「侵入成功だ。」
成功した。
スルトからの砲撃が止んだ隙を突いてスカイダイビング。先頭は俺。その後ろにシャイリースが続く。
落下中、試しに魔法でシールドが破れないか試してみた。火炎系最強魔法を見舞ってやるもののびくともせず。ちょっとショックだった。
飛行方陣で宙に浮き、減速するとシャイリースが剣を構えて俺を追い越して行く。そして、マジで切り裂きやがった。俺の魔法が全く利かなかったのに剣で切り裂きやがった。
シャイリースが切り裂いて穴を開けた所に突入し、こうしてスルトの上に乗ることができたのであった。
シャイリースは穴を開けた衝撃で減速して着地し、俺は魔法で空を飛んで難なく穴を通った。しかし、パラシュートでこの穴を通過するルーファとマルコスはマジで凄いと思ってしまった。ルーファなんてフレリアと一緒だし。よくあんな穴に入れたなぁ。
「調査によると中で守っているモンスターはクレストのエネルギーを得て不死身らしいから注意してね。」
ヘリで移動中に作戦を立てておいた。
最大の目的はサンチョスをぶっ飛ばしてこの愚行を止めさせることなのだが、それには全てのエネルギーをまかなっているクレストをどうにかしないと近付くことができない。よって、先に5つのクレストをどうにかする。
デッドクレストを守るシャルルちゃん以外は醜悪なモンスターだったからぶっ殺してしまおうと言うことになった。シャルルに関してはフレリアが何とかするらしい。クレストを肉体からひっぺがして封印するとかするのだろう。
クレストを全て解放してスルトのエネルギー源を絶って防御システムを無効化した後にコントロールルームへ乗り込んでサンチョスをぶっ飛ばすのだ。
最初から防御システムを蹴散らしてコントロールルームに乗り込むのはいけないのかと言うのはちゃんと理由がある。あの辺りは守りが堅過ぎていくら俺たちでも蹴散らすのは無理そうだったからと言うのが1つ。その防御システムにエネルギーを送っているのがデッドクレストなのだが、それに近付くには他の4つのクレストをどうにかしないとならないと言うのが1つ。
面倒な防御システムだ。
「行くぞ。」
またシャイリースがリーダー気取りで先頭を行く。まぁいい。トラップもいっぱいあるからシャイリースに任せよう。俺はしんがりを担当しよう。奇襲があってもオートで魔法が俺の身を守ってくれるからな。
「止まれ。」
T字路に来た所でシャイリースが壁を背にして止まる。
「モンスターが3体。左に2、右に1だ。進路は左。エルは右の1匹を足止めしろ。左の2匹は他の4人で片付ける。」
不死身でもダメージを与えれば再生する間は動けないのよね。
「行くぞ。」
先にシャイリース、フレリア、俺の3人が飛び出す。シャイリースとフレリアは左、俺は右の通路を向く。俺たちに気付いたモンスターたちが襲い掛かって来た。
「俺に牙をむいたことに後悔しろ!」
エルウィップ起動。光の帯がこっちに突っ込んでくるモンスターを襲う。
「何?!」
しかし、避けられた。いつかの白熊のアジトで戦ったモンスターと同じじゃねぇか。
「クソ!」
長期戦が予想されるこの作戦ではあまり魔法を使いたくなかったのだが、しょうがない。大氷結呪符で氷漬けにしてやる。
「エル、行くぞ!」
後ろからシャイリースの声がする。振り返ると切り裂かれた2体のモンスターが血に塗れて横たわっていた。しかし、その傷口が閉じていく。
「ちぃ!」
このモンスターたち、かなり厄介だな。
「クソ! キリがねぇ!」
奥に進むに連れて俺たちを襲い来るモンスターが雪だるま式に増えていった。なんと言っても何度倒しても蘇って再び襲ってくるのだから数が減らない。
「エル、魔法で何とかしろ!」
何とかねぇ。
「任せろ!」
倒せないのなら封じ込める。
「ここから退場しろ!」
転送方陣・改!
転送方陣は4枚の魔法カードで囲まれた中にある物を亜空間へ封じ込める魔法だ。主に出かけた時に荷物がたくさんになるとそれを亜空間へ保存するのに使う。そして、この転送方陣を改良した転送方陣・改は魔法カード1枚で目の前に亜空間への入り口を出現させるのだ。前の転送方陣は倉庫にただ放り込むだけだったのだが、これは倉庫の入り口を開けて出入りができるのだ。
狭い廊下を物凄い勢いで追ってくるモンスターたち。突然開いた亜空間の入り口へスピードを緩めることもできずに突っ込んでいく。戻ろうにも後ろから押されて出ることもできず、あっと言う間に後ろにいたモンスターたちが亜空間へ消えてしまう。
入り口を開けっ放しだと出てきちゃうので、タイミング良く入り口を閉じて封印完了。
「片付いたぜ。」
さすが俺様。他の4人は前から来るモンスターとの戦闘に夢中で俺の凄い姿は見えてなかったらしい。ちょっと寂しい。
無数のトラップやモンスターが襲ってくるものの、シャイリースの聖剣技で叩き斬られてしまう。最後尾にいる俺は楽なものだ。後ろから追って来るモンスターが増えてきたら転送方陣・改で亜空間への入り口を開いて片付けるだけだ。
「あの扉が最初のクレストがいる部屋だ。」
クレストの名はサンダークレスト。電撃を司るクレストだ。一応、上位のクレストで、その攻撃能力は物凄い。
鍵のかかっている(かもしれない)扉をシャイリースが切り裂き、強行突入する。
「おお。」
サンダークレストの憑いたモンスター。身に雷を帯びた巨大な獅子の怪物だ。
体に電気をまとっているものだからあまり近付きたくないな。触ると感電して痛そうだ。
「我が聖剣技に切れぬ悪はなし!」
おお。シャイリースが単身突撃だ。
「聖剣技奥義、聖流!!」
どう言う原理なのかシャイリースの体が白い光を放っている。そして次の瞬間、その白い姿が2つになる。その2人のシャイリースを直線で繋ぐ位置にいる巨大な獅子の肩に大きく切り裂かれた傷ができていた。
続けて3、4、5、6789・・・。白いシャイリースがどんどん増えていく。その出現する速度もどんどん速くなり、その白いシャイリースが巨大な獅子を切り刻んでいく。
やがて無数の白いシャイリースが重なって同化して下から上に立ち上る白い滝となる。白い滝は巨大な獅子を切り刻みながら上へ突き上げる。
巨大な獅子の体が天井に叩き付けられる。白い滝も天井に当たって白い飛沫を上げて消えていく。そして滝が消えると重力に引き寄せられて獅子の体が落ちてくる。ズタズタに切り刻まれて血塗れになった巨大な獅子が地面に落ちる。それに剣を向けて構えるシャイリースがいつの間にかそこにいた。
決着はついていた。
「つよ・・・。」
シャイリースの力量を侮っていた。クレストを身に宿したモンスターを数秒で倒してしまうなんて。
恐らく、俺が白熊のアジトで戦ったでかい猫のことアレクサンダーと同レベルか身に宿すクレストを考えればそれ以上に強かったはず。それが血塗れで横たわって起き上がってくる気配はない。
「エル様。クレストが抜けていきます。」
巨大な獅子の体を包んでいた電撃が弱くなっていく。そしてその体から何か光るものが抜けていく。丸い光で魂を連想させる。それが完全に抜けて消えてしまう。そこに残ったのは光を失った血塗れの怪物のみ。
「次に向かいましょう。」
あと4つだ。
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