「所でシャルル。お父さんとかお母さんはどうしたんだ?」
娘がこんな世界征服をしようなんていう巨大戦艦のエネルギーにされて両親はどうしているのだろうか。
「そこにいるよ。」
そこ?
シャルルの指差した先に男女ペアの幽霊がいた。
死んで幽霊になっているのかよ!
「サンチョスって言うおっさんのことは知っているのかな?」
悪の親玉だよな。
「あたしのおじちゃんだよ。あたしのパパとママが死んじゃったあと、あたしを養女にしてひきとってくれたの。」
パパ・その2ですか。むやみにぶっ殺しちゃったらダメそうだな。
「サンチョスのことは好き?」
嫌いなら迷わずぶっ殺しちゃうけど。
「すきじゃない。はじめはやさしくしてくれたのにずっとここから出してくれないの。それにさいきんは会いにきてくれないし。」
思い切りこのデッドクレストのエネルギーを利用するためにひきとったんだな。下手するとあの両親を殺したのもサンチョスの差し金かもしれないな。容赦なくぶっ殺しちゃうか。
「セラおねえちゃんはだいすきだよ。ときどき会いにきてあそんでくれるの。」
訊いてないんだけど、かなり嬉しそうだな。これだけ好意を持たれていると言うことはかなりたくさん会いに来ているのだろうな。フレリアにデッドクレスト探索の協力をしていたのに秘密にしていたのか。
「あいつかわいいのが好きだからなぁ。最近、会いに来たかい?」
子どもとかもこもこしたのとか好きなんだよなぁ。リリスもそのかわいい子どもに入っちゃっているみたいだけど。
「うん! 今日もあそんでくれたの。でんわがかかってきていっちゃったけど。」
俺たちが侵入してきたからな。一応、あいつも幹部なのだろう。
「これからセラおねえちゃんに会いに行くんだけど一緒に来るかい?」
この部屋がクレストからエネルギーを集める装置になっているらしいから、この子を部屋の外に出してしまえばいいのだ。それに小さな女の子をここに置き去りにするのは俺の主義に反する。男の子だったら容赦なく置いていったかもしれないけど。
「うん! いく!」
嬉しそうだな。デッドクレストが憑いていれば幽霊たちが守ってくれるから足手まといにはなるまい。
「でも、このへやから出ていいの?」
嬉しそうな顔から一転して心配そうに沈んでしまう。
「気にするな。部屋の外にはちょっと恐い怪物とかいるけど俺たちがいるから安心していいぞ。」
シャルルがにこっと笑顔を作る。
「あの、エル様。クレストの封印をしないのですか?」
フレリアがシャルルに聞こえないようにして俺に訊いてくる。
「ここでクレストの加護がなくなったら面倒だ。事が終わるまで待って。それより、これを封印したら帰っちゃうの?」
たまにしか帰ってこなかったけど、もう帰ってこないとなると寂しいなぁ。
「はい。アルフヘイムの祭壇にクレストを封印すれば念願の長になれるんですよ。うふふ。あのババァも引退ね。」
嬉しそうだな。
「君がいなくなっちゃうと寂しいよ。」
フレリアの手を取って悲しそうな顔を向けてやる。
「エル様とセラの生活に水を差したく差したくありませんから。もし、セラと上手く行かなかったら一緒にアルフヘイムに行きましょう。私が慰めてあげますからね。」
セラの代わりになってくれって言うのは失礼だよな。なんとしてもセラを連れて帰らねば。
「んじゃ、行くぞ。」
シャルルの手を取ってドアに向かう。
シャルルが部屋から出た瞬間にデッドクレストが供給していたエネルギーがストップして大部分の防御システムが停止した。あの不死身のモンスターたちもデッドクレストからのエネルギー供給がなければ不死身ではない。ただの雑魚だ。
「いよいよだ。」
一気にコントロールルームを目指して突き進む。
その途中であいつが現れた。
「よ!」
クロウだ。いきなり目の前にテレポートしてきやがった。
「今頃、何しに来たんだ?」
後はサンチョスをぶっ飛ばしてセラを連れ帰るだけだぞ。
「いやぁ、俺もサンチョスのやつをぶっ飛ばしたくてな。やられたままじゃ俺のプライドが許さん。」
ああ、そう言えば暗殺されかかったんだっけな。
「おじちゃん、だあれ?」
ちなみに部屋から出てすぐにルーファたち3人は紹介しておいた。シャイリースとルーファがおじちゃんおばちゃん呼ばわりされてむっとしていた。マルコスはおじいちゃん呼ばわりされて嬉しそうだったな。そう言えばマルコスに孫っているのかしら。50歳過ぎているからいるかもしれないな。
「おじちゃんはクロウって言うんだ。この世界で一番偉いんだぞ。」
こんな子どもにそんなことを言うなよ。シャルルが「ふ〜ん」とか言って納得してしまったし。まぁ、意味はわかっていないだろうが。
「ちなみに俺が2番目なんだ。その内、このおじちゃんを踏み越えて1番になる予定だ。」
ついでだから言ってしまおう。
「む。我らのフィネルソス総帥を差し置いて何を言う。世界でも最も偉大なのは我らのフィネルソス総帥だ。」
シャイリースがふんぞり返って口を挟んでくる。
「う〜ん。まぁ、クロウとあのフィネルソスを比べたらフィネルソスの方が威厳があるよな。あっちの方が偉大だ。ちゃっかり美人の奥さんもいるし。」
うん。それは間違いない。シャイリースに賛同するのは嫌だが、事実だ。
「あっちの方が10も年上の先輩なのだから威厳があるように見えるのは当たり前だろうが。俺の方が威厳ありそうに見えたらそれこそ雷鷲総帥って立場がなくなってしまうぞ。」
クロウが36でフィネルソスが46だったな。
「そのフィネルソスは何をしているんだ?」
こんな巨大戦艦が世界を滅ぼそうとしていたのに黒馬と並ぶ雷鷲の総帥が動かないのはダメだろう。
「ああ、グレイペガサス(Grey Pegasus)を仕切ってくれている。」
グレイペガサス?
「我が黒馬の秘蔵巨大戦艦“ダークネスフォース(Darkness Force)”と雷鷲の秘蔵巨大戦艦“ジャスティスバード(Justice Bard)”が合体した超巨大戦艦だ。」
なんだそりゃ?
「世界を二分する敵対組織同士の戦艦が合体するのか?!」
それは絶対にありえないぞ。
「設計者の遊び心だ。設計者が同じなんだよ。」
そんな。
「あのかっこいい合体シーンは生で見せたかったなぁ。撮影させておいたから後で見ろ。合体後のあの勇姿も凄かったぞ。あの圧倒的な火力を持つスルトに引けを取らないのだからな。サンチョスもあの2つが合体するとは思っていなかったみたいだ。」
誰がそんなのを予想できるんだよ。
「ま、そろそろサンチョスをぶっ飛ばしに行こうぞ。」
はい。逃げられない内に行こうね。
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