺が見た時と同じファイルが並んでいた。
 「これだな? スルトって。」
 クロウがマウスを操作してsultのファイルを開く。そこには巨大戦艦内部の見取り図と兵器一覧や防御システムについて書かれている。
 「こりゃ凄いな。黒馬でもこんな戦艦は持ってないぞ。動力はクレストか。サンチョスが何か企んでいるとは気付いていたが、こんなのを計画していたとは。」
 動力に使用されているクレストが5つ。その内の1つが船の中心部に設置されていた。そのクレストの名が。
 「デッドクレスト!」
 それはフレリアが探し続けていたクレストの名だ。
 「デッドクレストの写真もあるな。」
 デッドクレストに付いたリンクをクリックして画像を呼び出す。
 「なかなかかわいい子だな。」
 女の子だった。だいたい5歳くらいか。名前はシャルルになっている。
 「これってあれか。」
 クロウが画面の写真を指差す。少女の後ろにうっすらと・・・。それに気付いたリリスが思い切り引く。
 「し、心霊写真!」
 無数の人の顔が!
 「デッドクレストは死を司るクレストです。きっとクレストの力で幽霊を・・・。」
 フレリアが何か恐いこと言っているぞ。リリスが泣きそうになっている。別に写真くらいで恐がらなくても。
 「幽霊くらい俺の魔法で浄化してくれるわ!」
 ちゃんとそう言うやつ用の魔法があるからな。
 「それは頼もしいな。」
 調査の結果、スルトの建造場所は地中海の真ん中らしいことが判明した。すでに発進しているからその辺を探せばすぐに見つかるだろう。
 「なに? あの船ってもう発進してしまっているのか!」
 それに一同が絶句する。え? 発進していたらヤバイのか?


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